1年間で33億円相当のノートパソコンやiPadなどが大量に消失し、二度と返ってこないとなると、まるでブラックホールに飲み込まれたようだ。
今月8日、アメリカのシカゴ公立学校（正式には シカゴ市第299学区 /Chicago Public Schools ：略称 CPS）の年次報告で明らかとなった、未返却のデバイスによる途方もない損失額が衝撃をもたらしている。
CPSでは、2021年から翌年までの1年間に、8万台近くものハイテク機器を紛失、または盗まれため、その損失総額がなんと2300万ドル（33億円）をはるかに上回ることになったという。
【画像】 公立学校が1年間で大量の機器を失い約33億円の損失額を報告
年明け早々、アメリカで教育機関による巨額の損失報告が物議をかもしている。
今月8日、米イリノイ州のシカゴ公立学校 (CPS) が発表した2023年度 年次報告書によると、CPSでは2021年から2022年度にかけ、77,505台のハイテク機器が紛失または盗難され、その損失額は2300万ドル（約33億円）を上回るほどだった。
なお失った機器は主にノートパソコンやiPadで、購入時の価格をそのまま損失額に計上したとみられる。
新型コロナの影響にしても巨額すぎるとの指摘
この数字は、新型コロナのパンデミック以降初めて判明したもの。つまり時期的には、ロックダウン中の断続的な休校や、オンライン授業へのシフトが行われていた頃だ。
だがこの報告に携わった監察官のウィル・フレッチャー氏は「たとえ新型コロナの影響を加味しても、容認しがたい巨額。コロナのせいにはできない」と述べ、CPSが貸出機器の適切な捜索や回収への努力も怠っていることを指摘。
300万ドル（約4億4000万円）もかけて用意した追跡システムがあるにもかかわらず、それをろくに使うこともないCPSを非難し、機器の監視プロセスを「真剣に見直す」べき、とまで言い切ってるのだ。
巨額の損失報告と同時期に182億円の支出を計上
CPSが失ったとする物品には前述の機器のほかに、モバイル Wi-Fi やプリンター、書画カメラ、電子黒板などのハイテク機器が含まれている。
アメリカで4番目に広い学区であるCPSは、幼稚園から高校までの634校（報告当時は638校）もの学校を運営中だが、問題の報告書にある学校別の機器在庫リストでは、生徒に特別に割り当てた機器すべてに紛失または盗難の印がついてる学校が34学校もあった。
一方でCPSは、同年度に1億2,400万ドル（約182億円）以上もの支出を「テクノロジー資産」として計上していた。その額は、過去 5 年度のうちで最高額だそうだ。
報告書の33億円は現在3億7000万円の可能性
こうした状況についてメディアに問われたCPSは、大規模な学区のため多少のデバイス損失は想定内としながらも、今後は「追跡システムの合理化に取り組む」と述べ、監視プロセスの変更や追跡の強化、学校指導者に責任を負わせるなどの対策を始めたと発表。
だが一方で「生徒の72%以上が経済的に恵まれない家庭の学区では、デバイスの回収時も、家族への配慮が重要になる」とし、貧困家庭のために回収を躊躇してるかのような主張をしている。
またCPSは、報告書についてもいくつかの訂正を付け加えた。
失った機器に関して、ほとんどが新品ではなく一般的な寿命である5年が経過した中古だったとして、現在は250万ドル（約3億7000万円）程度の価値である可能性が高いと言い出した。
さらに紛失または盗難されたと発表した8万台近くもの機器の数も、すでに12,000台以上が回収されたと付け加え、中には5年の寿命を迎えたと判断して破棄したものがけっこうあったと述べているそうだ。
$23M in CPS tech devices lost or stolen, new IG report finds
消えた機器の行方もわからないブラックホール
「私たちは詐欺、浪費、不正行為に目を向けています」というウィル氏は、CPSが生徒からのデバイスの返却を期待してるかどうかもわからないと述べ、「デバイスの行方がまったくわからないという点では、ブラックホールと変わりません」とコメント。
実際、過去CPSでは1年のうちに10台のコンピューターを紛失したはずの教師が、後になって学校に8台あったと言い出すなど、悪質なケースもあった。
学校ごとに監査のやり方も異なり、誰も責任を問われていない点にもうんざりしているウィル氏。
結局、CPSが当初主張した巨額の損失は、新型コロナにかこつけたでっちあげだったのか。ネットでは教育予算を浪費するようなCPSのずさんな管理体制への非難や、教育機関にあるまじき不透明性などを指摘する声が上がっている。
References:nypost / suntimes / cps / nbcchicagoなど /written by D/ edited by parumo
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