多くは10代の後半から20代前半でスタートし、60歳で終了するサラリーマン人生。そのピークは50代、定年間近に訪れます。しかし、ノリにノッているはずの50代で急ブレーキがかかることも珍しくないようです。50代で訪れる異変……みていきましょう。

50代サラリーマンに異変!6割弱が「モチベーション低下」を感じている

厚生労働省令和4年就労条件総合調査』によると、定年制を定めている企業は94.4%、定めていない企業は5.6%。また定年制のある企業のうち、一律に定年のタイミングを定めている企業は96.9%で、そのうち60歳定年は72.3%、65歳定年は21.1%となっています。6割強の企業で60歳がひとつの区切りになっています。

一方でサラリーマンとして頂点を極めるのは、定年直前の50代。厚生労働省令和4年賃金構造基本統計調査』によると、サラリーマン(正社員/平均年齢43.5歳)の平均給与は月収で35.3万円、年収で579.8万円。20代前半で月収22.1万円だった給与は、年齢を重ねるごとに増えていき、50代後半では月収43.1万円、年収701.6万円とピークに達します。

さらに部長級の平均年齢は52.8歳。平均給与は月収で59.3万円、年収で926.6万円。従業員1,000人以上の大企業に限ると、月収は73.7万円、年収は1,215.2万円と、大台に達します。

もちろんすべてのサラリーマンが部長にまで上りつめることができるわけはなく、出世競争を勝ち抜いたエリートのみ。

役職に差はあれど、サラリーマン史上頂点に達する50代。「定年前、最後の踏ん張りどき」とやる気みなぎる中年を想像するかもしれませんが、そうとは限らないようです。

株式会社シーオメディカルが50歳〜65歳を対象に行った『仕事の意識に関するアンケート』によると、「50歳を過ぎてから仕事のモチベーションが下がった」と回答したのが、58%と半数を超えました。また「今の仕事にやりがいを感じますか?」の問いに対しては「感じている(「とても感じている」「感じている」の合計)」が38.0%。「感じていない」は30.0%でした。

企業のなかには「役職定年制」を設けているケースもあり、その場合「55歳」で平社員となるケースが多いよう。定年を前に「役職なし」は、確かにやる気がそがれるかもしれません。「出向」というケースも多く、そのまま定年、出向先で再雇用というパターンもよくみられます。若手を育てるという主旨から「配置転換」ということも。

定年前の50代。サラリーマンだから仕方がないことですが、満足のいくカタチで完走することは、結構難しいことなのかもしれません。

様子のおかしい「エリート部長」…異変の正体は?

――最近、部長の様子がおかしい

30代サラリーマンの投稿。上司である部長が最近やたらとため息をつき、「最近、調子が出なくてさ」と口にすることも。役職定年の廃止された会社。出向や配置転換などの噂もなし。部長は同期の中でもいち早く頭角を現したという出世頭で、会社でのポジションは安泰。周囲から慕われる、理想の上司だとか。

――プライベートで何かあった?

――娘さんと大喧嘩とか

噂が噂を呼んでいるものの、いまのところ原因は分からないのだとか。統計的には、月収で70万円を超えるような、典型的な勝ち組エリート。果たして、モチベーション低下の原因は……本人も周囲も、首を傾げるしかないといいます。

ほかに考えられる理由としては健康面でしょうか。たとえば「更年期」。そもそも更年期とは、以下のようなもの。

◆更年期症状

更年期に現れる様々な症状の中で他の疾患に起因しないもの

*ほてり、のぼせ、発汗、動悸、頭痛、関節痛、冷え、疲れやすさなどの身体症状及び気分の落ち込み、 意欲低下、イライラ、不眠などの精神症状

◆更年期障害

こうした症状により日常生活に支障を来す状態を指す。なお、男性の更年期障害 については、概ね40歳以降に男性ホルモン(テストステロン)の減少により、女性更年期障害と類似した症状を呈するが、病態が複雑で、まだ十分に解明されていない。

出所:厚生労働省『更年期症状・障害に関する意識調査 基本集計結果』、産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編 2020、 加齢男性性腺機能低下症候群(LOH 症候群)診療の手引き

ここでも記されている通り、更年期は女性だけでなく、男性にもあるもの。厚生労働省の調査では、50代サラリーマンの83.9%が「更年期なんて考えたことはない/疑ったことはない」と回答。一方で、少ないないながらも「更年期障害」と診断されるケースもあるようです。

●医療機関への受診により、更年期障害と診断されたことがある/診断されている

…1.7%

●医療機関を受診はしたことがないが、更年期障害を疑ったことがある/疑っている

…10.7%

●自分では気づかなかったが、周囲から更年期障害ではないか、といわれたことがある

…3.1%

●別の病気を疑って医療機関を受診したら、更年期障害の可能性を指摘された

…0.4%

サラリーマンとしていよいよ頂点に達する50代。もし「やる気がない、特に原因は見当たらない……」という場合は更年期の疑いも。一度、医師に相談するのも手かもしれません。

[参考資料]

厚生労働省『令和4年就労条件総合調査』

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』

株式会社シーオーメディカル『仕事の意識に関するアンケート』

厚生労働省『更年期症状・障害に関する意識調査 基本集計結果』