2024年1月18日PS5/PS4/Switch/Xbox Series X|S/Xbox One/PC向けの横スクロールアクションアドベンチャー「プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠」が発売された。本作は中世のペルシャを舞台にした「プリンス オブ ペルシャ」シリーズの最新作であり、ペルシャ王国の若き戦士であるサルゴンを主人公にした物語が描かれる。

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誘拐されたガッサン王子を助けるべく、サルゴンたち不死隊はカーフ山へ


本作の舞台になるのは中世のペルシャ。「不死隊」と呼ばれる精強な部隊の一員であるサルゴンは、ペルシャを襲った敵軍の将軍を討ち取る。女王への謁見を済ませた夜、仲間たちと談笑をしていたサルゴンだが、師匠である女性・アナヒータより、王子のガッサンがさらわれたと知らされる。サルゴンは王子を救うため、不死隊のメンバーたちとともにカーフ山に向かう。というのが本作のあらすじだ。



本作のストーリーは、序盤から数多くの謎が散りばめられている。もっとも印象的だったのが時間に関する謎だ。サルゴンたちがカーフ山にやってきたのは、ガッサン王子がさらわれて間もない頃だったが、先行して現地にいた戦士たちは30年戦っていたと言う。いっぽうで別の人間は数日たっていると言い、時間の進み具合が人によって違っている。さらに自分そっくりの戦士が死んでいたり、同僚のメノライアスが使う弓がなぜか落ちていたりと、カーフ山を少し探索するだけでさまざまな疑問が沸いてくる。



ストーリーだけでなく、各キャラクターも非常に濃い。不死隊のメンバーは全部で7人。双剣使いのサルゴンをはじめ、不死隊のリーダーであり刀の使い手であるヴァラム、3メートル近い巨躯を誇る巨大な錨使いオロド、隻眼の大剣使いアルタバン、弓と体術の使い手メノライアス、槍と盾で戦う女戦士のネイト、仮面を被った長身の戦士ラジェンと、いずれも個性派ぞろいだ。プロローグでは、たった7人で戦況を覆すさまが描かれていたので、彼らの強さに対するインパクトは大きかった。





本作のビジュアルはアニメ調になっており、くり出す攻撃にオーラがまとっていたり、大技を出す際にカットインが入ったりと、視覚的に派手なので、イベントシーンも見ているだけで楽しい。また、戦闘や探索といった、プレイヤーが操作できるパートからシームレスにイベントシーンへと移行する演出のおかげでテンポもよかった。


攻撃重視のスタイルとカウンターの達成感がクセになるバトル



サルゴンの武器は双剣と弓。双剣を使った近接攻撃を軸に、離れた敵には弓を使うというスタイルが基本となる。双剣を使った攻撃は連打するだけでもコンボが成立するほか、コンボ中にスティックや方向キーを倒すことで、空中への打ち上げや空中から地面への叩きつけへと攻撃方法が変化していく。双剣を使って手数で攻めるスタイルなので、あらゆる動きが俊敏で爽快感がある。


敵の中には、盾を持っていたり、攻撃の激しいキャラがいるため、そういう時は相手にあわせた攻撃も重要だ。たとえば、盾を構えている敵にはボタン長押しでくり出せるタメ攻撃を当てることで、その盾自体を壊せる。攻撃の激しい敵は空中に打ち上げれば身動きが取れなくなるので、こちらから一方的に攻撃が可能となる。特に空中への打ち上げは、ほかのさまざまな敵にも有効なため、なるべく使いこなせるようにしておこう。筆者も、空中でのコンボを意識するだけで安定して勝てるようになった。



また、「アスラの神技」という必殺技的なアクションも重要だ。このアクションは専用のゲージを消費しつつ、剣で衝撃波を飛ばして複数の敵を同時に攻撃したり、特殊な領域を展開して自分のHPを回復したりと、さまざまなバリエーションがあって、攻撃から支援までその効果は幅広い。いずれもコンボの最中、締めに出せるほか、仕掛けるときやカウンター時など、活用できるタイミングが多い。発動に必要なゲージは攻撃を当てるごとに増えていくので、戦闘中は出し惜しみせず使いたいところだ。



本作のバトルの特徴として、防御アクションが存在せず、基本的には回避とカウンターで対処する点もあげられる。相手の攻撃に合わせてコンボを中断し、すぐうしろに飛び退く、スライディングで相手の股下を潜り抜けるといったアクションも可能。回避後はすぐに反撃に転じることができるため、攻撃の手を休めることがないのもうれしい。剣を構えて待ち受け、相手の攻撃を無効にする「受け流し」を成功させれば、対象を一時的に隙だらけにすることも可能。どれも受け身のようで、実際は次の攻撃につながるため、攻撃的な立ち回りがとてもやりやすかった。


そして本作ならではの緊張感のある駆け引きが楽しめる要素が、受け流しの派生技である「返り討ち」だ。通常の受け流しだと相手の攻撃を無効化して終わりだが、黄色い光を放った攻撃を受け流すとサルゴンが専用の攻撃をくり出す。いわゆるザコ敵なら基本的に一撃で倒せるし、ボスに対しては大ダメージを与えられる。



ただし、返り討ちにできる技はほとんどが大技であり、成功すれば敵に大ダメージを与えられるが、失敗するとサルゴンが大ダメージを受けて窮地に陥ってしまう。この賭けとも言えるシステムを活用してどんどん攻めていくか、それともジャンプやスライディングなど基本的なアクションを駆使して安全に立ち回るかのせめぎ合いが楽しい。返り討ちにできる攻撃の種類は敵によってまちまちだが、慣れてくると成功率も上がり、積極的に返り討ちを狙えるようになるのが面白い。


