親やきょうだいが亡くなって相続が発生したとき、はじめて亡くなった親やきょうだいが「第三者の借金の連帯保証人だった」という事実が判明することがあります。そんな相続トラブルを防ぐためにも、どうすればいいのでしょうか。解説していきます。

連帯保証人としての地位も相続の対象

相続では被相続人の遺産を相続人が引き継ぎます。このとき、預貯金や不動産などプラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産も引き継がなければなりません。

連帯保証人としての地位もマイナスの財産と同様に相続人が引き継ぎます。相続人は債権者から請求されれば借金の返済に応じなければなりません。知らなかったからといって返済義務を免れることはできません。

返済義務は法定相続分に応じて負担

相続人が複数いる場合、返済義務は法定相続分に応じて負担することになります。たとえば、亡くなった父が連帯保証人になっていて相続人が母と子供2人である場合は、債権者から請求されれば母は1/2、子供はそれぞれ1/4ずつ負担することになります。

特定の相続人だけが負担するように相続人どうしで取り決めることもできますが、あくまでも相続人どうしの合意であって法的な効力はありません。

法的には相続人全員が返済義務を引き継いでいることに変わりはなく、債権者は相続人全員に対して法定相続分に応じた部分を請求することができます。

相続税の計算では債務控除できない

相続税が課税される遺産の額は、プラスの財産(非課税財産を除く)からマイナスの財産を差し引いて計算します。ただし、連帯保証している債務は課税対象から差し引くことができません。

これは、借金は本来の債務者が返済すべきものであり、連帯保証人が肩代わりした場合は債務者に返してもらうべきという考えによるものです。債務者に返してもらえる見込みがない場合に、はじめて相続税の課税対象から差し引くことができるようになります。

借金の返済義務を免れるには相続放棄

連帯保証人の地位、つまり借金の返済義務を相続しないようにするには、相続放棄をします。ただし相続放棄をすると、連帯保証などマイナスの財産を相続しなくてよくなる一方、預貯金などプラスの財産を相続することもできなくなります。

一度相続放棄をすると、後で撤回することはできません。相続放棄をするかどうかは、被相続人に遺産がどれぐらいあって借金や連帯保証している債務がどれぐらいあるかを十分に見極めて判断しなければなりません(プラスの遺産の範囲内でマイナスの遺産を相続する「限定承認」という方法もありますが、手続きが複雑で実際にはあまり行われないため説明は省略します)。

相続放棄は、通常、被相続人の死亡から3ヵ月以内に家庭裁判所に申し立てをする必要があります。

相続放棄で他の親族に連帯保証人の地位が移ることも

相続放棄は1人でもできますが、相続放棄をすると他の親族に影響が及ぶことを考慮しなければなりません。

[図表1]の例では、はじめに相続人であった配偶者と長女が相続放棄をすることで、被相続人の兄と姉が相続人になります。

被相続人が連帯保証人になっていれば兄と姉が連帯保証人の地位を引き継ぐことになるため、相続放棄をするときは兄と姉に事情を知らせておく必要があります。

後から連帯保証を知った場合の対処法

相続人が何も知らずに相続手続きをして、その後で債権者が現れてはじめて被相続人が連帯保証人になっていたことを知るケースがあります。

被相続人が連帯保証人になっていたことを家族に隠していたり、相続人が遺産を調べても連帯保証人になっていることがわからなかったりなど事情はさまざまです。

相続人が連帯保証の存在を知った時点ですでに相続放棄の期限を過ぎている場合もありますが、期限を過ぎたからといって、相続放棄が一切認められないわけではありません。

被相続人が借金の連帯保証人になっていたことを知らなかったなど特別な事情があれば、事情を家庭裁判所に説明することで相続放棄が認められる可能性があります。

このときは、連帯保証人の地位を引き継いだことを知ってから3ヵ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があるため、速やかに手続きを始めましょう。手続きは弁護士または司法書士に依頼することをおすすめします。

相続で知らないうちに連帯保証人になっていた場合は専門家に相談を

被相続人が第三者の借金の連帯保証人になっていた場合は、相続人が返済義務を引き継ぎます。相続人が返済義務を免れるためには、相続放棄をしなければなりません。

相続放棄は被相続人の死亡から3ヵ月以内に行うことが原則ですが、被相続人が連帯保証人になっていたことを知らなかった場合もあります。そのような事情がある場合は、3ヵ月の期限を過ぎても相続放棄ができる可能性があります。

期限後に相続放棄をする場合は、被相続人が連帯保証人であったことを知らなかったことなどを証明する必要があります。

手続きが難しくなるため弁護士または司法書士に依頼することをおすすめします。

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