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(写真:kouta/PIXTA)

2023年12月、自民党政治資金パーティー券の裏金疑惑が発覚して以来、岸田首相はこの問題の対応に追われ、国民生活を脅かす物価高対策は手つかずのままだ。

「2024年は昨年同様、厳しい物価高騰が続くと思います」

そう話すのはファイナンシャルプランナーの高山一恵さんだ。

「物価高に家計は困窮し、支出を減らす人が多いと思いますが、実は、それだけでは不十分です。物価が高騰すると、今ある資産が目減りする危険性があるのです」(高山さん、以下同)

資産が目減りするとは?

「資産を預貯金で持つ人が多いと思いますが、大手銀行の定期預金金利は0.002%がほとんど。三菱UFJ銀行などが10年定期の金利を0.2%に上げましたが、日銀が公表した物価上昇率は2.8%です。物価上昇率より低い金利では、資産価値が減少するのです」

資産価値の目減りを高山さんに試算してもらったのが左上の図だ。物価が変わらないインフレ率0%だと、1千万円は何年たってもそのままの価値だ。

しかし、日銀が物価安定の目標とするインフレ率2%で推移したとき、1千万円は15年後に739万円の価値になってしまう。つまり15年間で261万円も価値が減少するのだ。そうなると、カツカツの老後資金が枯渇しかねない。

■今ある貯蓄は少しずつ上乗せして投資を

「元本割れしない預貯金が安心という人がいますが、いまや金利の低い預貯金では老後資金を守れません。資産価値を保つには、物価上昇率を上回る利回りが必要。投資するしか道はありません。

2024年1月から非課税保有期間が無期限に、口座開設が恒久化された『新NISA』が始まりました。低リスクの安定的な運用でも年利3%は見込めますから、新NISAにトライしましょう」

投資初心者ができる限りリスクを抑えるにはどうすればいい?

「リスクをゼロにはできませんが“大きく減らさない安定的な運用”を目指すといいでしょう。お手本は公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人GPIF)です」

GPIFは2001年の運用開始以来、運用実績は3.91%と安定的だ。どんな投資なのだろう。

GPIFは国内株式と国内債券、外国株式、外国債券を25%ずつ分散投資しています。個人がこれをまねるなら、4つの資産を均等に運用する『ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)』がいいでしょう。これ1本でバランスよく運用できるので、初心者向きだと思います」

うまくいけば年利は約4%も期待できる。仮に、Aさんが新NISAで月3万5千円のつみたて投資をして、利回り4%で運用できた場合、15年で元本は630万円だが、運用益を加えると約856万円になるという。

「50代だと、老後資金を預貯金で蓄えている人もいるでしょう。それも投資に回しましょう。ですが、今ある預貯金全額で株式などを一括購入するのはおすすめできません。一括購入のタイミングがむずかしく、初心者向きとはいえないからです。毎月のつみたて投資額に預貯金からも上乗せして、時期を分散した投資が安心です」

先のAさんが給与からの月3万5千円に貯蓄から月2万円を上乗せすると、毎月の投資額は5万5千円。15年で元本は990万円になるが、仮に預貯金なら利息はほとんどつかないので1千万円にもならないだろう。だが、年利4%で運用できれば15年たった時点で約1千346万円になる(図参照)。

冒頭、2%の物価上昇のため今ある1千万円が15年で目減りするとした261万円を超える運用益が見込まれるので、資産価値は守られるというわけだ。

■50代から始めるなら新NISAがおすすめ

いっぽう老後資金の蓄えが少ない人は、多少のリスクをとってもリターンを大きくしたいだろう。

「それなら全世界の株式に投資する『eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)』がいいでしょう。年利は7%程度を期待できます」

運用益が非課税といえばiDeCoもあるが……。

「iDeCoのメリットは、掛金を税金から控除できることです。ただパート勤めなどではあまり税金を払っていない人が多く、メリットを十分受けられません。また、iDeCoだと口座管理手数料が必要ですし、運用期間に制限もあります。

50代以降で投資を始めるなら、新NISAのほうが使い勝手がいいと思います」

また、新NISAの成長投資枠で1株数千円という手ごろな株式投資を行うのもおすすめだそう。

「経済ニュースに注目し、投資感覚を養いましょう。新NISAは長く付き合っていくものです」