ウクライナからポーランドへ避難した、児童養護施設で暮らす子どもたち。ユニセフなどの支援を受け、ウクライナ出身の職員に見守られ、暮らしやすい環境の中で生活している。(ポーランド、2022年10月撮影) (C) UNICEF_UN0755588_Kanaplev

【2024年1月18日 ジュネーブ発】

ユニセフ(国連児童基金)が本日発表した新しい報告書によると、欧州と中央アジアの全域で45万6,000人が、大規模な施設を含んだ施設養護のための施設で暮らしています。

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「より良い保護への道:欧州と中央アジアにおける代替的養護を受ける子どもの現状(Pathways to Better Protection: taking stock of the situation of children in alternative care in Europe and Central Asia)」と題する本報告書は、欧州と中央アジアの全域において施設養護下で暮らす子どもは50万人近くおり、その割合は10万人当たり232人で、世界平均の105人の2倍にあたる、と指摘しています。

ユニセフ・欧州・中央アジア地域事務所代表のレジーナ・デ・ドミニーチスは、次のように述べています。「子どもを施設に収容するという、欧州と中央アジアの長く辛い負の遺産に終止符を打つまでには、まだ長い道のりがあります。多少の改善は見られるものの、進歩は均等とは言い難く、例えば障がいのある子どもたちはほとんど置き去りにされてきたのです」

施設養護下にいる子どもの割合は、西欧諸国が最も高く、10万人当たり294人で、世界平均の約3倍です。西欧諸国の施設は小規模で、コミュニティと一体化している傾向があるものの、家庭養護ではなく、施設養護に過度に依存しているのが現状です。この割合の高さは、近年欧州で、おとなの同伴者のいない子どもや家族と離ればなれになった子ども、および庇護を求める若者が増加していることが一因となっています。

報告書はまた、いくつかの好ましい傾向も明らかにしています。例えば、2010年以降、多くの国で施設養護下にいる子どもの割合が減少しています。ブルガリアモルドバグルジアでは、政府が脱施設化政策を推進し、家庭養護に多くの投資を行ったため、家庭養護が正式な代替的養護の主流となったことがデータから示唆されています。トルコルーマニアでは、予防、家族支援および里親による養護の促進への投資により、児童養護施設など特定の種類の施設で暮らす子どもの数が減少しました。

しかし、入所施設に預けられる可能性がはるかに高い、障がいのある子どもたちについては、ほとんど進捗がありません。データが入手できる国々では、施設に入所している子どものうち、障がいのある子どもは4%から最大で87%を占めています。データが入手可能な国の半数以上で、2015年から2021年にかけて、障がいのある子どもの割合は、すべての公式な施設養護の形態において増加しています。

家族との離別と施設収容が、子どもの健康、発達、ウェルビーイングに及ぼす負の影響は、広く立証されています。大規模な施設で暮らす子どもたちは、しばしば情緒的ネグレクトを受け、また虐待や搾取に遭いやすく、その結果メンタルヘルスに支障をきたしたり、心理的苦痛やトラウマにさらされたりします。

施設養護下にいる子どもは、子ども時代を通じて、またおとなになっても良好な人間関係を築くのが苦手で、疎外感や孤独感を抱くこともあります。特に幼い頃から施設に入所している子どもは、認知や言語などの発達の遅れを経験したり、法律に抵触するケースがより多く見られるために施設収容の悪循環が永続したりすることがあります。

「子どもの権利条約」、「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」および「児童の代替的養護に関する国連指針」に沿って、ユニセフは、子どもの居住と教育に使用されている大規模な施設を体系立てて閉鎖することを求めています。これには、障がいのある子どもや、おとなの同伴者のいない子ども、家族と離別した子どもを収容する居住施設での養護を、質の高い「家庭や地域社会を基本とした養護」に置き換えることが含まれます。

ユニセフは次のようなことを推進するのに十分な投資を行うよう求めています。すなわち、危険にさらされている子どもの早期発見と早期介入、社会サービスを提供するための熟練した労働力の確保、家族との不要な離別を防ぐための家族支援サービスの提供、保護を必要とする子どものための質の高い「里親による養護」、です。施設養護から家庭や地域社会を基本とした養護へとリソースを再配分し、また良質なデータが得られるよう投資を行うことが肝要です。

ユニセフは、欧州・中央アジア全域の各国政府やパートナーと協力して、家族が一緒に暮らすための支援を行うと同時に、家族や地域社会を基本とした養護を推進しています。これには、脱施設化政策・プログラムの策定と実施、子どもが家族から引き離されるのを防ぐための保護と家族支援サービスの拡充、家庭や地域社会を基本とした養護と家族の再統合の促進、自立した生活への安全な移行などが含まれます。ユニセフはまた、各国の政府や統計局と協力し、代替的養護下にある子どもに関するデータの入手可能性、比較可能性および質の向上に努めています。

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ユニセフについて

ユニセフUNICEF国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/

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日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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