日生劇場5月公演のミュージカルこの世界の片隅に』より、ビジュアルとオールキャストが解禁され、音楽を手がけるアンジェラ・アキや主演(ダブルキャスト)の昆夏美大原櫻子らからコメントが届いた。

【写真】ミュージカル『この世界の片隅に』キャスト全員登場 速報PV

 こうの史代による原作漫画は、太平洋戦争下の広島県呉市に生きる人々の物語でありながら、つつましくも美しい日々とそこで暮らす人々が淡々と丁寧に描かれた。2度にわたる映画化、実写ドラマ化と、さまざまに形を変えて永遠に残り続けるであろう不朽の名作を、ミュージカルとして新たに上演する。

 脚本・演出は上田一豪、音楽を手掛けるのは、2014年の渡米からミュージカル音楽作家として10年ぶりに再始動するアンジェラ・アキに決定。

 キャスト陣は、絵を描くことが大好きな主人公の浦野すず役を昆夏美大原櫻子ダブルキャスト)、すずが嫁ぐ相手の北條周作役を海宝直人と村井良大ダブルキャスト)、すずと周作の三角関係となる白木リン役を平野綾桜井玲香ダブルキャスト)、すずと幼なじみで淡い恋心をいただいていた水原哲役を小野塚勇人と小林唯(ダブルキャスト)、すずの妹の浦野すみ役を小向なる、周作の姉ですずにとっては義姉の黒村径子役を音月桂が演じる。

 音楽を担当するアンジェラ・アキは、「ミュージカルの音楽作家になりたくて、10年前にアメリカの音楽大学に入学し、作曲を学び直しました。その学びの体験を経て素晴らしい作品に巡り会えたことを心から光栄に思っています」と自身の経験を交えコメント。主人公を演じる昆は「初めてこの作品に触れた時、登場人物たちが日々の生活の中でささやかな幸せを見つけながら懸命に生きていた姿が心に残りました」と振り返る。同じく主人公・すず役の大原は「アニメーションなどでも、多くの方に愛されている作品でもあり、今作の内容をお客様に届けるには、日本人として、大きな責任感と覚悟を持って臨まなければならない作品だと思っております。子供から大人まで、愛され、心に刻まれる作品にする為、一生懸命演じたいと思います」と意気込みを述べた。

 日生劇場で開幕の後、全国ツアーを展開し、『この世界の片隅に』の舞台である広島県呉市にて大千穐楽を迎える予定となっている。

 ミュージカルこの世界の片隅に』は、日生劇場にて5月9~30日上演。6月に北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru、岩手・トーサイクラシックホール岩手 大ホール(岩手県民会館)、新潟・新潟県民会館 大ホール、愛知・御園座、7月に長野・まつもと市民芸術館、茨城・水戸市民会館 グロービスホール、大阪・SkyシアターMBS、広島・呉信用金庫ホールにて上演。

※キャストらのコメント全文は以下の通り。

アンジェラ・アキ 音楽

この度、『この世界の片隅でミュージカルに音楽担当として参加させて頂く事になりました。ミュージカルの音楽作家になりたくて、10年前にアメリカの音楽大学に入学し、作曲を学び直しました。

その学びの体験を経て素晴らしい作品に巡り会えたことを心から光栄に思っています。ミュージカルには「何故それを舞台化するのか」という問いにはっきりとした答えが必要です。このお話しを頂いてから改めてこうの史代先生の原作を読み、作品の素晴らしさに深く感動しました。そして上田一豪さんが書き上げた脚本を読んだ時に、この作品を舞台化することの意味がはっきりとわかりました。家族とは何か。絆とは何か。自分の居場所はどこにあるのか。もがきながらも常に前に進んでいく登場人物の中にある強さ、そして優しさを伝えるお手伝いをさせて頂けるのだと、心が躍りました。上田さんの美しい脚本には音楽の入る余白があり、「ここにはこういう楽曲がほしい」といった思いもそこから伝わってきました。すずはここでどう思ったのだろう、周作はこの瞬間に何を感じたのだろう。それは悔しさなのか、怒りなのか、それとも悲しみなのか。上田さんの脚本、そして原作を何度も何度も読み直し試行錯誤する中で、登場人物の心をどんどん知ることができました。ときには、「その台詞は歌にしたほうが強く響くから、歌にください」と言って、頂いたり。そうやって上田さんと密にやりとりしながら1年かけて30曲近くの歌を書きました。そして役者さんたちが脚本を読みながら歌うワークショップをしたときに、これは素晴らしいミュージカルになる! と実感できました。登場人物たちの頭や心の中に入って、場面毎に音楽で寄り添うことが出来たのではないかと、その段階で感じられたのです。舞台化まであと少し、この総合芸術であるとも言えるミュージカル作品を作り上げる喜びを噛みしめています。会場でこの作品をご覧になった皆様の心が、作品を彩る優しさにそっと包まれますように。