赤く光った攻撃は受け流せないため、ジャンプやスライディングで避けるのが無難


能力を駆使してカーフ山を縦横無尽に駆け巡る探索要素



本作は探索のボリュームもたっぷり。舞台となるカーフ山には、遺跡から港、書庫に森林など、景観の異なるさまざまなフィールドが存在している。そこにはさまざまな敵が待ち受けているのはもちろん、通ると起動して矢を放ってくる罠、振り子のように左右に揺れる巨大な刃物、上下に動いてプレイヤーの行く手を阻む階段など、ギミックの種類も多彩だ。



どう考えても通常のジャンプでは届かない高所や、透明で触れられない立体物を始め、道中には序盤では進めない場所が出てくるが、これらはストーリーが進んだり特定のボスを倒して得られる特殊な能力によって、突破できるようになる。最初は謎だったギミックが、新しい能力の登場によって突破できるようになり、未知のフィールドへ到達できたときの達成感やひらめきは、アクションだけでなく探索を重視する本作ならではの感慨だ。



各フィールドには特定の能力によってのみ突破できる場所がかなり多い。そのすべてを正確に覚えておくのは難しいが、そこで役に立つのが「記憶のかけら」である。記憶のかけらは、言ってしまえばスクリーンショット機能のようなもので、使うとその場の風景を画像として保存し、マップ上にとどめておける。マップ画面でカーソルを合わせると、保存しておいた風景が確認できるため、ギミックや記憶の確認に使える。こちらは情報を整理するうえで非常に便利だった。


ほかにも、探索では各所にある「ワクワクの木」も重要になる。ワクワクの木はちょっとした拠点のようなもので、調べるとサルゴンのHPが回復し、消費してしまった回復薬も補充できる。回復薬の数や効果量は「安息所」にいるキャラクターとの売買で強化できるが、敵との戦闘やギミックの踏破でなにかと体力は減るので、ワクワクの木は見かけたらなるべく利用したい。


本作ではゲームオーバーになると、最後に触れたワクワクの木からやり直しになる。解放したワクワクの木が多ければ、それだけリトライもしやすくなるはずだ。


プリンス・オブ・ペルシャ」といえば、いやらしい配置の罠を思い出す人も多いだろうが、本作でもそれは健在。タイミングを見計らって刃物の間を移動したり、壁を伝ったジャンプや空中ダッシュを併用して、段差になっている絶壁を移動する、特殊な物体の能力を使って実体化させて一時的に足場にしたりと、高度な操作を求められる場面もちらほらとある。とくに希少なアイテムが置かれた場所の通り道にある罠は狂気じみた作り込みで、ほかのゲームならクリア後に解放される隠しエリアや、腕の立つゲーマー向けのやり込み要素として出てくるレベルだ。人によってはギミックを突破するだけで回復薬を消費することになるだろう。試行錯誤が必須の難しさではあるが、ワクワクの木からリトライすれば負担もだいぶやわらぐはずだ。


装備の鍛造やアミュレットのカスタマイズでサルゴンを強化



サルゴンが持っている双剣や弓、回復薬といった装備品は、専用の施設で強化できる。回復薬については先述の安息所で、双剣や弓などの武器は安息所にある扉を抜けた先の「カへヴァの炉」で取り扱っており、攻撃力や回復量といった基本的な性能を強化可能。ストーリーをある程度進めると、各地にあるワープポイントを利用できるようになるため、以降は定期的に安息所を訪れるといいだろう。



装備品の一種である「アミュレット」も、各地を攻略するうえで欠かせない代物だ。アミュレットはサルゴンの首飾りにはめると効果を発揮し、攻撃力を高める、受け流しが成功した際にHPを回復するといった多彩な恩恵をもたらしてくれる。アミュレットを首飾りにはめるにはスロットが必要で、スロットを拡張するためのアイテムは各地の宝箱などに隠されている。アミュレットは拾うだけでなくカヘヴァの炉でも買えるため、気になったものはどんどん買っていこう。


特に強力なのは「ルクサナの贈り物」。受け流しが成功した際にHPを回復してくれるため、回復薬を節約できる。受け流しは相手の遠距離攻撃にも有効であり、タイミングさえつかんでしまえば、相手の矢をひたすら受け流して体力を回復するという、お得なテクニックも活用できる。



装備の強化やアミュレットの購入には、当然お金が必要である。しかし、欲しいものを買い続けていると、お金があっという間に枯渇してしまうのは必然だ。そこで懐事情を改善するならアルタバンの訓練を受けよう。安息所の右上にいるアルタバンに話しかけると、攻撃方法やコンボといった基本アクションを学べるのだが、ひとつの項目を修めるごとにお金がもらえる。これがばかにならない。訓練をこなすだけで、回復薬や装備の強化1回分のお金が簡単にたまる。攻撃の基礎を学ぶという点をかんがみても、できるだけ訓練は利用しておきたい。



攻撃と回避、そして受け流しと返り討ちを交えた緊張感のあるバトルが楽しめるだけでなく、能力を駆使した重厚な探索も楽しめる本作。アドベンチャーゲームが好きな人、手ごたえのある戦いを求めるゲーマーには特にオススメできる1作だ。

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夏無内好

夏無内好

活動歴約10年のフリーライター。専門学校を出た後、大手のゲーム雑誌の記事作成や編集プロダクションの攻略本作成などを経験。週刊誌での長期連載やプレスリリースのリライトも経て、最近はアキバ総研などのウェブ系でも執筆を始める。 基本的に雑食で、RPGからアクション、シミュレーションやFPSまでなんでもやる。


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本日発売「プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠」レビュー!能力を駆使した大ボリュームの探索に加えて、カウンターと回避を軸にしたハイスピードのバトルが楽しめる