地震というと、見た目、破壊のイメージでしかないが、しくみからすると、むしろ長年、溜まりに溜まった歪みが一気に正されることでもある。

十年一昔、と言うように、十干で一時代。かつて太陽が十個もあって、それが年ごとに代わる、と考えられていた。一方、十二支は、その強さ。十干がデジタルな交代であるのに対し、十二支は連続的な植物の成長衰退のサイクル。しかるに、今年は甲辰。甲は第一太陽で、前の十年を突き破る。辰はすでに出揃った芽が一気に伸び拡がる時期。だから、甲辰の年の変化は激しい。

ふりかえれば、1964年。フルシチョフ・ケネディから、ブレジネフ・ジョンソン体制になって冷戦が泥沼のベトナム戦争として顕在化。これに応じ、毛沢東が中国が核兵器を得て文化大革命に突っ込んでいった。日本でも、池田勇人で戦後復興が終わり、日米安保体制下、佐藤栄作を中心に、オリンピックや万博と、高度経済成長へ。一強四弱の政治体制が確立され、自民党党内派閥の力関係のみで首相が決まるのが慣例化。

舞台から、映画やテレビを含むメディアミクスの移行期に、ナベプロ、宝塚、吉本が日本のエンターテイメントを支配していくのもこのころ。ナベプロは映画で無責任、テレビでドリフを当て、系列のジャニーズの男性アイドルたちへ引き継ぐ。宝塚は、それまでどんくさい田舎のレビューショーをやっていたのが、作品として独立完結したミュージカル公演にシフトして、東京にも進出。吉本も、てなもんやから、新喜劇のテレビ中継を経て、仁鶴や三枝、やすきよのような、若手テレビ芸人のマネジメントへ。

産業も、重厚長大の旧財閥グループから民生へ。自動車ではトヨタ・日産、電器では松下・ソニー。商社やデパートからスーパーやブランド店の時代に。個人が、銀行ではなく、野村・大和・日興・山一の四大証券に口座を作るようになったのも、このころから。モダンな団地で満足していた人々が、数十年ものローンを組んで、郊外を乱開発した新興住宅地の一戸建てを買うようになる。また、羽田空港から一般個人がJALパックで世界へ観光旅行へ飛び立つ。そして、鉄腕アトムのアニメが始まり、ジャンプが創刊。

少子高齢化もあって、日本が終わりだ、と言うが、じつのところ、この60年、その半ばを過ぎたところでのバフル崩壊で、とっくにおかしなことになっていた。にもかかわらず、その歪みをずっと隠蔽して、なにも問題がないようにやり過ごしてきたのが、失われたこの30年。しかし、溜まりに溜まった歪みは、もはや地盤をも引き裂いて、露呈し、安定を破壊する。

これから、あちこち激震が走って、大物が逮捕され、大企業が潰れるだろう。災害災厄も、これからが本番。世界でも、いろいろ大きな問題が表面化して驚かされるだろう。だが、それは、これまで隠蔽されてきた歪みを正す、むしろまともな回復力だ。そうでも思わないと、箱の中に希望が残らない。

グレートリセット:文明の正常な回復力