ジェレミーアレン・ホワイトが主演を務め、アメリカ・シカゴにある小さなサンドイッチ店を舞台に、料理人たちの人間模様やレストランの成長を描いたドラマシリーズ「一流シェフのファミリーレストラン」。同作が現地時間の1月7日に発表された「第81回ゴールデングローブ賞」で、テレビドラマ部門(ミュージカルコメディ部門)の最優秀作品賞、最優秀男優賞、最優秀女優賞の主要3部門を受賞。さらに、現地時間の1月15日に発表された「第75回エミー賞」では、コメディシリーズ部門にて、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、助演女優賞、助演男優賞、キャスティング賞、映像編集賞、音響編集賞、音響ミキシング賞と計10部門を受賞。世界的な注目を浴びる作品となっている。今回はシーズン1、2で描かれた印象深い名シーンを交えて、作品の魅力を紹介する。(以下、シーズン2までのネタバレを含みます)

【写真】高圧的な態度で店をかき乱すリッチーの“変化”もシーズン2のハイライトだ

■主人公は兄が遺した小さなサンドイッチ店で再スタート

本シリーズはレストランの厨房内で繰り広げられる中毒性の高い会話劇をはじめ、料理人たちが抱えるリアルな悩み、新型コロナウイルス禍に置かれたレストラン業界の実態などが忠実に描かれ、思わず一気見したくなるシリーズ作品だ。原題は「The Bear」だが、日本語に直訳すると「熊」となり、マタギの話かしらと誤解を招くからか(そんなわけない)、日本向けに邦題を大胆に変えている。

物語の始まりは、ニューヨークで一流シェフとして働いていたジェレミー演じる主人公・カーミーが、店の共同オーナーで兄の友人・リッチー(エボン・モス=バクラック)やカーミーの元で働きたくやってきた若手優等生シェフ・シドニー(アイオウ・エディバリー)らと一緒に、亡き兄が遺した借金だらけのサンドイッチ店を再生すべく奮闘するところからだった。

特にシーズン1は、サンドイッチ店がリニューアルする前の出来事を描いており、癖の強い料理人たちが働く“厨房”で物語が動いている。第7話「レビュー」では、全21分のうちの17分ほどを厨房内で立て続けに起きるハプニングの様子をワンカットで撮影。全料理人たちがパニック状態の中、ひたすら料理をし続ける臨場感溢れるシーンが描かれた。映像の迫力もさることながら、キャストたちの迫真の演技に、見ている側も息をのむほど。

また、「第75回エミー賞」で助演女優賞を受賞したアイオウ演じるシドニーとお局シェフのティナ(ライザコロン=ザヤス)が、互いを認め合う第4話「ドッグス」のシーンも印象深い。名門料理学校出身で、若手エリートシェフ・シドニーのことが気に食わないティナは、彼女の指示を聞かず、壁を作る日々だったが、シドニーのフォロー力、そして真面目さに段々と心を許していく様子は、狭い厨房内で起きた一瞬の出来事だったが、とても心温まるワンシーンとして挙げたい。

■ついにリニューアルへと動き出す

借金ばかりかと思いきや、シーズン1のラストで兄が遺した現金がトマト缶の中から発掘される。シーズン2ではその資金を手に、一念発起してサンドイッチ店のリニューアルオープンに向けて準備が始まる。

シーズン1では、全てのエピソードが厨房やレストラン内でほぼ完結した一方で、シーズン2ではレストランを飛び出し、“外の世界”でのシーンも多い。また、カーミーをはじめ各キャラクターの背景なども描かれている。

特にシーズン2では、役に立たない割には嫌味ばかりの横柄な態度を取るリッチーが、劇的に生まれ変わる様子が第7話「フォークス」で描かれる。リッチーはレストランを仕切るプロジェクト・マネジャーにもかかわらず、充分にその役割を果たせないがゆえに、レストランでの立ち位置を失っていた。そんなリッチーはある一流レストランの下で、一週間の実践研修を行うのだ。

これまでの彼はなぜか自信家で、自分に都合が悪いことがあれば、怒鳴ってすべてを解決してきた。そんなリッチーが初めて仕事に対して目的を掲げ、自分に誠意を持ってリスペクトの精神をたたき込んでくれるレストランのスタッフたちの指導の下で、フォーク磨きから学び直し、改心していく姿には胸が打たれる。もちろん「第75回エミー賞」で助演男優賞を受賞した彼の演技にも注目してほしい。

そんな今作は2024年にシーズン3の配信が決定。配信中のシーズン2の最終話では、スタッフの家族や友人をレストランに招待し、無事にリニューアルオープンを迎えるものの、カーミーの彼女・クレア(モリーゴードン)は彼の下を去ってしまう。ひと筋縄ではいかないカーミーと母親の関係性、そしてシドニーを筆頭にその他のキャストたちの新たな物語がどう展開されるのか、新シーズンを楽しみに待ちたい。

「一流シェフのファミリーレストラン」は、ディズニープラスのスターで独占配信中。

◆文=suzuki

「一流シェフのファミリーレストラン」シーズン2より/(C) 2024 Disney and its related entities