東北はアダルティ! 関東は見えない美しさ! 関西はド派手! かつてデコトラには「地域による文化の違い」が存在した

この記事をまとめると

■日本独自の文化として知られるデコトラ

■デコトラにはさまざまなスタイルのものが存在する

■今回はデコトラ界におけるカスタムの種類を紹介

ひとくちにデコトラといってもスタイルはさまざま

 日本独自の文化として知られているデコトラ。映画『トラック野郎』で大ブームになって以来、今日まで続いている、名実ともに日本が誇るカルチャーだ。そんなデコトラは知れば知るほど面白く、また魅せられてしまうという独自の世界観を持つ。ここでは、デコトラ界におけるカスタムの種類を紹介しよう。

 ひとくちにデコトラといっても、さまざまなスタイルが存在する。デコトラと同じく日本発祥の改造車文化である「街道レーサー」には、竹ヤリやデッパなどの過激なパーツで武装し、いかにも暴走族といったスタイルを好む「チバラギ仕様」や、控えめなエアロパーツと派手なカラーリングでレーシーな雰囲気でキメた「福岡仕様」などが存在する。そのように、デコトラ界にもカスタムのスタイルが存在するのだ。

デコトラ界におけるカスタムの種類を紹介

 そもそも、デコトラとは趣味嗜好の世界観ではなく、荷物を運ぶトラック乗りたちの間で広まった文化。それがほかの改造車と比べて異質な部分なのだが、全国各地にトラックを飾り立てた愛好家が多数存在していたため、自ずと地域色がトラックに体現されていた。そのため、昭和時代のデコトラにおいては地域独特の個性が存在したのだ。

 デコトラ発祥の地として伝わる東北地方においては、大きな飾りや派手な電飾などを纏うのではなく、とてもシンプルでアダルトな雰囲気で飾られていた。そんな東北仕様のデコトラたちは、現代でもマニアたちに崇拝されており、その美学は継承されている。

 関東エリアでは江戸っ子気質というべきか、派手さよりも美しさ、そして粋な飾り付けが好まれた。羽織の裏地に刺繍を施すように、デコトラにおいても普段は見えないような部分にまで手をかける人が多かった。飾り方も気品があるものが好まれ、高品質なアイテムで武装されていた。そのようなスタイルは現代でも神格化されており、関東風アートとして全国に根付いている。

デコトラの個性は薄れてきている

 関西に入ると飾り方は一転する。派手さを好む地域性であることも手伝い、大阪人を中心に見た目重視のデコレーションが脚光を集めた。簡素な作りの大型パーツを装着し、そこにアンドンやマーカーランプといった電飾パーツを追加する。足もとにおいても、関東ではメッキやアルミホイールが好まれるが、関西では安価なホイールキャップで済ませ、その分派手な装飾へと費用をまわしていた傾向にあった。そんな飾り方は関西風アートと呼ばれ、1980年代のデコトラ界を席巻。いまでも少数派ではあるが、愛されている手法となっている。

 同じ関西でも、兵庫県にはもうひとつの飾り方が存在する。それは淡路島から派生したもので、精巧なるステンレス架装を売りとする「神戸・淡路仕様」だ。キャビンステンレスで覆い尽くすという刺激的な飾り方だが、硬い素材を紙細工のように施工する腕の良い職人たちが存在したことで生み出された。四方を海に囲まれた淡路島のデコトラ野郎は、車両が錆びないようにと兵庫県の本州に位置する工房で飾りを製作したのがルーツだ。そのため、神戸・淡路仕様という呼び名が定着している。

 そのほかにも、三重県の鮮魚便や北海道・九州には関西のようなド派手なデコトラが多く、中国地方においては個性的でいてハイセンスなデコトラたちが数多く活躍していた。そんな昭和時代の美学を現代でも継承するデコトラ野郎も存在するが、グローバルな世界になったことで地域色は年々薄れてしまっている。デコトラ界に必要なはずの個性や味といった魅力が、日を追うごとに消えてしまっているのだ。

デコトラ界におけるカスタムの種類を紹介

 そんな時代だが、筆者と同じことを危惧する古くからのデコトラファンも多いからだろう、古き良き時代の飾り方を彷彿とさせるデコトラも増えてきている。昔の味といまの技術力を組み合わせることができたのなら、きっとデコトラ界はさらなる飛躍を遂げるはず。

 日本が誇るデコトラ文化であるだけに、是が非でもその火を灯し続けて欲しいところだ。

デコトラ界におけるカスタムの種類を紹介

デコトラ界におけるカスタムの種類を紹介

東北はアダルティ! 関東は見えない美しさ! 関西はド派手! かつてデコトラには「地域による文化の違い」が存在した