自賠責保険に電動キックボードなどの「特定小型原付」車種区分を新たに設定することが決まりました。ただ、それを決定した審議会で具体的な算定基準が示されることはありませんでした。

「運動エネルギーの小ささ」が決め手 自賠責に「特定原付」新設

金融庁が主催する「自賠審」(自動車損害賠償責任保険審議会)が2024年1月15日に開催され、自賠責保険に電動キックボードなどの「特定小型原付」車種区分を新たに設定することとなりました。ただ、15日の自賠審に出席した委員から具体額の算式について示されることはありませんでした。

自賠審(会長=藤田友敬 東京大学大学院教授)は毎年の自賠責保険の保険料などを審議する場です。2024年度の大きなテーマは、1973年来50年ぶりとなる保険料率の新たな車種区分「特定小型原付」の新設です。

電動キックボードなどの特定小型原付は改正道路交通法の施行により2023年7月から新たな車種区分として、自転車と原付の中間的な車種として位置付けられました。

金融庁保険課は自賠審の事務局として、特定小型原付の車種区分の新設について、次のように説明しました。

道路交通法の改正でリスク特性の異なるモビリティとして定義された。他の車両と区別がつくようになったので、新たな車種区分として細分化すべきと考える」

自賠審の特別委員に名を連ねる「損害保険料率算出機構」は、現状では原付バイクと同じ特定小型原付について区分を新設するポイントとして、「事故率の差」「保険金単価」の視点があることを説明。

ただ、特定小型原付の保有台数が明らかでないことや、確立した事故統計が存在しないことから、特定小型原付の事故率は「原付と同値」として算出され、運動エネルギー(車重×速度)と保険成績の関係(保険金単価)に絞って検討すると話しました。

電動キックボードのような特定小型原付は車重が軽く、スピードも遅い。運動エネルギーの小さい車種ほど、事故種別合計の保険金単価は低額になることがわかっている。特定小型原付の死亡や後遺障害は事故そのものが少ないため『原付』と同じとするが、傷害については原付との較差を算出し、新たな保険料率の設定が可能」(損害保険料率算出機構)。

同機構は、これをグラフで示しましたが、その計算式は説明資料になかったため、出席した委員からは、原付と特定小型原付の較差を得るための算式について質問が出ました。

また、特定小型原付の利用率増加で、道路交通法の違反者が増えていることや、電動キックボードの利用で先行する諸外国で規制の見直しが始まっていることで、将来の自賠責制度への影響を懸念する意見も出されましたが、区分新設の反対意見はありませんでした。

これを受けて審議会は損保算出機構に、次回の開催日までに具体額を示すように指示。開催日を1月19日としました。

また15日の自賠審では、既存の車両区分における保険料の基本となる保険料率は据え置き。2023年度と同じ水準とすることを決めました。

電動キックボードなど特定小型原付の自賠責保険料が下がる見込み。写真はイメージ(中島みなみ撮影)。