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多様性から生まれる豊かな選択肢

フランスは多様性を大切にする国だ。日本とは対照的に人と違うことが尊ばれる国でもあり、パリの街を歩けばさまざまな人種が暮らしていることがわかるし、伝統的な街並みの中に突然前衛的な建物が出現したりする。

【画像】際立つ個性は選ぶ楽しみになる キャプチャー&DS3のディテールやインテリアの写真をもっとみる 全56枚

最近人気のクロスオーバーをはじめとする、新しいジャンルへの挑戦も積極的で、マーケットへの参入は早かったし、いまではルノープジョーシトロエン、DSの4ブランドすべてが、B/Cセグメントに車種を持っている。

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DSオートモビルDS3オペラ・ブルーHDi(左)、ルノーキャプチャーEテック ハイブリッド・レザーパック(右)    神村聖

加えてパワートレインは、今回取り上げるBセグメントではガソリン、ディーゼルハイブリッド、電気と4つの選択肢がある。

日本車のこのクラスには電気自動車はないし、フランス以外の輸入車ではさらに選択肢が少なくなる。マルチパスウェイという言葉は、この国のクルマたちにこそふさわしいと思ってしまうのである。

今回はその中から、輸入車では希少なフルハイブリッドルノーキャプチャーEテック ハイブリッド・レザーパック、ディーゼルエンジンを搭載するDSオートモビルDS3オペラ・ブルーHDiを、横浜市内でドライブした。

DSはプレミアムブランドなので、価格はキャプチャー424万円に対して514万円と差がある。なので今回は比較ではなく、2台の個性を味わうという気持ちで臨んだ。

ボディサイズはキャプチャーが全長4230mm、全幅1795mm、全高1590mmで、DS3は4120/1790/ 1575mm。ホイールベースは前者が2640mm、後者が2560mmとなる。つまりキャプチャーのほうが少しだけ大柄ということになるが、それ以上にスタイリングの差のほうが印象的だ。

クルマという世界観におさまらない仕上げ DS3

キャプチャーは最近のルノーのデザイン言語に沿っていてダイナミック。ボディサイドはウェッジシェイプに加えて張り出したフェンダーと絞り込まれたキャビンなど、躍動感あふれる。でも子供っぽくはなく、上質な雰囲気も伝わってくる。

対照的にDS3は、3ドアだった先代のシャークフィンタイプのセンターピラーを受け継ぎ、キャプチャーとは逆のV字型キャラクターライン、リトラクタブルドアハンドル、ヘッドランプから縦に伸びるデイタイムランプなど、個性的なディテールがちりばめられていて、似たものがないと思えるほど独創的だ。

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DSオートモビルDS3オペラ・ブルーHDi    神村聖

クルマとしての躍動感を前面に押し出しキャプチャーに対して、DS3は宝飾品を思わせる仕立てという感じがした。

インテリアはエクステリア以上に違いが大きい。キャプチャールノーというブランドから想像するよりオーセンティックであるが、シルバーのパネルやレザーシートなどにより、質の高い空間に仕上がっている。でも印象的なのはやはりDS3だ。

サヴォワ・フェールと呼ばれるファッション業界の匠の技をクルマに持ち込んだという仕立ては、菱形のメーターやセンターパネル、腕時計のストラップをイメージしたレザーシート、宝石を並べたようなステッチなど、前衛的だし手作り感も伝わってくる。

冒頭で簡単に触れたパリの景観になぞらえれば、キャプチャーモダンな建築、DS3は伝統的な街並みを感じさせる。同じコンパクトクロスオーバーなのに、ここまで表現のしかたが違うところもまたフランスらしい。

実用性高く、ルノーらしさ色濃い キャプチャー

キャビンはDS3でも、後席に身長170cmの僕が座れるスペースはあるけれど、キャプチャーは後席にスライド機構を備えるためもあり、広さは上。荷室の容積も、その後席をもっとも後ろにスライドした状態でさえ、DS3を大きく上回る。

シートの座り心地は固めのキャプチャーに対し、DS3はフレンチらしいふっかりした掛け心地。どちらもデザインから連想できる着座感だった。

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ルノーキャプチャーEテック ハイブリッド・レザーパック    神村聖

