ジェイソン・モモア主演の『アクアマン/失われた王国』が公開中。本作は海底アトランティスの王アクアマンが、かつてない脅威から海と地上の世界を守るアクションエンタテインメント大作だ。個性豊かなキャラクター、家族の絆を軸にした胸アツな人間ドラマ、そして体感的アクションかつスペクタクルを満載した本作の魅力をひも解いてみたい。

【写真を見る】さらに進化した肉体美を披露したジェイソン・モモア

シリーズの1作目である『アクアマン』(18)は、海底人と地上人の間に生まれたアクアマンことアーサー(ジェイソン・モモア)が、アトランティスの王になるまでの「誕生編」だ。ある晩、灯台守のトム(テムエラ・モリソン)は岩場で倒れていたアトランティスの王女アトランナ(ニコールキッドマン)を救出。やがて2人は恋に落ちて息子アーサーが生まれたが、アトランナは海底人によって祖国に連れ戻されてしまった。成長したアーサーは、海底人から受け継いだ超人パワーを生かして海の平和を守る男“アクアマン”として活躍。そんなある日、彼はアトランティスの王位に就いた異父弟オーム(パトリックウィルソン)が海を汚す地上人に戦争を仕掛けようとしていると知らされる。

ジェイソン・モモアは“リアルアクアマン”!

アクアマン」シリーズの魅力の一つは個性あふれるアクアマンのキャラクターにある。海底人と地上人の血を引くアーサーは、弾丸をはね返す強靱な肉体と鋼鉄をねじ曲げるパワー、時速160kmで泳いだり、海の生物と心を通わせたりする多彩な能力を持つ男。困っている相手を見過ごせない“海の守護神”でありながら、なにかに縛られるのを嫌って常にオレ流を貫く自由人でもある。オームを止めるには兄である自分が彼の代わりに王になるしかないと説得され、渋々王位に就く決意をする。

そんなアクアマンを演じてブレイクしたのが、いまや『DUNE/デューン 砂の惑星』(20)や『ワイルド・スピードファイヤーブースト』(23)など話題作への出演が相次いでいるジェイソン・モモアだ。「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズで悲劇の王カールを演じて注目されたモモアは、190cmを越える身長とマッチョなボディ、情感豊かなキャラクターの持ち主。学生時代には海洋学を学び、海洋汚染やエコロジーを盛り込んだ脚本にも惚れ込んだと語る、まさに“リアルアクアマン”なのだ。

映画史に残る合戦シーンなど、爽快なアクションたっぷり!

アーサーとオームの争いを描いた1作目の見せ場は、なんといっても海中アクションにある。主な舞台は海中深くにあるアトランティス。幻想的な色彩あふれる海中の浮遊感や、猛スピードで泳ぎ回るアーサーや海中カーの激しいチェイスが体感的な映像で描かれている。監督は『ワイルド・スピード SKY MISSION』(15)のジェームズ・ワン。潜水艦トライデント(=三又槍)で豪快に切り裂いたり、溶岩の吹き出す海底火山での死闘、潜水艇による海底ドッグファイトなど、「ワイルド・スピード」を彷彿とさせるアドレナリン全開の海中アクションが次から次に登場する。

サスペンス映画で名をあげたワン監督の持ち味が、変幻自在なカメラワーク。それは「アクアマン」シリーズでも健在で、アクションの最中にいきなり画面が回転するなどゲームのようなトリッキーな映像が、アトラクションのライドに乗っているかのような臨場感を生み出した。海の生物たちによるスペクタクルも圧巻だ。クジラやサメ、魚竜モササウルス、巨大なシードラゴンまで多種多様な生き物たちが次々と登場し、海底人や海の生物の大群が入り乱れるクライマックスの一大スペクタクルは、映画史に残る合戦シーンの一つといってもよいだろう。

