Blackmagic Designによると、受賞歴を誇る短編ドキュメンタリー「風暴之下」がBlackmagic URSA Mini Pro 12KおよびBlackmagic Pocket Cinema Camera 4Kデジタルフィルムカメラで撮影されたという。同作の監督およびプロデューサーは、中国の学生映像作家であり、ストームチェイサーである蘇鏑坷氏が務めた。編集、カラーグレーディング、オーディオポストプロダクションを含むポストプロダクションは、DaVinci Resolve Studioで行われた。

同作は自然を扱った短編ドキュメンタリーで、台風や激しい雷雨などの対流現象をストームチェイサーの視点から描いている。同作はローマ短編映画祭で最優秀短編ドキュメンタリー賞を受賞し、多くの有名な映画祭の最終候補にも選ばれた。

蘇氏は現在、中国伝媒大学の大学院生であり、中国で最も人気のある動画共有・配信プラットフォームのひとつであるbilibiliにおいて、コンテンツクリエイターとして広く知られている。同氏のbilibiliチャンネル「風羽醬-SDK」は、気象学の知識を広め、ストームチェイサーとしての体験を共有することで、これまでに30万人のファンを獲得し、再生回数は3000万回に及んでいる。

蘇氏は子供の頃から対流現象に興味を持ち始め、その情熱がこの気象現象の謎を探求することに繋がったという。2019年に中国伝媒大学に入学し、写真と映像撮影を学び始めた。

複雑な気象パターンを解明し、ビデオとデータを直接得るために、蘇氏はパートナーと共に、中国に台風が上陸するたびに長距離追跡し、台風の目を何度も通過して撮影・測定している。両氏は、地上から映像を撮影し、データを収集しており、気象当局の情報収集に貢献している。これらのデータは、将来的な科学研究や台風が起きる理由を解析する上で重要な参考資料となり得る。

蘇氏は、人々がほとんど目にすることのない嵐に関するドキュメンタリーを2018年から準備してきた。

蘇氏は、次のようにコメントしている。

蘇氏:本作の撮影にPocket Cinema Camera 4Kを選んだ理由は、コンパクトで持ち運びやすいデザインであり、また画質に優れているからです。アクセサリをあまり使用せずにハンドヘルドで撮影できるので最適でした。

2022年、蘇氏はURSA Mini Pro 12Kを追加した。

蘇氏:新しいカメラでしたが、Pocket Cinema Camera 4Kと同様のオペレーティングシステムなので、すぐに慣れて、使いこなせるようになりました。

同作にURSA Mini Pro 12Kを使用したことに関して、蘇氏は解像度にはあまりこだわらなかったが、気象現象の撮影に関しては、もう二度と起こらない可能性があるため、そういった稀な気象現象を可能な限り最高の品質で記録したいと考えていたとコメントしている。

蘇氏:URSA Mini Pro 12Kをあまり知らない人は、ストレージが心配になるかもしれません。しかし、Blackmagic RAWコーデックは、効率的で視覚的ロスレスであり、様々なオプションがあるため、12Kのフッテージは他のコーデックで撮影した4Kのフッテージより小さいくらいでした。おかげで、心配することなく12K 8:1で撮影できました。

通常のシーンでは、8K 8:1か12:1を使用しました。

最も気に入っているショットが12Kで撮影できたことを嬉しく思っています。私のモニターは4Kですが、テレビやモニターが将来どのような解像度に対応できると誰が予測できますか?12K解像度は視聴面でも優れていますが、気象学者に対しては貴重な情報となります。

4年間の撮影を振り返り、このプロジェクトにおけるチャレンジと忘れられない瞬間について、蘇氏は次のようにコメントしている。

蘇氏:嵐の動きは予測できないため、常に高い柔軟性と機動性が必要です。常にルートを調整し、時間と戦っていたため、交差点で頻繁に予定していなかった方向に転換する必要がありました。複数の車両にスタッフが分散していたら、大変だったでしょう。

