US-2は救助のために往復3200kmを飛んだことも。

新明和工業が独自開発したオリジナル飛行艇

海上自衛隊阪神基地隊は2024年1月10日US-2救難飛行艇瀬戸内海で行っている試験飛行の様子を動画で公開しました。

飛行艇とは胴体下部が船形をしており、海上でも発着可能な飛行機のことで、US-2は日本生まれの国産機として現在、海上自衛隊で7機が運用中です。

US-2はもともと「US-1A改」として開発がスタートした機体です。その名称が示すように、前のタイプとしてUS-1A救難飛行艇があり、さかのぼるとUS-1(US-1Aは出力向上型)自体、新明和工業が独自開発したPS-1対潜哨戒飛行艇が原型になります。

そのため、US-2はPS-1やUS-1Aとよく似た外観です。ただ、エンジンは出力の大きなロールス・ロイス「AE2100J」、プロペラは推進効率に優れた6枚羽になっています。また中身も一新されており、機体の構造材には新たに炭素繊維複合材(CFRP)やチタン合金が使われ、燃料搭載量が増加したほか、機内の与圧化も図られたことでUS-1Aよりも高い高度での飛行が可能となっています。

加えて操縦系統は電気信号によるフライ・バイ・ワイヤコンピュータ制御になり、操縦室も一新され、最新のフルカラー液晶画面を多用したグラスコックピットとなったほか、夜間や悪天候時などに威力を発揮する赤外線監視装置(FLIR)を新たに搭載するなど、さまざまな面で性能向上が図られており、事実上ニューモデルといえるほど一新されています。

今回、阪神基地隊がUS-2の離着水と水上滑走の様子を公開したのは、近傍にメーカーである新明和工業の甲南工場があるからです。動画には駐機場からスロープを使って海面へ降りるなど、めったにみられない希少な様子が収められていました。

海上自衛隊のUS-2救難飛行艇(画像:群馬地方協力本部)。