ブラックユーモアたっぷりの舞台「笑わせんな」が2024年2月8日(木)~18日(日)、下北沢「本多劇場」にて上演される。田舎ヤンキー風だけど、意外とピュアな最年少のメンバーの田中みゆを演じる佐藤日向さんに出演にあたっての意気込みを聞いた。

【写真】ブラックユーモアたっぷりの舞台「笑わせんな」に出演する佐藤日向さんに意気込みを聞いた

■「“くすぐる”“くすぐられる”という2パターンの人がいるっていうところにフォーカスを当てた舞台」

――まずは舞台「笑わせんな」に出演が決まったときの気持ちを聞かせてください。

佐藤日向】田中みゆというキャラクターを演じると聞いたときに、自分と共通点もあって、演じてるビジョンみたいなのが見えるなって思えた役だったので、久しぶりにストレートプレイをやらせていただけるし、しかも本多劇場で演じさせてもらえるというのは、すごく楽しみだなという気持ちが大きかったかなと思います。

佐藤日向】お声がけいただいたきっかけとしては、別の舞台を見てくださった方が私が演じてるときの声とカーテンコールの声が全然違うなと思ったことがきっかけだと聞きました。

―― 「笑わせんな」はどんな舞台なのでしょうか?

佐藤日向】“くすぐる”“くすぐられる”というくすぐられたい人とくすぐりたい人っていう2パターンの人がいるというところにフォーカスを当てて、話が進んでいく舞台です。

佐藤日向】妙にリアルというか、わりとすんなりとそういう癖じゃないですけど、そうされたり、そうしたい人っていうのがいるんじゃないかと。とてもリアルで人間くさいなと思いながら、私は台本を読み進めました。

佐藤日向】承認欲求じゃないですが目立ちたいという気持ちの裏返しのような感じが私はしていて、そこから自分っていう存在を少しは確立したいって思ってる人もいるとは思うんですけど、どこかでは絶対確立させたいって思ってるんじゃないかなと。何かそういう嫌な部分とかが全部が詰まっています。

佐藤日向】誰かには必ず共感できるし、自分が嫌いだなって思う人もいるみたいな。本当に日常を切り取っているような、そんな舞台だと思います。

――今の話を聞きますと、みなさん気になると思うんですけど、佐藤さんはくすぐるほうですか、それともくすぐられるほうですか?

佐藤日向】どちらかというのは初めて聞かれました(笑)。人に触れるのはあまり得意ではないのでくすぐるのはちょっとという感じかもしれません。強いて言えばくすぐられるほうがいいかもしれません(笑)。

――くすぐるのは自発的で、くすぐられるのは受身ということになりますよね。自分に選択の自由がないっていうことになります。

佐藤日向はい。私は自分から行動するのは基本苦手なので、くすぐられるほうが楽というか基本受身です。

――くすぐるというキーワードをひとつ取っても、自分が受身の人なのか、そうじゃないのかっていうのがわかりますね。

佐藤日向】確かにそうですね。

――佐藤さんが演じる田中みゆはどんな役柄なのでしょうか。

佐藤日向】今どきの子だなと感じます。強気に見えるけど、たぶん強気でいないと自分のボロが出ちゃうから、本当は強気でいたいわけじゃないんじゃないかなと思ってるんですけど、でもそういう子ってたぶん今どき多いんじゃないかなって。

佐藤日向】だから対人関係ではコミュ力高いよねって見えるけど、コミュ力が高いわけじゃなくて、そうしないと人と話せないからグイグイ行くしかないみたいなタイプっていうのは、私もすごく共感する部分はあります。

佐藤日向】みゆちゃんというキャラクター自体は、令和という感じがするというか、SNSを駆使してそうというか、でもそれって仮の自分で本当の自分じゃないと自分でもわかってるからこそすごく悩んでいて、そこからの自分を発散させる場所が、くすぐりくすぐられっていうこのサークルに繋がってるのかなって。ある意味、普通っぽい子なのかなと思います。

――今回の役柄で意識して演じようと思っていることはありますか?

佐藤日向】舞台上に立つときに演じる役が高校生が多くて、だからわりと実年齢に近いという意味では今回の役柄は、初めてかもしれません。

佐藤日向】だからこそ、顔が童顔なので実年齢より若い役を演じることが多く、勝手に若見えする癖がついていたらどうしようと思っています。声だけだったら低くしたらなんとか大人っぽく見えるかなとは思うんですけど、演じ方が変に若々しかったら困るので、そういう部分では今回もしかしたら苦労してしまうのかなと焦ってるところではありますね。

――役柄に共感する部分はありますか?

佐藤日向】私自身は共通してる部分があると逆に演じにくくて、自分を自己分析するのがあまり得意ではないので、自分だったらこう思うのにって考えると私になってしまいますので、自分じゃない人のほうがすごく演じやすいなと体感的に思っています。

――よく自分と全く違う性格だと演じて楽しい、役者冥利に尽きる、普段こんなふうに考えないし、役柄じゃないとやることもないからというのはよく聞きます。

佐藤日向】私自身はSNSもやってますし承認欲求が全くないわけではないですが、そんなに強いほうではないです。演じるみゆちゃんのキャラクターの設定の中で「強烈な承認欲求を内に秘めている」って書いてあるので、それがお芝居の中で見え隠れするってどういうことなんだろうとか考えたりもして、そこは自分とけっこう違う部分にはなるので、難しいなとは思います。

佐藤日向】あえてこの子は承認欲求がありそうって見えるお芝居をすることってあまりないので、注目を本当は浴びたそうだなとか、そういったことが見え隠れするお芝居ってどういう感じなんだろうと今から考えるのがすごく楽しみですね。

■「現代の社会の中で寄り添える部分がある作品になっていくんじゃないかなと」

――今は台本を読んだ段階なんですね。衣装合わせはされたんですか?

