友人や家族など、親しい人との会話を思い浮かべてください。「やばい」「えぐい」「だるい」など、限られた言葉ばかり使ってはいませんか? 使い勝手がいいからと決まった言葉だけで過ごしていると、自分の感情も決まった言葉でしか表現できなくなってしまいます。シリーズ累計20万部突破、齋藤孝氏の著書『「伝える力」が伸びる!12歳までに知っておきたい語彙力図鑑』より一部を抜粋し、本稿では「やばい」「えぐい」「だるい」の代替表現となる語彙を見ていきましょう。子どもはもちろんのこと、大人の語彙力アップにも役立つ内容です。

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【難易度の目安】

☆☆☆☆……知っていて当然

★★☆☆☆……知っている子もいるかな?

★★★☆☆……知っているとかっこいい!

★★★★☆……大人も知らないかも?

★★★★★……大人顔負け!

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「やばい」を言い換えてみよう(図表1)

⇒実は江戸時代からある言葉

やばい」は危ないこと、具合が悪いことを意味する「やば」から生まれた言葉だよ。江戸時代、泥棒が自分たちの身に危険が迫った時に、仲間だけに伝わる秘密の言葉として「やばい」と表現するようになったといわれているんだ。これがいつの間にか広まって、誰でも知っている言葉になったよ。

もともと悪い意味合いで使われていたけれど、最近では最高や素晴らしいのように、良い意味合いでも使われるようになってきたよ。言葉は時代に合わせて進化するから面白いよね。驚くほど素晴らしいという意味で使うなら、驚異的とも言い換えられるよ。

「えぐい」を言い換えてみよう(図表2)

⇒最近では、感心したり、ほめたりする意味合いでも使われるように

「えぐい」はもともと、味を表現する言葉として生まれたよ。春に芽を出すフキノトウのような、苦さやアクの強さをもつ味がえぐいなんだ。

そこから転じて、ひどいやどぎついのように、人に不快な思いをさせる物事に対しても使うようになったんだ。最近では感心したり、ほめたりする意味合いでも使われるよ。その点では、「やばい」とよく似ているね。物事の程度が普通をはるかに超えている様子なら、半端ではないと言い換えられる。話し言葉で使うなら「半端じゃない」だね。「半端」は、数や量が不十分なこと。みんなで半端ではない語彙力を目指そう!

「だるい」を言い換えてみよう(図表3)

⇒最近は「面倒くさくて、積極的に取り組めない気持ち」にも使われるように

「だるい」は病気や疲れが原因で体に力が入らなかったり、思うように動けなかったりする時に使う言葉だよ。「風邪で体がだるい」といった具合だね。

それに加えて最近では、面倒くさく感じて、積極的に取り組めない気持ちに対しても使われるようになってきたんだ。ここでは、そちらの意味の言い換えを紹介しよう。気持ちの「気」を使って、気が重いや気が乗らない、気が進まないといった表現があるよ。

億劫は仏教の言葉で、極めて長い時間のこと。そこから(時間がかかり過ぎて)面倒に感じるという意味になったといわれているよ。

齋藤 孝

明治大学文学部教授

1960年静岡県生まれ。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。著書に『語彙力こそが教養である』『小学3年生から始める! こども語彙力1200』(いずれもKADOKAWA)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)、『声に出して読みたい日本語』(草思社)、訳書に『現代語訳 論語』(ちくま新書)など多数。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。

(※写真はイメージです/PIXTA)