不動産投資において重要なのは「物件の価値を最大化して高稼働で運営すること」と株式会社ピカいちの代表取締役・柳田将禎氏は言います。地域に合わせたリノベーションと価格設定を行うことで、高利回りを生み出すことが可能となります。柳田氏の著書『ピカいちのリフォーム投資 改訂版』より、不動産投資の運営において大切なポイントを見ていきましょう。

稼働率を上げるために欠かせない「付加価値」とは?

不動産投資では物件の価値を最大化して高稼働で運営することが欠かせません。

いくら高利回りの物件を買っても、想定どおりに埋まらなければ、試算したとおりの結果は残せないのです。

したがって、第一段階として物件をきちんと管理し、入居者を迎える準備を行い、そのうえで付加価値をつけることが大切です。また、地域に合ったリフォームと適切な価格設定を行えば、当初の利回りを上回ることも十分可能となります。

ポイントは、リフォームに遮二無二お金をかければいいわけではないということです。

たとえば、モニター付きインターフォンも少額でつけることができてお勧めですが、アクセントクロスは選び方を間違えると、かえって部屋のイメージを損ねてしまいます。

設備をバリューアップすればよいとも限らない

不動産は個別的要素が強く、地域性もあるので、一概に正解があるわけではありません。そのエリアでは当たり前のように普及していても、隣町ではまったく普及していないものがあるかもしれないのです。

事例をあげれば、シングルタイプの狭小物件には家具・家電付きの部屋に訴求力があるといわれています。しかし、もしも近隣のライバル物件すべて家具・家電付きだったらどうなるでしょうか。

ただ周りがそうしているからといって、まねをすれば満室になるかというと、そんなこともないのです。設備をバリューアップするよりも、シンプルに家賃を下げたほうが良いケースもあります。

狙うべきは「マックス家賃×0.8」

多くの場合、地域ごとに「マックス家賃」があるものです。マックス家賃とは、そのエリアでもっとも高く設定できる家賃のことを指します。

そもそも費用をかければ無限大に家賃が伸びるわけではありません。このマックス家賃を上回る計画は、ただの自己満足になってしまいます。

つまり一番大切なのは、物件周辺の不動産業者へのヒアリングを行い相場を把握し、地域の特性を生かし物件を作り上げていくということなのです。

家賃を上げて高稼働させる……それを実現させるためには、どんな要素が必要なのか。まずはその家賃に対してどうすべきかを考え、そのうえでライバル物件との差別化を図ります。管理会社や客付会社、不動産会社にヒアリングを行い、どの戦略を選ぶかを決める必要があるのです。

千葉県千葉市中央区にある木造アパートの事例で説明しましょう。

すでに築年数が法定耐用年数を超えている物件です。まずは周辺の賃貸業者へ「賃貸物件としていくらで貸すことができるのか?」とヒアリングしたところ、現況での募集は難しく、たとえ原状回復しても、賃料は3万円から3万5,000円がいいところではないかという返答でした。

そこで同じような立地条件と広さで、最も高い家賃はいくらなのかを問えば、6万円という返答でした。つまり、6万円がこの物件のマックス家賃ということです。

ただしマックス家賃というものは、新築物件や分譲マンションなど高スペック物件が多いので、ある程度の築年数が経ったアパートは、あえてマックス家賃×0.8%と控えめに計算します。この事例でいえば4万8,000円です。

ようは物件の相場賃料から1万3,000円〜1万8,000円も高い家賃を目指すのですが、そのためには、ただのリフォームでなく、予算をある程度つかって、しっかりと手をかけたリノベーションをすることが前提となります。

この物件では「木の温もりを活かした清潔感と高級感のある女性にも好まれる部屋」というコンセプトで部屋をつくりました。

実際に、壁や床はもちろん、古びた和室を洋室にし、建具から設備まで一新しました。その結果、想定通り4万8,000円の家賃が得られるようになりました。

なお、リノベーションコストは150万円でしたので、リフォーム利回りは19.4%です。

リノベーションの際には、そのプランニング、建築業者や工務店の選び方にもよりますが、この条件を満たすことができれば、まず間違いなく高稼働・高利回りを生み出すことが可能になります。

柳田 将禎

株式会社ピカいち

代表取締役

(※写真はイメージです/PIXTA)