祖父母が孫に黙って孫名義の銀行口座で預金している、といったことは珍しくないでしょう。しかしこうしたやり方では、祖父母の死後、遺された家族がまさかの事態に陥ることも……。本記事では、税理士で渡辺資産税税理士事務所所長の渡辺由紀子氏による著書『いつ死んでも後悔しない! かしこい生前贈与』(PHP研究所)から、相続財産の注意点について解説します。

相続財産の対象になるのは?

次のような現金預金は、相続財産になります。どこまでが相続財産になるか、把握しておきましょう。

現金預金として相続財産に入るのは、お財布や引き出し、金庫の中などの手元にあるお金と、金融機関に預けているお金(預貯金)です。

預貯金については被相続人が亡くなった日の残高証明書を発行してもらいます。死亡日の残高に、前回の利払い日から亡くなった日までの利息を加えた額が、相続財産の額になります。

手元にあるお金 財布や金庫の中にあるお金など、すべて相続財産 ■銀行など金融機関に預けているお金 亡くなった時点の残高 金融機関に「残高証明書」を発行してもらう

家族の名義で預金したお金は誰の財産?

「名義預金」には要注意

祖父が孫に黙って孫名義の銀行口座を作り、その口座で預金をし、通帳や印鑑を祖父が管理している、といったことも珍しくありません。これを「名義預金」といいます。

名義預金は、名義は孫であっても実態は祖父の預金、ということを意味します。そのため、祖父が亡くなった際には祖父の相続財産とみなされ、孫ではなく、多くはその孫の親、つまり子が相続することになります。

「孫名義の預貯金だから相続財産に含めなくていい」と勘違いすると、申告漏れになってしまいます。

名義預金を放っておくとまさかの事態に…

相続税税務調査で最も多く申告漏れを指摘されるのが金融資産で、相続人やその家族の資産も調査され、名義預金があぶり出されます。申告漏れがあると、加算税や延滞税もかかりますから、注意してください。

・預金の名義…… ・お金を出した人……被相続人   ↓ 被相続人の財産とみなされる   ↓ 法定相続人である子が相続 =相続財産になる

孫にお金を贈りたい…年110万円の生前贈与を活用

もしも、孫に直接贈与したい、という場合には、祖父と孫の間で贈与契約を交わし、祖父の預金口座から孫の預金口座に送金するなどで贈与であることを明確にします。さらに1年に110万円以上の贈与をして贈与税の申告をしておけばよいでしょう。

祖父から孫への贈与は相続財産に含まれず、相続対策としての効果もあります。

・祖父と孫とで贈与契約を結ぶ ・祖父の預金口座から孫の預金口座に送金するなどして資金移動を明確にする ・年110万円以上を贈与し、贈与税の申告(納税)をするのが望ましい ↓ 相続財産には含まれない

渡辺 由紀子

税理士

渡辺資産税税理士事務所所長

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