最初に書いたように、パワートレインキャプチャーがフルハイブリッド、DS3がディーゼルという違いがある。

Eテック ハイブリッドシステムは、各メディアで何度も紹介されているので詳細は省くが、1.6L自然吸気ガソリンエンジンに4速、モーターに2速というメカニカルなギアボックスを用いているだけあってダイレクト感が印象的だし、エンジン音の変化で変速の様子が伝わってくるので臨場感がある。

ただしこれといったピークはなく、マニュアルシフトはできないので、積極的にドライブする人には、1.5LディーゼルターボのDS3が向いている。エンジン自体はさほど力強くはなく、音もそれなりに響くものの、車両重量がキャプチャーより90kg軽いし、8速ATが効率的に仕事をしてくれている印象だ。

WLTCモード燃費はキャプチャーが22.8km/L、DS3は21.0km/Lだが、高速道路モードではDS3が逆転する。ハイブリッドらしく市街地や郊外で経済的なキャプチャー高速道路で燃費が伸びるところがディーゼルならではのDS3という違いがある。

乗り心地はキャプチャーがインターナショナル、DS3がフレンチラグジュアリーという違いを感じた。キャプチャーは低速では固めに思えるものの、ガチガチではなく重厚という感触であり、速度を上げていくとルノーらしいフラットライドが心地よい。

ふだん使いでも際立つ個性

DS3は逆に低中速でのふんわりゆったり感に焦点を絞っている感じで、速度を上げると上下の動きが気になるようになるものの、コンパクトクロスオーバーらしからぬゆったりしたふるまいは貴重だ。

この違いから想像できるように、ハンドリングが模範的なのはキャプチャーだ。シーンを問わずに自然に素直に曲がってくれるので気持ちいい。ステアリングに路面からのインフォメーションが伝わるのもルノーならではだ。

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DSオートモビルDS3オペラ・ブルーHDi    神村聖

DS3はディーゼルということもあってフロントが重めで、足がソフトなので、身のこなしはおっとりしている。このサイズのクロスオーバーはキビキビ感を出す車種が多いので、我が道を行く立ち位置は個人的に惹かれる。

両車に共通して感じたのは、全幅1.8m未満、全長4mちょっとというサイズのおかげで、日本の道でも苦もなく取り回しできること。

でもそのときに受ける印象は、似たような車格の日本車とはまるで違う。キャプチャーハイブリッドシステム、DS3の造形や仕立て、どちらも独創性にあふれていて、2台が醸し出す個性もまるで違う。

単に実用的なクルマで終わっていないところがフランスらしいし、お互いが他と違うことをアピールしている点も、多様性を尊重する国ならではだと思った。

試乗車のスペック

ルノー・キャプチャーEテック ハイブリッド・レザーパック

価格:424万円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:4230×1795×1590mm
燃料消費率(WTLC):22.8km/L
駆動方式:前輪駆動
車両重量:1420kg
パワートレイン:直列4気筒DOHC 16バルブ 1597cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:94ps/5600rpm
最大トルク:15.1kg-m/3600rpm
最高出力(メインモーター):49ps/1677-6000rpm
最大トルク(メインモーター):20.9kg-m/200-1677rpm
最高出力(サブモーター):20ps/2865-10000rpm
最大トルク(サブモーター):5.1kg-m/200-2865rpm
ギアボックス:電子制御ドッグクラッチマルチモードオートマティック
タイヤサイズ215/55R18(フロント)215/55R18(リア)

DSオートモビルDS3オペラ・ブルーHDi

価格:514万円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:4120×1790×1575mm
燃料消費率(WLTC):21.0km/L
駆動方式:前輪駆動
車両重量:1330kg
パワートレイン:直列4気筒DOHC 1498cc+ターボ
使用燃料:軽油
最高出力:130ps/3750rpm
最大トルク:30.59kg-m/1750rpm
ギアボックス:8速オートマティック
タイヤサイズ215/55R18(フロント)215/55R18(リア)

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ルノーキャプチャーEテック ハイブリッド・レザーパック    神村聖

お国柄が息づく2台に試乗 ルノー・キャプチャーEテック、DSオートモビルDS3ブルーHDi コンパクトでもわが道を行く