昔ながらの「御堂筋側道」の風景も過去のものになっていきます。

側道を歩行者空間へ

大阪のキタとミナミをむすぶメインストリートのひとつ「御堂筋」。大阪の都心を象徴するような大通りで、秋にはイチョウ並木が街を黄色く染めます。

御堂筋を象徴するもうひとつの風景が、南行き一方通行4車線道路の両側に、さらに1本ずつ「側道」があること。バスやタクシーの客扱いや、沿線店舗の荷下ろしなどで通過交通の支障とならないように計画されたものです。

時代の変化とともに「街を歩行者が移動し楽しめる御堂筋」とするべく、この側道を廃止して歩行者空間にする事業が進行中です。

2019年策定の「御堂筋将来ビジョン」では、2025年の大阪万博までに側道をすべて歩行者空間化する計画。さらには2037年を目標に、本線をふくめた御堂筋全体を歩行者空間化するとしています。

難波駅周辺から徐々に進められているこの工事。いま現地ではどのような変化が起きているのでしょうか。

現在、長堀通を境にして、南側が側道閉鎖済みで、撤去工事中。北側は、まだ昔のままの風景が残っています。心斎橋駅のある新橋交差点です。

そのうち、完成形になっているのが、道頓堀橋の南側。工事中なのが、橋の北側です。

工事真っ最中の心斎橋道頓堀橋では、側道部分やイチョウ並木周囲にダンプトラックとショベルカーが並び、歩道路盤や排水施設、モニュメントの設置工事が進んでいます。東側は先行して工事スタートしているため、すでに歩道拡幅部や自転車レーンのタイル舗装がほぼ完成していて、イチョウ並木の回りのブロックを敷設する作業になっていました。イチョウ並木にとっては、狭い空間に根を押し込められていたのが、自動車の荷重のかからない環境になって、のびのびと生育できるようになります。

さて、完成済みの道頓堀橋~難波駅を見てみると、自転車レーンや広くなった歩道幅以外に目につくポイントが「ベンチが置かれ、そこかしこで訪問者が腰を下ろしている」ことでした。

旅行者にとってとにかく気になるのが「ちょっと疲れて休みたい時に座る場所があるか」という点。しかしベンチ設置は気軽にできません。現行の道路法では、歩行者の安全な通行のために作っている歩道に物を置くことは言語道断で、「道路占用」の手続きで許可される必要がありました。これを規制緩和するのが、2020年に誕生した「歩行者利便増進道路(ほこみち)制度」です。指定された道路区域では、ベンチやちょっとした飲食施設、ステージなどが設置しやすくなります。

側道だった空間を歩道へ広く転用することで、「ほこみち」指定が可能になり、ベンチが充実して街歩きしやすくなった御堂筋。逆に今まで、歩行者自転車のスペースが狭すぎたともいえます。道路を車だけのものではなく、歩行者のニーズに沿ったものにする「ほこみち」、最初の指定区域になった御堂筋は、日本の街の新しい姿を提示していくことになります。

(乗りものニュース編集部撮影)。