こうなった以上、派閥は解消しなければならない――。

 自民党派閥の裏金事件をめぐる政治刷新本部の初会合を受けて、菅義偉前首相はズバリ言い放った。これに公明党からの「エール」が湧き起こり、岸田文雄首相の思惑が崩れつつある。世論の「派閥解消」の流れが強まれば、2024年度の予算成立後に「菅暫定内閣」に政局が一気に傾く可能性が出てきたのだ。

 麻生太郎副総裁、菅前首相を政治刷新本部の最高顧問に据えたものの、派閥については継続議論に。政治資金規正法の罰則強化などで「お茶を濁す」ということが、岸田首相の考え方で、なにやら怪しい雰囲気になってきた。

 公明党山口那津男代表は1月11日に初会合が開催されたことを受け、次のように述べている。

「首相経験者で最高顧問として菅義偉前総理、麻生太郎元総理も入っている。無派閥でも総裁になられたという点で、菅前総理の意見も大いに党内論議の中で生かされていくべきだ」

 岸田政権の後見人である麻生副総裁と、政権と距離を置く菅前首相を最高顧問に据える布陣。首相の狙いは「反岸田」も取り込むことで、党全体で政治資金の問題について議論した形をとることだ。すなわち菅氏の言う「派閥解消」は党内コンセンサスを得ることが難しいため、菅氏を立てる形をとりながら、麻生氏に軍配が上がるようにし、政権基盤を安定させることにある。

 だが「公明党のエール」の影響もあり、自民党内で無派閥議員を中心に、「派閥解消」の意見が声高に叫ばれ始めた。自民党国会議員でない限り、派閥が「ミニ政党」の役割を果たし、各省庁との折衝、選挙での応援など、様々なメリットがあることは理解できない。

 世間的には派閥は「金権政治」の温床であり、解消されるべきだとの意見は圧倒的に強い。派閥が存続するなら「国民一人あたり250円を負担する政党交付金は必要ない」との意見もSNS上にはある。ちなみに自民党には、140億円近い政党交付金が助成される予定だ。

 連立を組むパートナーであり、菅氏と近い公明党が「派閥解消」を応援するなら、党内でも派閥解消の火は広がっていく。ましてや世間の後押しもある。小泉進次郎氏、三原じゅん子氏など、目立つ国会議員は菅氏側近であり、声はますます大きくなるだろう。

「派閥解消が大きな論点になり、菅氏陣営が優勢になれば、派閥解消論と岸田政権倒閣運動がセットになる可能性は十分にある」

 と全国紙政治部デスクは話す。

 これだけの裏金スキャンダルが発覚した今、国民は自民党の「改革の本気度」をじっくりと監視している。

(健田ミナミ)

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