そのため、ほとんどの場合、車は最大3人までにとどめ、時には同氏が運転手と撮影監督の両方の役割を担った。

同作の撮影では緊急事態が多く発生した。

蘇氏:まれな気象現象が生じた際に、すぐに撮影できるように常にスタンバイ状態である必要がありました。例えば、急な雲の変化が見られた場合や、突然の強風や雹に遭遇した場合などです。そういった状況では、カメラを手に取ってすぐに撮影を始めなければなりません。

Pocket Cinema Camera 4KとURSA Mini Pro 12Kは非常に迅速に起動するので、自己テストやシステムのロードを待つ必要はなく、即座に撮影を開始できました。

撮影スタッフの中で、プロ仕様のカメラを使用したことがあるのは蘇氏だけだった。気象データ分析とルート計画を担当するスタッフは、撮影スキルがほとんどなかったため、シンプルな操作性が重要だった。

蘇氏:運転中に、撮影したい気象現象を見つけても、すぐに車を止められないことが何度もありました。そういった場合には、他のスタッフに撮影してもらいました。

「そこに電源スイッチがあるのが分かる?スイッチをオンにしたら、タッチスクリーンを使用して、3200という数字が表示されるメニューがあるから押して、400に変更して。レンズの周りにあるリングを回転させて、画面の明るさを調整してくれる?」などと説明しました。

3年間一緒に撮影したので、今ではスタッフはPocket Cinema Camera 4Kを操作し、三脚に正しく取り付けられるようになりました。本作の素晴らしいショットの多くが撮影に関する事前知識がない人たちが撮ったものなので、誰でも使いこなせるカメラであることを証明していると思います。

同作では、編集、カラーグレーディング、オーディオミキシングを含むポストプロダクションすべてにおいて、DaVinci Resolve Studioを用いて、ACESカラーマネージメントが使用された。

蘇氏:使用するのがACESでも、DaVinci Wide Gamutでも、DaVinci Resolveは非常に先進的なプロジェクト管理方法だと思います。将来的により優れたディスプレイが登場した際に、広いカラースペースで生成されたこのようなコンテンツは、より広い色域のディスプレイに簡単に適応でき、最大限のダイナミックレンジと複雑なディテールを保持できます。

全フッテージはBlackmagic RAWで撮影された。DaVinci Resolve Studioで、フッテージはバランス調整され、希望するルックになるように調整が施された。

蘇氏:イメージのルックに関しては、肉眼で見たものを基に、感情を付け加えるために、鮮やかな彩度になるようにしましたが、実際の見た目を維持するように調整しすぎないようにすることも重要でした。コントラストを高め、空にディテールを戻すためにResolveFXの「コントラストポップ」を頻繁に使用しました。

同作の音響の多くは、Pocket Cinema Camera 4Kの内蔵マイクで録音された。蘇氏はDaVinci Resolve Studioを用いて、HDR版とDolby Atmos版も作成した。これは、同氏のbilibiliチャンネルで視聴できる。

蘇氏はまた、自身のチャンネルのもう一つの人気シリーズである「台風風的故事」についても触れた。同シリーズは、主に衛星の視点から台風の発達を視聴者に紹介するもので、これもDaVinci Resolve Studioを用いて、4KとDolby Visionで制作された。

蘇氏:Blackmagicのカメラを頼りにしています。ストームチェイサーを何年もやっていますが、Pocket Cinema Camera 4Kは私と共に中国全土を旅しました。一緒に、台風の目をくぐり抜け、卵ほどの雹に見舞われ、激しい雨や風を経験しました。Pocket Cinema Camera 4Kは、毎回仕事をそつなくこなし、胸が高鳴るような瞬間を捉えています。

現在、蘇氏はドキュメンタリー「追風者的故事」の制作準備にも忙しいという。この作品が、中国のストームチェイサーの「Tornado Alley」となることを望んでいる。

蘇氏:bilibiliでライブ配信する際は、ATEM Mini Proも使用しています。これも信頼できるツールのひとつです。

Blackmagic Designは、毎年、新製品を発表し、多くの進歩を遂げているので嬉しいかぎりです。ストームチェイサーの間では「Never Stop Chasing」という言葉を良く使うのですが、創造への情熱を決して捨てず、新しい技術も積極的に受け入れていかなければなりません。

Blackmagic Design導入事例:短編ドキュメンタリー「風暴之下」の場合