近年の物価高騰やコロナ禍からの経済活動の回復、最低賃金の大幅な増加を受けて、企業への賃上げ圧力は非常に大きなものとなっています。厚生労働省の調査によると令和5年中に「1人あたり平均賃金を引き上げた・引き上げる」と回答した企業の割合は89.1%(前年85.7%)となっており、ほとんどの企業が賃上げを実施、あるいは実施予定であることがわかります。また東証プライム上場企業の2023年冬季賞与の平均金額は約80万円で前年比1. 5%増となっており、こちらも増加しています。そんな中、中小企業における2023年の冬季賞与支給の見込みはどうでしょうか。賞与は従業員のモチベーションや満足度を高めるための重要な手段であり、企業の人材維持や採用戦略においても大きな役割を果たしています。人手不足が続き採用競争の激しい中小企業にとって賞与の実態を把握することは、企業経営における戦略的意思決定に不可欠です。そこで、本調査ではエフアンドエムクラブの会員企業に対して今年度の冬季賞与の支給予定に関するアンケート調査を行いました(実施期間:

2023年11月1日~30日)。

1.調査結果

まず昨年支給額と比較した増減(図1, 2)をみると「ほぼ変わらない」が正社員、パートともに最も多かった。次に多かったのは「2割未満、増額」で、正社員では18%(対前年比6%増)、パートでは5%(同2%増)となった。また「2割未満、増額」と「2割以上、増額」を合わせた割合は正社員では23%(同7%増)、パートでは7%(同3%増)となっており、少なからず賞与を増額する傾向が増えていることがわかる。

その中でも特に「飲食業・宿泊業」の企業の回答が多くあり、コロナ禍からの回復傾向が見られる結果となった。ただ一方で「2割以上、減額」と回答した企業が正社員では4%(同1%増)、パートでは2%(同1%増)となっており、原材料高騰等の影響で業況がひっ迫している企業もあるようだ。



次に正社員に対する1人あたり冬季賞与支給額は、21~40万円が39%(対前年比7%減)で最も多く、次いで1~20万円が31%(同7%増)であった(図3)。1~40万円の間で支給している企業が70%を占めるという結果は前年と同様だが、その内訳には変化があることがわかる。

パートに対する支給額は、0円が50%、1~10万円以下が41%で、前年とほぼ変わらない結果となった。


また賞与を支給している企業の平均支給額は正社員27.7万円、パート6.5万円であった。前年の調査結果と比較すると減額傾向にあり、正社員は10%減(前年30. 9万円)、パートは3%減(同6. 7万円)となっている。前述した昨年支給額と比較した増減(図1,2)では「ほぼ変わらない」、「2割未満増額」の回答が多かったが、全体の平均支給額では微減となっているようだ。


業種別にみるとIT関連業、不動産業は34万円超と高く、運輸業・通信業、飲食業・宿泊業は20万円以下となっており、最も高いIT関連業、不動産業の約半分の金額となっている。ただ正社員の平均支給額の前年比は「飲食業・宿泊業」を除くすべての業種で低下しており、厳しい状況が伺える。

2.まとめ

冒頭に述べた通り、原材料高騰を受けた価格転嫁の進展や円安を背景としたインバウンド需要の拡大により企業収益が改善していることに加え、今年の春闘の賃上げ率が高水準となり賞与額算定のベースとなる基本給が増加したことなどを背景に2023年冬季賞与は増加傾向にある。またキャリアリサーチLab(株式会社マイナビ)の調査によると「賞与が少ないから転職をしたことがある」と回答した割合が62. 5%となっており、賞与が離職の要因と

なる可能性が高いことがわかる。中小企業では人手不足が大きな課題となる中で、従業員の離職を避けるためにも一定水準の賞与支給が求められる。

しかし、中小企業を主な対象とした本調査では賞与支給額は減少傾向にあることがわかった。要因としては、中小企業大企業と比較して原材料高騰に応じた価格転嫁を進められておらず原資が増えないことや、基本給をあげる余力がないことなどが考えられる。このような厳しい業況において賃上げや生産性向上に取り組む企業に対して、中小企業が前年度より従業員の給与を増額した場合に法人税の税額控除を受けられる「賃上げ促進税制」や、生産性向上に資する設備投資を行うとともに最低賃金を引き上げることで投資額の一部助成を受けられる「業務改善助成金」といった公的制度が設けられている。他にも、価格交渉におけるポイントやノウハウをまとめたパンフレット等を中小企業庁が公開しているため、他社の取り組みを参考に自社でも検討いただきたい。

フアンドエムクラブでは、このような公的支援制度の情報を取り逃がさないよう、会員企業向けの公式LINEアカウント「補助金はやみ」にて、国・地方自治体の支援策に関する情報提供を行っている。また、賃金・賞与の算定テーブル、評価制度の作成などについても担当アドバイザーが相談を受け付けている。今後もエフアンドエムクラブでは各種情報提供だけでなく、様々なサポートを通じて中小・零細企業のバックオフィス強化に努めていく。

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配信元企業:株式会社エフアンドエム

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