Netflixにて独占配信中のNetflixシリーズ「幽☆遊☆白書」。12月14日に世界配信がスタートした本作は、Netflix週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)で初登場1位を獲得するのみならず、英語を含めた全言語シリーズで全世界2位を獲得。日本発のシリーズ作品として歴代最高となる快挙を達成している。

【写真を見る】漫画の実写化作品で印象的なキャラクターを演じてきた本郷が語る作品との向き合い方

冨樫義博の同名人気漫画を実写ドラマ化した本作は、主人公の浦飯幽助(北村匠海)らが、人間界に入り込んだ妖怪たちと人間界、魔界、霊界を舞台に壮大な戦いを繰り広げる様子を描く。アニメ化もされた人気漫画が連載開始から約30年を経ての実写化。世界中のファンから注目を集めるなか、最先端の視覚効果(VFX)技術をフル活用して日本発のコンテンツを世界に発信した。

そんな本作で本郷奏多が演じるのは、目的のためには手段を選ばない非情な性格の妖怪、飛影。原作でも高い人気を誇るメインキャラクターの一人だ。これまで数多く漫画の実写化作品で印象的なキャラクターを演じてきた本郷に、飛影役へのアプローチや最先端の技術を駆使した現場の思い出、漫画原作の実写化作品との向き合い方、さらに日本発のエンタテインメントへの想いを聞いた。

■「世界でも最高峰レベルのVFXはやっぱりすごかったです」

映像化不可能と言われてきた「幽☆遊☆白書」の実写化は率直に楽しみ、うれしいという気持ちになったという本郷。「世代で言うと、僕よりちょっと年上の方々が熱狂していた作品ですが、父と兄がアニメを観ている隣で一緒に楽しんでいた記憶があります。スーパーファミコン用で出ていた「幽☆遊☆白書」のゲームでバトルの様子を見ていたりもしたので、馴染みのある作品でした。これまでもVFXを使う派手な漫画原作の映像作品にはたくさん出演させていただきましたが、1年、2年で革新的な技術が生まれていることを、今回はさらに強く実感しました。世界でも最高峰レベルのVFXはやっぱりすごかったです。想像をはるかに超えてきました」と驚きを隠せない様子で撮影技術の進歩に触れた。

どのような映像が出来上がるのか。VFXを使った作品に多数関わってきた本郷でも想像するのは難しかったという。「どのような映像になるのかを現場で想像することは、実はそこまで必要がないと思っています。見えない敵と戦う時は想像力も必要になってきますが、逆に言うと相手がいない状況でのアクションシーンでも、VFXなら絶対ベストポジションに対戦相手をはめこんでくれるので、相手がいないほうが良い映像になることもあり得ると思うんです。対人だと微妙なタイミングのズレが、映像になった時に違和感になってしまうこともあります。それがないという意味では、見えない敵と戦うのもそんなに大変ではないのかもしれないです」と、漫画原作の映像化でVFXを使うメリットを指摘した。

■「飛影の代名詞で一番の必殺技“黒龍波”を打てたのは感動でした」

本作の見どころでもあるアクションシーンは、準備に時間をかけた。「めちゃめちゃ時間をかけてトレーニングをして挑んだので、だいぶアクションができるようになったという実感があります。撮影も大変でしたが、とにかく練習がハード。撮影に入る前、1年くらいかけて毎日3時間のトレーニングを計3~40回、100時間以上はやりました。毎回ボロボロになりながら、あざを作りまくって」としみじみ。

「これまで剣もワイヤー(アクション)もいろいろやってきたけれど、いままで求められてきたレベルとは全然違う現場でした。このくらいできたらもう大丈夫かな、というゴーサインが出るラインが全然見えなくて…。とことん追求して、ひとつできるようになると、じゃあ次はこれもやってみようか、といったクリエイティブもあったりして。とにかく追い込まれてました」と、大変さを滲ませると同時に充実感も漂わせる。「アクションは決められた手(型)をこなすものだと思っていたけれど、途中から本当に“戦える”ようになっていました(笑)。戦っているという感覚を手に入れることができた、というのかな。確実にアクションのレベルが上がったし、見える世界が違うところまでは行けたかなと思っています。今後のための基礎になりました」と自信をのぞかせた。

本郷自身も楽しみにしていたのは飛影の必殺技“黒龍波”。「飛影は普通に肉弾戦もこなすし剣も強い。見せ場はたくさんあるけれど、やっぱり飛影の代名詞で一番の必殺技“黒龍波”を打てたのは感動でした。これを10年、15年前に映像化していたら、たぶんチープな出来になっていたと思います。2023年、ここまで進化した世界基準のVFXで作った“黒龍波”はめちゃめちゃカッコよかったし、説得力が出たと満足しています。この技は、打つことで体がボロボロになってしまうくらい、危険ですさまじいパワーを秘めたものなので、その表現が見れたことはうれしかったです」。

