現実世界と異世界をつないで展開するオリジナルファンタジー・アドベンチャー大作「ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-」がディズニープラスの「スター」で独占配信中だ。空想好きな女子高校生が、落ちこぼれのドラゴン乗りの少年と運命の出会いを果たし、大冒険を繰り広げる本作は、現実世界を実写、異世界はアニメというハイブリッドな手法が特徴的だ。イマジネーションあふれる異世界パートはもちろん、実写パートでも凝ったビジュアルが味わえる。そんな本作の美術の見どころを、貴重な設定資料や場面写真と共に紹介しよう。

【写真を見る】これが“アクタ村”の全貌だ!魅力あふれるメイキング&イメージボード

※以降、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。

まずはこれまでの物語を振り返ろう。不思議な白日夢をよく見る女子高校生ナギ(中島セナ)の前に、異世界ウーパナンタから来たドラゴン乗りの少年タイム(奥平大兼)が現れる。彼はナギの世界に飛ばされた、英雄アクタ(新田真剣佑)を捜しに来たという。ところがウーパナンタとは、漫画家だったナギの母ハナ(田中麗奈)が生前に構想していた物語の舞台でもあった。ナギは親友ソン(エマニエル由人)と一緒にアクタ捜しを手伝うことにする。

■ウーパナンタ創造の“カギ”が垣間見えるナギの母、ハナの秘密の仕事部屋

本作のキーパーソンとなる、ナギの母で漫画家のハナ。メジャーな存在ではないが、コアなファンに支えられているという彼女は、取り憑かれたように異世界ウーパナンタの物語にのめり込み、やがてウーパナンタに意識を乗っ取られるかのように昏睡状態になってしまった。そんなハナの仕事場はシンプルで機能的。小物や花瓶がきれいに並べられている様子から、もともとは几帳面だった性格が伺える。

ハナの仕事部屋の奥にはもう一つ部屋がある。ウーパナンタを創造したアトリエだ。室内中に貼られているのは、ハナが描いたウーパナンタの人々やドラゴンなど生き物たち、生活用具から景観といった無数の設定画。そこには要点など、解説が書き込まれている。部屋の構造は天窓から光が射し込む屋根裏部屋で、壁を覆った本棚には小説を中心に様々な本が並び、備え付けの棚や床には漫画関連資料の段ボールが置かれている。

もともとは物置として使われていたようだが、ハナがウーパナンタを描くことにのめり込んで以降、“ウーパナンタ部屋”と化したようだ。部屋の片隅にはハシゴで登るロフトのような空間があり、現実世界にやって来たタイムの相棒のドラゴン、ガフィン(声:武内駿輔)が寝床にしていた。ちなみに、壁に貼られている絵は、本作でキャラクター原案&コンセプトアートを担当した、「約束のネバーランド」でも知られる出水ぽすか氏によるデザイン画やエンドクレジットでイラストを手掛けているノザキ氏のイラストとなっている。

頭の中にウーパナンタの世界感が降りてきて以降、夢でもその光景を見るようになったというハナ。部屋には彼女の夢日記も残されており、それによるとウーパナンタの夢は数日おきに断続的に見続けていたようだ。やがて、彼女はウーパナンタの具象化に取り憑かれていくのだが、圧巻は床に描かれた異世界の全体図。イメージボードでも空に浮かんだウーパナンタの大陸が描かれているが、完成した映像で床いっぱいに描かれているのは、ウーパナンタの“神”ピュトンピュトを中心に様々な人々や事象が書き込まれた“ウーパナンタ曼荼羅”。実は、物語の先の展開も記されているので、エピソードを重ねたあとに見返してみるのもおもしろいだろう(ネタバレはないのでご安心を)。

初めて入った屋根裏にはナギの知らない秘密が隠されていた――まさに、ハナの部屋は冒険ファンタジーの導入にふさわしい胸躍る“秘密の部屋”なのである。

■アクタの大切な仲間への思いと故郷への郷愁を体現するアクタ村

次に紹介するのは、現実世界に迷い込んだ勇者アクタの住む“アクタ村”だ。第3話で彼は、人々が心を忘れた荒んだ社会に同化できず、自分に共感してくれるわずかな仲間と小さな無人島、猿島に移り住み村を作っていたことが明かされた。ちなみに猿島は、神奈川県横須賀市にある実在の無人島であるが、“アクタ村”の撮影自体は千葉県茂原市で行われた。

アクタ村は、誰もが幸せに暮らせる理想の楽園を目指して生まれた場所。人々は自給自足の暮らしをしており、漁や農耕、ハチミツ栽培などのほか、家畜の姿も見てとれる。村の中央には木材や廃材を使って、かつてアクタの相棒だったドラゴンのイグルを模した巨大な像が建てられている。

全体図からわかるように、村は山の斜面を利用した高低差のある作りで、斜面に太陽光パネルのようなものも設置されているので、電気も自給していると思われる。この村では集団生活が基本。食事は全員分をまとめて作り一緒に食べ、子どもたちが遊ぶための遊具や洗濯場なども置かれている。

住居の小屋は廃材や自然の樹木を生かし、布などを張った質素な作り。曲線の多い“いびつ”な形状に加えて、赤や青、緑など色鮮やかな布地は生き物を思わせる。いろいろな色や形のモビールが飾られていたり、尖った木々をドラゴンの頭部のように組み合わせて取り付けられていたりするのも特徴的。アクタを探して猿島を訪れたタイムによると、アクタ村はウーパナンタを再現しようとして作られたのだろう。

第4話では、アクタが不思議な物体“イイド”を操り、ウーパナンタと同様に猿島を空中へと浮かばせてしまう。第6話以降の後半戦では、時空の裂け目からドラゴンたちも飛来し、壮大なスペクタクルへと発展していく!次元を超えて出会ったナギとタイムの大冒険を盛り上げる、ファンタジーならではの世界観が体感できる「ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-」から、この先も目が離せない。

文/神武団四郎

ウーパナンタの人々、ドラゴンなど生き物を描いた設定画たち/[c] 2024 Disney