TBSの報道番組「news23」でインタビューを受けた内部告発者の身元がバレて退職に追い込まれたとされる問題で、放送倫理・番組向上機構BPO)の放送倫理検証委員会は1月11日、放送倫理違反を認める意見書を公表した。

しかし、BPOは放送による身バレを認定したわけでないことから、弁護士ドットコムニュースが改めてTBSに問い合わせたところ、「お答えは控えさせていただきます」という回答しか得られなかった。(ニュース編集部・塚田賢慎)

●あやふやな…TBSは結局のところ「放送による身バレ」を認めたのか?

昨年1月12日放送の番組では、JA職員が過大なノルマを課されているとして、3人が取材に内部告発した。匿名で顔にぼかしなどを入れていたが、BPOには「誰かすぐ特定できた」との声が寄せられたという。

また、身元がばれたため退職に追い込まれたという報道が一部週刊誌でされていた。

放送について同委員会は1月11日、「内部告発者の周辺でその身元特定が強く疑われる状況を招き、取材源の秘匿を貫くことができなかった」として放送倫理違反を認めた。

TBSは放送倫理違反を「真摯に受け止めます」などとコメント。ただ、意見書は放送を理由とする身バレを認定したわけではなく、身バレが発生するおそれが多い中で放送されたことを問題としている。

委員会では放送の内容や経緯を検証するため、放送に関わった「調査報道ユニット」の部長やメンバーら16人にヒアリングを実施。意見書では、TBSがまとめた「内部調査報告書」(昨年6月21日付)の内容も紹介されている。

TBSの内部調査報告書では「情報提供者の身元が特定される危機を招いた本件放送は、TBSの報道機関としての信頼を揺るがしたものといえる」と結論づけ、再発防止策を実行しているという。

ただ、「危機を招いた」という言葉の意味があいまいだ。TBSは、放送による身バレが起きたと認めて、そのうえで再発防止に努めていくのか。それとも放送による身バレは生じておらず、あくまで「危機」のままで済んだと判断しているのだろうか。

弁護士ドットコムニュースがあらためて見解をたずねたところ、TBSは1月16日、「取材させていただいた方の身元の秘匿に関わることですので、お答えは控えさせていただきます」と回答を避けた。

放送倫理違反の「news23」、結局「身バレ」は発生したのか? TBSの見解を改めて問う