スティーブン・スピルバーグが製作を手がける2月9日(金)公開のミュージカル映画『カラーパープル』。本作で映画初主演を務めたファンテイジア・バリーノが第81回ゴールデングローブ賞で主演女優賞にノミネートされる快挙を達成した。

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本作は、ピューリッツァー賞受賞のアリス・ウォーカーによる同名小説を原作に、スピルバーグによる監督で1985年に製作された同名作品のリメイク版。新鋭ブリッツ・バザウーレ監督が、20世紀はじめの米国南部を舞台に、14歳の少女セリーが最愛の妹との別れ、望まぬ結婚など不遇の日々を送るなかで、型破りな女性たちとの出会いによって変わっていく姿を40年に渡って描いていく。

本作の主人公であるセリーは38年前に公開されたオリジナル版で初主演にしてアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた、ウーピー・ゴールドバーグが演じた役柄。今回、ミュージカル映画となった『カラーパープル』で、セリー役を託されたのはR&Bシンガーで女優のバリーノ。圧巻の演技が高く評価され、映画初主演にも関わらず、第81回ゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされるなど、世界中から注目が集まっている。

バリーノは2004年、オーディション番組「アメリカン・アイドル」3rdシーズンに出場し、音楽一家に育ったことで磨き上げられた抜群の歌唱力で、見事優勝をおさめる。デビューシングル「I Believe」はBillboard Hot 100で全米1位獲得の快挙を達成。グラミー賞をはじめ、数多くのアワードでノミネートや受賞をはたし、スターへの階段を駆け上がった。2006年には自身の半生を綴った自伝小説「Life is not a fairytail」がドラマ化され、自ら主演&女優デビューを飾り高視聴率を叩きだした。

そして2007年、彼女は当時ブロードウェイで公演されていたミュージカル「カラーパープル」でセリー役を引き継ぐことに。ヘビーな役柄だけに彼女のなかで演技への挑戦は精神的につらいものだったそう。当時を振り返ったインタビューでは「ブロードウェイでセリーを演じたときには、舞台を降りるたびに少し悲しい気持ちになり、へこんでいました」と語っている。複雑な思いを抱えながら演じていたバリーノだが、その歌声と演技は多くの人の心を掴み、当初2007年10月までと6か月限定の出演予定が翌年の1月までに延長された。ミュージカルの大ヒットを受け、バリーノは同年のシアター・ワールド賞とベスト・リプレイスメント・スター・ブロードウェイ・ドットコム賞を受賞している。

ブロードウェイの歴史に残る女優となったバリーノが、今度はスクリーンでその輝きを放つ。本作のオファーを受けた当初は出演を断ることも考えたそうだが、バザウーレ監督から主人公セリーの持つ想像力の表現や新たに加わった楽曲を聴き、即答でオファーを受けたとのこと。オリジナル版の映画や舞台版では沈黙の多かったセリーが、豊かな想像力を表現し、自分たちの強さに気づいていく。ミュージカル映画として生まれ変わった『カラーパープル』が描く囚われの身から解放される姿に心奪われたのだという。バリーノの起用について監督のバザウーレは「登場人物のエッセンスを体現できる人たちを探していました。彼女は生まれながらのファイターで、優れたアーティストで、彼女が生きる世界で真の巨匠になった人なのです。彼女の演技に、きっと誰もが圧倒されると私は確信しています」と賞賛。

舞台版への出演から16年の時を経て再びセリーを演じることになったバリーノは「ミュージカル出演から、私はずっと年をとって、賢くなって、結婚して、子どもも増えたから、セリーに対して異なる視点で臨むことができた」と自身の成長が新たなセリー像を生んだと語る。本作の魅力について「私たちはオリジナル版を変えたい訳ではありません。あの映画のスピリットが素晴らしいからです。ただ、若い世代とつながりたいと私たちは思っています。歌やダンス、衣装やストーリーにところどころひねりを加えて完成した映画は、いまの世代にフィットする作品になっています」と、原作から映画、舞台へと受け継がれたスピリットを継承し、さらなる高みを目指したと力強く語っている。

エモーショナルな演技と圧巻の歌唱力、ファンテイジアの心震わせる熱演をぜひスクリーンで堪能したい。

文/スズキヒロシ

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