佐藤日向】衣装合わせも顔合わせもこれからになります。ビジュアルやティザーも、作品の印象をあまり与えない撮影の仕方でした。チューブトップを着てお洋服の印象を与えなかったりとか、出演者全員がじわじわ笑っていくっていうのが、いろいろな場面が繋がっていくようなティザー映像で、だからこそこれってどういう舞台なんだろうって思うような期待感に繋がるような内容になっています。

佐藤日向】お客さんにあまり情報を与えず、かつ興味が惹かれるというか、タイトルは「笑わせんな」となっていながらみんな笑ってるけど、これはどういう笑いなんだろうとか思わせてくれるような内容です。どんなキャラクターなのかもあまり情報を与えていない状態なので、お客さんも想像が膨らむんじゃないかなと思います。

――僕も公式サイトを見てそう感じたひとりです。佐藤さんが思うこの舞台の最大の見どころを教えてもらえますか?

佐藤日向】私が台本を読んだ段階ではどこをブラックコメディとして表現していくんだろうっていうのは、オクイ(シュージ)さんの演出だったりとか、演者のみなさまの演技プランっていうのが絡み合って見えてくる部分なのかなと思うので、見どころの一番はそこだなと思います。

佐藤日向】美容室に見えて実は地下?みたいな場所が2個あり、メインとしては美容室が私たちが演じる場所になるとは思うんですけど、そこの二面性と、そのくすぐぐりとくすぐられるっていう部分の二面性みたいなところと、普段の自分と、普段見せたくない自分の二面性という部分にフォーカスを当てていくのではないかなと私は思っています。

佐藤日向】きっと現代を生きるみなさんの中にも、この人には見せてる自分とこの人には見せない自分みたいなのがあるっていう部分では、現代の社会の中で寄り添える部分がある作品になっていくんじゃないかなと。

――観てる人がきっとみんな自分と重ね合わせて、自分はどっちなんだろうなって思う要素があるんでしょうね。話は変わりますが、今回は本多劇場にて上演、下北沢といえば、劇場も多くすごくエネルギーに満ちあふれた街ですよね。今回この作品も2024年度下北沢演劇祭参加作品になってますが、下北沢にはよく行かれますか?

佐藤日向】実は下北沢にはあまり行かないんです。下北沢に稽古場があって行くことはありましたけど、これまでは馴染みがなかったかもしれないです。TikTokを見てると下北沢喫茶店の朝メニューとかおしゃれな食べ物がすごく流れてくるんです。だから公演期間中に入ったら開拓したいなと思っていてすごく楽しみです。

――いつも役者のみなさんに聞いているんですけど、大量の台詞をどうやって覚えていますか?

佐藤日向】私は台本が1回頭に入ってからじゃないと、どうやって読もうという段階にいけないので、大枠は立てるんですけど、すごく見て、ここにこの言葉があるんだなっていうのを覚えてから、正面を向いてつらつら言っています。

佐藤日向】言えなかったところを○で囲っていって接続詞は□とかにして、頭ん中でこの辺に○があったってことはこの接続詞が苦手なんだなと思い出すようにして、それが体に馴染んできてからやっと台詞を言うという段階にしています。家で写真みたいに覚えています。

佐藤日向】どんなときでも台詞が出るようにしてから稽古に行かないと、掛け合いになったときに出てこなくて詰まっちゃうことが多いので、一旦できるような状態にしてからにすることが多いですね。

佐藤日向】台本を外すときが怖いですが、外したときの苦手な言葉とかに、“が”だったのか、“ので”だったのかとか、何か2文字だったのか1文字だったのかっていうのを、ぱっと思い出すために色で思い出せるようにしてますね。○が1個だったら絶対“が”だとか、2個だったから“ので”とか、そういう覚え方をしてます。自分で言うのもなんですけど変な覚え方です(笑)。

――自分なりの覚え方を見つけるまでにいろいろ試行錯誤されてそうですよね。

佐藤日向】隠して覚えていくというのも試してみたんですけど、1行覚えても、次の1行が飛んじゃったりとかしてあんまり私に合わなかったので、先ほどのやり方で覚えてます。

――最後にメッセージをお願いします。

佐藤日向】久しぶりに出演させていただくストレートプレイが「笑わせんな」ということで、本多劇場にも初めて立たせていただくんですけれども、笑っていいのかなと思う瞬間があったりとか、自分の感性に問いかけてくるような作品になっていると思うので、自分にとってそれが笑えるのか笑えないのかというのは生でぜひ体感してほしいなと思います。ぜひ劇場に笑いに来てほしいです。

――ありがとうございました。

佐藤日向】ありがとうございました。

撮影・取材・文=野木原晃一

本多劇場上演の舞台「笑わせんな」に出演する佐藤日向さん