庶民を守る「ガソリン価格引き下げ」のためのトリガー条項って何? 価格高騰で条件は満たすも発動されない謎

この記事をまとめると

■原油高が続いておりガソリンの平均価格が高値で推移している

■2010年に政府はガソリンにかかる税金を一時的に免除する「トリガー条項」を制定している

■2011年の東日本大震災の財源確保のためにトリガー条項は凍結され、現在も続いている

よく耳にする「トリガー条項」ってなに?

 電車やバスの本数が減ったり、近くに駅がないなど、公共交通機関の利用が困難な地域では、日常の移動手段としてマイカーが多く利用されていますので、ガソリン価格の高騰は家計を直撃します。しかし、まだまだ、原油価格が下がるような期待ができる要素はほとんどありません。緊急対策として行われていた政府による補助金、いわゆる燃料油価格激変緩和措置は令和6年4月末までとされていますが、これはレギュラーガソリンの平均価格が170円を超えた際に発動し、170円を超えた分を、最大5円の範囲内で補填するというもの。ということは、この補助金ではどうやっても170円以下にはなりません。

 レギュラーガソリンが170円って……。思えば2020年の4月の時点では、平均価格は115円程度でした。ハイオクが170円でも高いなと感じる人がほとんどだと思います。家計にどのくらいの打撃があるのかを計算してみると、燃費が10km/Lのクルマで年間1万km走行する人だとすると、レギュラーガソリンが115円ならガソリン代は年間11万5000円のところ、170円になると年間17万円に! 6万5000円も負担が増えてしまうのです。これは痛いですね……。マイカーに乗る回数を減らしたり、カーシェアなどに変更したり、といった覚悟や決断をジリジリと迫られているような苦しさがあります。

ガソリンスタンドの給油量と値段の表示板

 しかし、諦めるのはまだ早いかもしれません。一気にガソリン価格を25.1円も下げることができる、トリガー条項をご存知ですか?

 これは緊急緩和措置とはまた別のお話なのですが、政府はガソリン価格が値上がりしたときに、それをストップさせる仕組みを発動するという、最後の砦のようなものを持っています。ガソリン価格は生活者の家計に大きな負担となることを考慮して、2010年の民主党政権のときに導入されたものです。

条件を満たしているのに発動されない!

 簡単にいうと、ガソリン価格のおよそ50%ほどにもなる税金の半分を一時的に免除することで、価格高騰を抑えるのがトリガー条項。じつはガソリンにかかる税金には「揮発油税」と「地方揮発油税」というのがあり、1リットルあたり合計で53.8円がその税金です。しかも、このうち25.1円が本来の課税額に上乗せされているのです。軽油の場合は、地方税である「軽油引取税」が1リットルあたり32.1円課税されており、このうち17.1円が上乗せ分となっています。

ガソリンスタンドの値段表示板

 トリガー条項とは、全国平均のガソリン小売価格が1リットルあたり160円を3カ月連続で超えた場合、この上乗せ分を自動的に減税するという仕組み。その代わり、3カ月連続で130円を下まわると、今度は上乗せ分の課税が復活します。

 ところが政府は、2011年に起こった東日本大震災の復興財源を確保するためにこのトリガー条項を凍結していて、現在もそのままになっています。おかしくないですか? 170円を超えたら最大5円を補填って、すごいことしてるように聞こえますが、このトリガー条項が復活してくれたら、160円を越えれば25.1円が減税されて、134.9円になるはずなのに……。

給油中のイメージ

 現在、ガソリン価格の高騰が収まる気配を見せないなか、生活者の負担軽減のためにこのトリガー条項の凍結解除を求める声が大きくなりはじめ、自民、公明、国民民主の3党で協議が行われていましたが、岸田内閣の地盤がゆるみつつあるなか、協議は停滞。ぜひ、再会して実現の方向に進めてほしいですね。

庶民を守る「ガソリン価格引き下げ」のためのトリガー条項って何? 価格高騰で条件は満たすも発動されない謎