値上げラッシュも徐々に落ち着きを見せてきた昨今。2024年5月までに値上げ予定の食品は、去年の同じ時期と比べて6割減少になる見通しだとか。それでも人々の生活は苦しいまま。特に低収入の傾向にある母子世帯は厳しい状況に追い込まれています。みていきましょう。

60万の「ひとり親世帯」が貧困状態にある

日本の貧困問題。ひと昔であれば、「日本に貧困問題なんて」と笑う人も多かったですが、終わりのない物価高、増えることのない給与に、生活苦に陥る人が増加。いまや身近な問題といっても過言ではありません。

ここで語られる貧困は、相対的貧困。国・地域の生活レベルとは無関係に、生きるうえで必要最低限の生活水準が満たされていない状態である絶対貧困とは異なり、その国や地域の水準の中で比較して大多数よりも貧しい状態のことを指します。世帯の所得は、貧困線に満たない状態のことを言います。

*等価可処分所得(世帯の可処分所得=収入から税金・社会 保険料等を除いた手取り収入)を世帯人員の平方根で割って調整 した所得)の中央値の半分の額

厚生労働省令和4年国民生活基礎調査』によると、2021年の貧困線127万円。単純計算、手取り月10.5万円に満たない世帯が15.4%。また子どものいる世帯では10.6%、特にひとり親世帯では44.5%が相対的貧困状態にあります。

2021年調査では、ひとり親世帯は134.4万世帯。そのうち母子世帯が119.5万世帯、父子世帯が14.9万世帯でした。単純計算、60万のひとり親世帯が貧困状態にあるといえます。さらにひとり親世帯の収入分布をみていくと、年収80万円未満、1ヵ月の収入が6.6万円に満たない世帯が25%。4世帯に1世帯というのが現実です。

【ひとり親世帯の収入分布】

40万円未満:5.5%

40万~60万円:8.2%

60万~80万円 :11.3%

80万~100万円:10.8%

100万~120万円:7.1%

120万~140万円:9.7%

140万~160万円:9.3%

160万~180万円:8.2%

180万~200万円:5.6%

200万~240万円:13.5%

240万~280万円:3.8%

280万~320万円:4.1%

320万円以上:2.9%

離婚調停中の実質的シングルマザー

――灯油代が高い!

と嘆く東北地方在住、5歳の男児を抱える30代の女性。夫とは離婚調停中で、いまは自身のパートタイム、月12万円ほどの収入だけでやりくりをしているといいます。実質的にシングルマザー。「生活保護の申請を」とか、「婚姻費用分担調停申立てを」など、アドバイスをもらったといいますが、毎日の生活に離婚問題と、それどころではないといいます。

総務省統計局『小売物価統計調査』によると、全国の灯油18Lの価格は2,098円。昨年あたりから2,000円を突破し、高止まりといった状況。さらにスーパーでのひとコマ。苦しい懐事情を垣間見ることができます。

――牛乳1本230円って……たかっ!

――「お菓子!」とせがむ息子……ごめん、いま、小銭さえない!

なんとか食費を抑えようと、自身は食事を我慢することもあるのだとか。「もう、雪でも食べて空腹を紛らわすしかない(笑)」といった自虐まで。

厚生労働省の調査によると、母子世帯で養育費の取り決めを行っているのは46.7%と半数以下。養育費の取り決めをしていない理由として多いのが、「相手に支払う意思がないと思った」で40.5%。続いて「相手に払う能力がないと思ったから」33.8%と続きます。

また養育費の取り決めを行っていたとしても、必ず養育費がもらえるとは限りません。「現在も養育費を受けている」は全体の28.1%。「養育費を受けたことがある」が14.2%と、最初はもらっていたけれど、支払われなくなるケースは結構な数にのぼります。

さらに養育費の平均額は母子世帯で月5万0,485円。子ども1人の場合は、平均3万8,207円。子どもを育てるのに十分とはいえません。

離婚が成立し養育費がもらえることになっても、とても暮らしてはいけないことは分かっていると前出の女性。生活を安定させるためにも正社員を目指し、就職活動中だといいますが、未就学児のいるシングルマザー就職活動は難航中だとか。厳しい状況は、当分、続きそうです。

[参考資料]

厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』

厚生労働省『令和3年度 全国ひとり親世帯等調査』