地球よりも太陽に近い金星は、まさに灼熱地獄のような暑さだが、意外にもその上空には馬のしっぽを思わせる「氷の雲」が形成されている可能性が高いという。
『Advancing Earth and Space Sciences』(2023年11月30日付)に掲載された研究によると、金星の120km上空はマイナス180度もの寒さで、水や二酸化炭素が凍って氷の粒子になると考えられるという。
そこからできる氷の巻雲は、灼熱の金星から水が逃げるのを防いでいるのかもしれないそうだ。
金星は太陽系で最も高温の惑星だ。地表の温度は460℃にもなり、鉛が溶けるほどの灼熱地獄である。
もっと太陽に近い水星よりも暑い理由は、金星をつつむ二酸化炭素(そう、温室効果ガスだ)の濃密な大気が熱を逃さないからだ。
ちなみに水星の表面温度は、太陽に面した側で約430℃、暗い側で約マイナス180℃と大きく変化する。これは水星の自転周期が長く、太陽の照射をまんべんなく受けていないためだ。
だがそんな灼熱の木星でも、120km上空となると状況は一変する。今度はマイナス180℃まで下がることもある氷結地獄となるのだ。
英国リーズ大学の研究チームが作成した今回のコンピューターモデルによるなら、このような寒さでは、液体の水が冷えてナノサイズの微小な氷となり、それが金星の大気をただよう煙のような粒子に集まる(核生成)と考えられるという。
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それはいわば「雲のタネ」のようなもの。気温がマイナス180℃以下になると、二酸化炭素の氷の結晶がこれにくっついて、雲が大きく成長するのだ。
このため、大気の中間圏上層は、原子が不規則に並んだ非晶質の固体の水と、結晶質の二酸化炭素の氷があふれかえっている(過飽和している)可能性がある。
つまり、小さな水の氷でできた雲のタネがいつも金星を取り巻いており、折に触れて二酸化炭素の氷の雲がつかの間だけ出現するらしいということだ。
NASAのマゼラン探査機のデータから再現された金星の険しい地形/Image credit: NASA/JPL / image credit:
微小な氷の雲は金星から水の粒子を逃がさない役割
そうした氷の雲は「コールドトラップ」として作用する。上下の層に比べて、そこだけがかなり寒いため、灼熱の金星から水の粒子を宇宙に逃さない役割があるかもしれない。
なお氷の雲は、十分大きく成長して光を散乱するようになれば、実際に観察もできるはずだ。ただし寿命が短いため、決定的瞬間の目撃はそう簡単ではないようだ。
だがもしも、運に恵まれて目撃できたとしたら、地球でも見られる「馬のしっぽのような巻雲」のように見えるだろうとのことだ。
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金星は独自の環境を作り上げており、雲の中に生命体が潜んでいる可能性が示唆されているが、灼熱と氷結を生き延びられる生命体ってどんなんだろう?いつかは会える日がくるのかな。
References:Ephemeral Ice Clouds in the Upper Mesosphere of Venus - Murray - 2023 - Journal of Geophysical Research: Planets - Wiley Online Library / Ice can form short-lived clouds high above the hellish surface of Venus | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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