昆夏美 浦野すず役(ダブルキャスト

原作漫画から映画化・実写ドラマ化され、様々な形で新しく誕生を続けたこの作品のミュージカル化ということで、今回はどのような『この世界の片隅に』が生まれるのかと期待に胸が膨らみます。初めてこの作品に触れた時、登場人物たちが日々の生活の中でささやかな幸せを見つけながら懸命に生きていた姿が心に残りました。かつてあった日本の日常と歴史をキャスト・スタッフ一同、舞台上で丁寧に描いていければと思います。

大原櫻子 浦野すず役(ダブルキャスト

台本を読ませていただいた時、ずっと涙が止まりませんでした。そして、劇中に歌わせていただく音楽を聴いて、改めて、この作品ですずを演じたい、と自分の気持ちが強まりました。アニメーションなどでも、多くの方に愛されている作品でもあり、今作の内容をお客様に届けるには、日本人として、大きな責任感と覚悟を持って臨まなければならない作品だと思っております。子供から大人まで、愛され、心に刻まれる作品にする為、一生懸命演じたいと思います。

■海宝直人 北條周作役(ダブルキャスト

今回周作を演じさせていただきます。映画やドラマなど様々な形で愛された不朽の名作のミュージカル化初演に携われることを心から光栄に思います。この作品に初めて触れた時、淡々と描かれる日常の中にある生々しい温度感や息遣いに惹き込まれ胸を打たれました。この物語が伝えるものを自らの肉体を通してしっかりと皆様にお届けできるよう、作品と向き合ってまいります。素晴らしいクリエイター、キャストの皆さんと作るミュージカルこの世界の片隅に』にどうぞご期待ください。

村井良大 北條周作役(ダブルキャスト

この作品の映画版を祖母と一緒に映画館で観ました。上映後に祖母に色々と質問した事を覚えています。当時の食料不足や生活での知恵、戦争の爪痕…そして当時は何も物が無かった、と言っていました。しかし、作品の中では様々な人間模様が丁寧に描写されていました。生きていく事の愉快さ、賢明さ、日常の中の小さな幸せ、前向きに生きている日本人たち。その細やかさを、心の奥深くに響く素敵な旋律にのせてミュージカルとして創作される事にとても興味が湧いています。忘れてはいけない歴史。心に残る作品を創れるよう懸命に向き合いたいと思います。

平野綾 白木リン役(ダブルキャスト

オーディションで世界観や音楽に初めて触れた時、ストレートプレイではなくミュージカルであることの意味をとても感じ、この作品のメッセージがたくさんの方に優しく降り注げば良いなと思いました。

終戦から79年経ち、当時の生活をリアルに伝えることで、過酷な歴史のなかで生きたひとりひとりの人生の喜びや幸せ、葛藤を感じていただけたらと思います。リンとして見えるもの感じるものを大切に、精一杯役として生きていきます。

桜井玲香 白木リン役(ダブルキャスト

この世に生きる限り、身近な存在であり、決して忘れてはいけない〈戦争〉。その事実を、優しく、静かな厳しさをもって伝えてくれている作品だと感じました。映画、ドラマに続いてのミュージカル化。

きっとまた新たなメッセージをこの作品でお届けできるかと思います。

小野塚勇人 水原哲役(ダブルキャスト

この度、水原哲役を演じさせていただきます。この仕事を始めてからなのですが、何度か戦争を題材にした作品に出させていただく機会がありまして、役者というエンターテイメントの一つに入る仕事をしながらも忘れてはいけない日本の歴史であり、その様な事実があって今の平和がある事を忘れてはいけないと作品に入るたびに改めて思います。僕自身も毎回戦争を題材とした仕事に関わるときはしっかりとその出来事を忘れずに大事に演じていきたいと思います。そしてアンジェラ・アキさんが作り出す素晴らしい楽曲に乗せて皆様に「平和」を届けられたらなと思っています。

■小林唯 水原哲役(ダブルキャスト

史実を背景にした本当にあったかもしれない物語。戦時中という今では考えられない過酷な環境下においても人の温かさがあったことを教えてくれる作品だと感じました。ミュージカルとして新しく生まれ変わるこの作品に参加出来ることを誇りに思うと同時に強い責任も感じています。作品と水原哲の真実をお届けできるよう誠実に丁寧に全力で挑みたいと思います。劇場を出た時に何か一つ大切なものを持ち帰って頂けますように。

■小向なる 浦野すみ役

私が5歳の頃、祖母が戦時中の話をしてくれたことがありました。当時は幼いなりに想像をして、別世界のことのように感じていたと思います。しかし本作品を通じて、その時代に生きた人たちが私たちと同様に日々の暮らしの中で悩み、そして幸せを感じているんだと知ることができ、祖母の話を聞いた時よりも非常に身近に感じられました。この作品に参加できることをとても嬉しく思います。そして、この素敵な作品を皆様に心を込めて届けたいと思います。

音月桂 黒村径子役

多くの方に愛され、これから先もずっとずっと語り継がれていくであろう作品に触れ、携わることができてとても光栄です。激動の時代を強く美しく生き抜いた人々の物語…全身全霊をかけてお届けしたいと思います。皆さまの心に響くぬくもりのある舞台になりますように。

ミュージカル『この世界の片隅に』本ビジュアル