漫画原作の実写化では欠かせない存在で、どの作品でも原作ファンをも魅了している本郷。実写化作品ではどのようなアプローチを心がけているのだろうか。「僕個人としては人気のある原作をあくまで“お借りして”作らせてもらっているという感覚です。キャラクターのイメージは大事にしたいと思っているので原作は必ず読みます。アニメも印象の強い作品だったら観ます。それこそ今回の『幽☆遊☆白書』では、声優さんの発声の仕方や声のトーンは研究させていただきました。常に原作を大切にして演じるようにしています」と自身の思いを明かす。今回の「幽☆遊☆白書」は“原作の再現”ではなく、実写化作品としての「幽☆遊☆白書」を作ることをテーマにしていたため、原作をそのまま映像化するという作り方とはまた違っていたそう。「美術チームや撮影チームもそういった心づもりで動いていたので、僕個人としては原作のイメージとチームの意識、その両方を大切にしながら組み立てていきました」と本作ならではのアプローチも教えてくれた。

続けて本郷は、Netflixシリーズ「幽☆遊☆白書」の新しさもアピール。「本当に観たことのない映像の連続でした。僕が携わっていないシーンでめちゃくちゃ感動したのが、蔵馬が縦横無尽にビュンビュン飛び回っているワンカットの長いアクションシーンです。志尊(淳)くんが演じているところと、アクション部が演じているところ、その間をどうつないでいるのか。おそらくCGキャラクターかと思うのですが、これまではカットを割ってしか撮れなかったものなのに、いまの技術でありえないつなぎ方をしてワンカットにしてしまう。そういうところにも感動しました」と目を輝かせながらピックアップ。「いままでだったらできない映像表現ができるようになっている、新しいことにもチャレンジしていると思います」とうれしそうに語った。

■「あまりでしゃばりすぎずに、粛々と自分の仕事だけをやっています」

高度な技術を取り入れた作品に数多く参加してきた本郷は、技術の進歩との向き合い方をどのように考えているのだろうか。「CGがあれだけちゃんと動いてくれるなら、例えばなにもしなくてもいいほどの映像ができる時代になってしまうほど技術は進歩していると思います。いままで非現実的だった映像を作れるようになったこと、技術でできることが増えたことは単純にうれしく思います。でもやっぱり細かい感情のニュアンスなどは生身の人間がやったほうが絶対にいいと思うので、まあ、僕が生きている間はこの仕事はなくならないはず。一生この仕事をやっていけたらと思っているので、なくならないでほしいという願望もありますが(笑)」とニヤリ

最先端の映像技術を取り入れた作品だが、ボロボロになりながらアクションシーンの準備をしたというエピソードは、生身の必要性を物語っている。「生身だからこその生感、ダメージ感みたいなものがあって。いつかそういうところまで演算できるようになってくるかもしれないけれど、リアルでやるからこその良さがあると思うし、そのためにいま生身の俳優としてやるべきことをやった、という感じです」と、役者として現場で求められることに応えるというプロフェッショナルな姿勢を見せた。

浦飯幽助役の北村匠海は、本作について「日本のエンタテインメントがさらに広がりますように!」とコメントしていたが、本郷は日本発で世界に届けたいものはあるのだろうか。「世界同時配信はNetflixのような形態だからこそできること。映画だとタイムラグもあるし、国によって映画そのものの根付き方も違っていたりするので、同時というのはなかなか難しいです。いま日本はアニメ、漫画文化がすごく大きなものになっているし、世界からも注目されています。そのなかでも人気、実績のあるタイトルを日本で作って世界に発信するってすごく噛み合っている。『幽☆遊☆白書』はまさにすべてが噛み合ったタイトルだったと思います。言語の壁、文化の違いがあっても、映像のすばらしさで感動させることができる作品なので、世界中の反応が気になります」と期待の様子で語り、日本が世界に向けて発信するコンテンツについては「いまの段階では漫画原作(のコンテンツ)が強い気がします」と話した。

世界に向けた日本発のエンタテインメントを作るために、日本の映像作りの現場に求められることについて尋ねると、「僕個人としては、役者はあくまで作品のパーツでしかないと思っているので、あまりでしゃばりすぎずに、粛々と自分の仕事だけをやっています」と回答。求められることにしっかりと応え、与えられた役をきっちりこなしたいと話した本郷に、様々なこだわりを持って作り上げた飛影の注目ポイントも教えてもらった。「原作では仲間たちよりだいぶ身長が低いのですが、それは再現することができません。なので、アクションシーンでの構え方をものすごい低い体勢にしてみようということになり。普通に剣を構える時よりも2段階くらい低いところで基本姿勢を作ってバトルスタイルを組み立てていきました。そこはひとつのこだわりポイントです。足をパンパンにさせながら挑んだシーンなので、スピード感のある飛影のアクションにぜひ注目してください」。

取材・文/タナカシノブ

Netflixシリーズ「幽☆遊☆白書」飛影役、本郷奏多にインタビュー!/撮影/興梠真帆