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 オクラホマ州判事が、無実の罪で48年間服役していた男性の無罪を宣言した。これは冤罪による米国史上最長の不当判決刑だった。

 現在70歳となったグリン・シモンズ氏は、当該事件の重要証拠が弁護人に引き渡されていなかったとして、2023年7月に釈放された。

 郡地方検事は新たな裁判を正当化するに足る証拠はなかったと述べ、エイミー・パルンボ判事が、シモンズ氏の無罪を宣言した。

【画像】 48年服役後、冤罪が晴れ釈放

 無実の罪で48年間刑務所に服役していたグリン・シモンズ氏が、晴れて無罪放免となった。判決文にはこうある。

当法廷はシモンズ氏が有罪判決を受け、刑を宣告され、服役するに至った犯罪は、当人による犯行ではないことを明白かつ説得力のある証拠によって確認された

 シモンズ氏は、この決定を受けて記者団に語った。

これは回復力と粘り強さの教訓です。こんなことはありえないなどと、誰にも言わせません。現実に起こる得ることなのですから
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22歳から70歳になるまで一貫して無罪を主張

 シモンズ氏は、1974年オクラホマシティ郊外の酒屋強盗におけるキャロリン・スー・ロジャース殺害の罪で、48年1ヵ月と18日間服役することになった。

 1975年に共同被告であるドン・ロバーツと共に有罪・死刑判決を宣告されたとき、シモンズ氏は22歳だった。

 その後、最高裁が死刑判決を考え直し、終身刑に減刑された。

 シモンズ氏は、犯行当時は故郷のルイジアナ州にいたとして、一貫して無罪を主張していた。

 裁判所が無罪を宣言したとき、グレイのフードつきセーターを着て、フェルト帽を被ったシモンズ氏は、思わず笑みをもらし、「長い間この瞬間を待っていた」と穏やかに語ったという。

 「この釈放に彼自身も驚いています」とシモンズ氏の弁護士は言う。

 「起こってしまった冤罪は、もう取り返しはつきませんが、説明責任はあるでしょう」シモンズ氏は言った。

 シモンズ氏の弁護士、ジョゼフ・ノーウッド氏は心情を語った。

 「当然、歓喜しています。シモンズ氏が自由を勝ち取り、名前を取り戻し、汚名を晴らしたという高揚感が入り混じった気持ちでした」

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 「自分があずかり知らぬ犯罪のために、50年近くも刑務所に拘束されるなんて、人間の精神にとって最悪の事態のひとつに違いありません」

 しかし、釈放されたとき、シモンズ氏はステージ4の肝臓がんと診断されていたという。だが現在、化学療法が功を奏して、快方に向かっているという。

 肝臓ガンと闘うシモンズ氏の生活費と治療費を支援するための資金がおよそ20万ドル(2900万円)集まっているということだ。

US inmate freed after 48 years in prison for murder he didn't commit | BBC News

被害者少女の証言に矛盾、証拠も不十分

 地方裁判所は、証人がほかの容疑者を特定したことを含め、検察が弁護人にすべての証拠を引き渡していなかったとして、7月にシモンズ氏に対する有罪判決を取り消した。

 もともと、シモンズ氏と共同被告のロバーツ氏は、後頭部を撃たれた十代の少女の証言によって有罪判決を受けた。

 全米冤罪レジストリによると、この少女は、警察の面通しのときに、ほかにも数人の男たちを指し示したが、後になってその証言の一部に矛盾が生じたという。

 同じく有罪になったロバーツ氏は、2008年に仮釈放された。

 オクラホマ州では、不当な判決により服役した冤罪の当事者には17万5000ドル(約2550万円)の補償金が支払われることになっている。

 だが失われた約半世紀を取り戻すことはできない。シモンズ氏は病と闘っており、あとどれくらい元気でいられるかはわからないが、自由を楽しんでほしいものだ。

追記:(2024/01/16)本文を一部訂正して再送します。

References:Glynn Simmons: US judge exonerates inmate after 48 years in prison - BBC News / Wrongfully-Convicted US Man Cleared Of Murder After More Than 48 Years / written by konohazuku / edited by / parumo

 
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冤罪。48年間刑務所に入れられていた男性がようやく無罪放免