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 シンガポールでは住宅開発庁(HDB)が手掛ける公営住宅では、犬を飼育することは認められたものの猫をペットで飼うことが禁じられていた。

 その法律は最近まで続いていたが、ついに34年ぶりに猫を飼うことが認められることになった。猫の解禁は2024年後半に予定されており、これを知った多くの猫好きの公営住宅住人は、喜びを感じているようだ。

 シンガポールの公営住宅は、シンガポール政府によって補助され、建設され、管理されており、2020年現在で、78.7%のシンガポール市民が公営住宅に住んでいるという。

【画像】 公共住宅での猫の飼育が34年ぶりに解禁

 シンガポールでは、人口360万人のうち約80%が、住宅開発庁(HDB)による高層公営住宅に住んでいる。

 公営住宅はもともと1930年代に始まり、最初は、シンガポール改善信託(SIT)によって建設されたが、1950年代後半には野宿者のための住宅が建設され、1960年代にSITの後継機関である住宅開発庁(HDB)が建設、管理、運営することになった。

 HDB管理下になり1989年に住宅法が改正されて以降、猫の飼育が禁止されていたが、34年たった今、ついに撤廃されることとなった。

 3年間こっそりとムーンケーキと名付けたラグドールを飼ってきたサニーさん(30歳)は、違法行為をしてきただけに、これまで猫の福祉ケアがとても困難だったという。

 ムーンケーキはペット保険に登録することも特定の獣医学的処置を受けることもできず、迷い猫になった場合、動物管理局に拾われたたとしても、サニーさんがムーンケーキの所有権を証明する手段がなかったからだ。

[もっと知りたい!→]ゴールデンレトリバーが飼いたいけど猫しか許可されない?メインクーンがいるじゃないか!でかいし毛並みほぼ一緒だし。

 しかし、シンガポールは今年後半にこの禁止令を廃止する予定であり、サニーさんは4000シンガポールドル(約43万円)の罰金やペットの立ち退きの危機から解放されることになる。

猫は犬よりずっと静かです。犬が許されるのに猫が許されないのか理解できませんでした(サニーさん)
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猫の飼育を好ましくないとしていたHDB

 1989年に議会が住宅法を改正するまでは、公営住宅でも住人が猫を飼うことが許されていたそうだ。猫の飼育禁止は、この都市国家の厳格な規則文化の一例だと言われている。

 HDBは公営住宅を99年リースで有資格者に直接販売している。その結果、世界でも有数の持ち家率を誇るようになったが、居住者には多くの制限や規制があるという。

 HDBのウェブサイトでは、猫の飼育を禁ずることを正当化するような文章がある。

猫はアパート内に閉じ込めるのが難しい。また、毛が抜けたり公共の場所で排泄や排尿をしたりし、鳴くと近隣住民の迷惑になる傾向がある。
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pixabay

2024年後半にも猫の飼育を解禁、1世帯2匹までとなる見込み

 いったいなにが、シンガポール政府の考えを変えさせたのかは定かではないが、2022年に行われた公式の調査で、回答者の10人中9人猫を飼うのに適したペットであると答えたことが転機となったようだ。

 ちなみに、犬は猫ほど厳しくはないが制限が設けられている。犬は1世帯につき1匹までとし、ペットとして飼えるのは特定の犬種と大きさに限られている。

 例えば、ミニチュアプードルは「可」、ゴールデンレトリバーは「不可」となっている。

 当局は現在、今年後半に施行されるはずの「猫管理の枠組み案」について一般市民を対象に調査を行っている。

 市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルは、今後の猫の飼育数の急増を予測している。

 キャットフード会社の見通しに関する報告書によると、シンガポールでは現在の猫が約9万4千匹、犬が約11万3千匹いると推定されている。

 2015年に国会議員になる前に動物保護団体を運営していた議員も、法律の変更によって保護された猫を飼う人が増えることを期待している。

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 新しい枠組みでは、公営住宅の居住者は猫を2匹まで飼える見込みだ。

 飼い主には猫を飼育する許可証が与えられ、猫にマイクロチップを装着することや、猫が高層階から落ちないよう窓に網戸を設置することが義務付けられているという。

 しかし愛猫家の中には、新しい規制は十分ではないと言う人もいる。

 キャット・ウェルフェア・ソサエティのテヌガ・ヴィジャクマールさんは、不妊手術を義務付けることを望んでいる。

 猫の救済活動をしているチャン・チャウ・ワーさん(50)も、無責任な飼い主に対する罰則を望んでいる。

 チャンさんは3階から転落し、飼い主が医療費の支払いを拒否した猫や、心臓病と診断されて捨てられた猫を保護しなければならなかったという。

 「結局、保護活動をする人が引き受けることになるんです。基本的に、彼らが亡くなるまで私が世話をします」とチャンさんは言い、2022年には獣医代におよそ60000シンガポールドル(約650万円)を費やしたと話している。

 一方で、ムーンケーキの "ママ "であるサニーさんのような多くの猫の飼い主にとって、この法律改正は安心感をもたらす恵みだ。

 「良いことだと思いますし、よい一歩だと思います」と彼女は言う。

 法が施行されたとき、飼育許可証を得るためにどれだけの数の隠れ猫の申請がなされるか、また行政官僚にとっても法の執行が緩いときにどれだけ法律が忠実に守られるのか、興味津々といったところだろう。

References:Singapore’s clandestine cats can soon legally call the city-state home/ written by Scarlet / edited by parumo

 
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シンガポールで猫の飼育が解禁、公営住宅で猫を飼うことが34年ぶりに認められる