老友新聞2024年1月号に掲載された俳句入選作品をご紹介いたします。(編集部)

黙々と注連なう人や藁香る

岸 慶子

近頃は注連縄作りも機械化されているだろうけれど、この人が作るのは手作りの注連飾りである。年神を迎えるという気持をこめてひたすら手を動かしている。静謐な空気が漂うなかの藁の香りは心安らぐ作業かもしれない。

指先にまだ余力あり栗を剥く

近藤 貞子

栗の皮剥きは指の力が頼りで、高齢者には結構つらい仕事である。作者は高齢による体力の衰えを自覚しつつ、まだ元気であることを誇れる人、栗ご飯もしっかり食べただろう。

立冬や陰長くして人も木も

岡本 政子

冬は太陽の位置が低いので樹木や人など物の影が長くなる。作品の中七音「して」は木や人が意識を持って影を長くしているようで、力強い濃い影をイメージさせる。

「黙々と注連なう人や藁香る」2024年1月入選作品|老友俳壇