株式投資では、株を安く買って高く売れば利益を得られますが、株価が安い・高いの見分け方が理屈としてわかっていたとしても、実際に売買する際はいくつか注意すべき点があります。本記事では、株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏が、株の「安いとき」「高いとき」を判断し、売買のタイミングを見極める際の注意点について解説します。

現実の株価は理屈通りに動かないときもある

どんなに厳密に「安いとき」と「高いとき」を見分けたとしても、株式を実際に売買する際は以下のような現象がみられることがあります。

・「安いとき」に買っても、株価がそこから下がる

・「高いとき」に売っても、株価がそこから上がる

・「安いとき」に買った株が上がったが「まだまだ上がる」と判断して保持しているうちに下落する

それはなぜでしょうか? 理由を2つ挙げます。

1.自分の判断が間違っている場合があるから

2.市場はいつも正しい評価をするわけでなく、妥当でない株価をつけることがあるから

以下、それぞれについての説明と、その対策について述べていきましょう。

自分の判断が間違っているから

株価が安いか高いかを見分ける方法は、たしかに存在します。高い精度でそれを見分けられる投資家と、そうでない投資家がいることも事実です。しかし、見分けるための方法はいくつもあり、また、お互いに矛盾するようなことも起こり得ます。

どの方法を用いるのが最善なのか、正解はないのです。

そもそも、人間が行うことに「絶対」はありません。とくに、株価が安いか高いかを見分けるというような不確定要素の大きい行為ではなおさらです。株価が「安いとき」と「高いとき」を見分ける方法はいくつもありますが、その予測が「絶対」に的中するということはなく、あくまで確率的な判断でしかないことを忘れてはなりません。

市場の判断が間違っているから

また仮に、全知全能の「神様」のような存在が「安いとき」と「高いとき」を見分け、それを「絶対的な正解」だとして示したとしても、株価というのはその予測を超えた動きをみせることがあります。

なぜならば、その神様以外の投資家が間違えた値付けをすることがあるからです。

株価というのは、市場で買われなければ上がらず、売られなければ下がりません。したがって、自分や神様がいくら「正しい」値付けをしたとしても、市場の動向によっては、それに反する動きをするケースもあるのです。

それに、市場が完全に合理的ならば、毎日毎時間の変動も、バブルも暴落も起こらないはずです。

しかしながら、複数の投資家がそれぞれの思惑をもって売買をしているため、株価は刻一刻と変化し、暴騰したり暴落したりということが起こるのです。その結果、悪い会社ではないのに何年も割安で放置されている銘柄や、会社の実態をはるかに上回る株価をつけられている銘柄が生まれることになります。

このように、市場の誤った判断により株価がおかしな動きをみせることも、想定しておいたほうがよいでしょう。

「非常に安いとき」に買い、「高いとき」を迎える前に売る

それでは、どんなに大きな労力を払って「安いとき」と「高いとき」を見分けて売買したとしても、利益が出るかどうかは運に身を任せるしかないのでしょうか。

答えはNOです。もちろん運に左右される部分もあるでしょうが、分析によって勝つ確率を飛躍的に高めることは可能です。そのために、売買時に気をつけるポイントは以下の通りです。

①「安いとき」ではなく、「非常に安いとき」に買う ②買った株が上がってきたら、「高いとき」を迎える前に売ってしまう(ただし、ほかに買う株がなかったり、そこから下がっても許容できるならば、持っているのも1つの方法)

まず①について、単に「安いとき」に買えば、自分の間違いや市場の間違いによって、さらに値が下がる可能性が十分にありますが、あらゆる投資指標からみて「非常に安い」と判断できるタイミングで買えば、そのリスクをぐっと抑えられ、また大きな値上がりの幅も見込めます。

つまり、ローリスク・ハイリターンの投資となるのです。

そして②の売るタイミングですが、あまり欲をかかずに「高いとき」を迎える前に売ってしまえば、その後の値下がりのリスクを抑えられます。このように、「非常に安いときに買い、高いときを迎える前に売る」を実践してリスクを抑えれば、利益を得られる確率を大きく高められるでしょう。

(※写真はイメージです/PIXTA)