■「ワイスピ」にも通じるドラマチックな人間模様

親と子、兄弟の絆や確執を描いた人間ドラマも見ごたえがある。アーサーとオームは王位を巡り激しい争いを繰り広げるが、物語のベースにあるのは家族の絆。男手ひとつで育ててくれた父との絆、赤ん坊の頃に姿を消した母への複雑な思い、違う世界で育った弟とのボタンのかけ違いなど普遍的な物語が共感を呼ぶ。さらに、パワースーツを着たブラックマンタ(ヤヒヤ・アブドゥル=マティーンII)というヴィランも登場するが、彼の目的もかつてアーサーとの戦いで命を落とした父親の敵討ち。弟の敵を討つためドムファミリーに牙をむく『ワイルド・スピード SKY MISSION』で初登場した“戦闘マシーン”デッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)とリンクするキャラである。立場や環境の違いが生み出すドラマチックな人間模様も見どころなのだ。

エンタメ要素を詰め込んだ『アクアマン』は、公開されると世界各国でNo.1のオープニングを達成。歴代ワーナー・ブラザース映画全作品の世界興収ランキングでも『バービー』(23)、『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(11)に次ぐ歴代3位(2024年1月現在)という破格の大ヒットを記録した。そんなアクアマンの原作は、バットマンスーパーマンでおなじみのDCコミックス。モモア演じるアクアマンが最初にスクリーンで大暴れしたのも、バットマンワンダーウーマンと共闘した『ジャスティス・リーグ(17)だった。ただし、シリアスな作風が持ち味のDCユニバースに対し、純真エンタメ作として完成した『アクアマン』のテイストは別もの。記録破りの大ヒットを達成したのも、痛快さや圧倒的なおもしろさ、そしてモモア演じるアクアマンのキャラクターの魅力がその要因だろう。

■没入感がレベルアップ!最新作でアクアライドを体験

アクアマン』から6年を経てついに公開されるのが『アクアマン/失われた王国』である。舞台は前作の4年後。アクアマン打倒を狙うブラックマンタが、世界を滅亡させる古代兵器ブラック・トライデントと共に太古に封印されていた海底王国の邪悪な力を甦らせようとする。アーサーに息子が生まれたり、最強の敵を前に、海と地上の世界を守るため監獄に収監されていたオームに協力を求めたり、今作も親子や兄弟の絆をテーマにした熱いドラマを展開。海底人と地上人の血を引くアーサーが海と陸の懸け橋になるという使命に目覚めるなど、スケールを増した物語が味わえる。

アクションもさらにスケールアップした。前作ではアーサーとオームの争いと並行し、海の覇王の座を狙うオームによる陰謀や駆け引きが繰り広げられたが、今作は彼ら2人の大冒険がメイン。生まれや育ち、考え方もまるでう兄弟が、対立しながら巨大な敵に挑む姿がユーモアを交えながらアップテンポで描かれる。砂漠地帯での激しいチェイス、海のならず者が集まる危険な海中砦での大乱闘、巨大生物が生息する危険な火山島でのバトルなど、スピード感、スケール共に振り切った見せ場が次々に登場。クライマックスには復活した王国軍との壮大な合戦シーンも盛り込まれるなど、よりライドを増した見せ場に圧倒される。

DCEU最後の大花火となる1作…さらばモモア版アクアマン

そんな『アクアマン/失われた王国』は、2023年12月に世界74か国で公開。全米など各国で初登場No.1を飾り、2024年1月10日時点で全世界興収488億円の大ヒットを記録している。前作に続いて熱狂的に迎えられている本作だが、これがモモア=アクアマンの見納めになりそうだ。というのも2013年より続いてきたDCユニバースは、本作でひとつの章の幕を閉じることが決まっているのだ。2022年にDCスタジオの共同CEOになったジェームズ・ガン主導で新たなユニバースが準備中だが、アクアマンがどんな形で組み込まれるかはまだ明かされていない。しかし、10年にわたって繰り広げられたDCユニバースのオーラスを飾るのがアクアマンというのは実に彼らしい。「最後は俺がきっちり締める!」と言うかのように豪快なアクアマンラストバトル、ぜひ胸に刻みつけてほしい。

文/神武団四郎

ジェイソン・モモア版アクアマンのラストバトルに絶賛の嵐/[C]2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. TM & [C] DC