日本海軍潜水艦伊400」が1944年の今日、進水しました。大きさは軽巡並みで、水上攻撃機を3機搭載できました。想定された任務はアメリカ本土の攻撃。アメリカ近海まで潜航し、そこで攻撃機を発進させようと目論んだのです。

任務は戦略爆撃

アメリカの東海岸を目指した旧日本海軍潜水艦がありました。伊400型です。うち「伊400」が進水してから、本日でちょうど80年となります。

伊400」の建造目的は、戦略的任務に従事させることでした。「潜水空母」の異名を持つ同艦は、水上攻撃機を搭載のうえアメリカの東海岸まで潜航し、そこで攻撃機を発進しワシントンニューヨークといった政治・経済の中枢を攻撃しようと目論んだのです。直接の被害は限定的でも、大都市上空に「日の丸」をつけた攻撃機が飛来して爆弾を落とせば、アメリカ世論に大きな影響を与えることが期待できると考えました。

伊400」のスペックは、全長122m、水上排水量3500トンあまり、水中排水量6500トンあまり、航続距離は3万7500海里(約7万km:水上)。これは軽巡洋艦並みの大きさで、通常型潜水艦としては、2012(平成24)年に就役した中国の潜水艦発射弾道弾実験艦032型(NATOコード名「清」、水中排水量6628トン)まで、その記録は破られませんでした。水上攻撃機は3機搭載できました。

水上攻撃機には星条旗を描き偽装

竣工したのは1944(昭和19)年12月末。すでに日本本土への空襲は激しさを増し、物資や燃料も欠乏するなど、戦局は悪化の一途をたどっていました。アメリカ本土攻撃も変更を余儀なくされ、さらに1945(昭和20)年5月に同盟国ドイツが降伏すると、大西洋方面からの米英艦隊の移動を阻止すべくパナマ運河攻撃が企図されます。しかし効果が薄いと再度変更されました。

最終的には、アメリカ空母艦隊の停泊地であったウルシー環礁(現・ミクロネシア連邦)が攻撃目標となりました。「伊400」は同型艦「伊401」とともに7月末、青森県の大湊を出撃します。水上攻撃機を特攻作戦として使用する計画で、偽装のため機体にはアメリカ国籍を示す星条旗が施されました。攻撃予定日は8月17日でした。

しかし周知の通り、その2日前の8月15日に日本は無条件降伏します。攻撃は中止され、「伊400」「伊401」は日本へ帰還することになりました。偽装までした水上攻撃機も実戦投入されることなく、海中投棄されました。

その帰路2隻は三陸沖で、アメリカ軍駆逐艦潜水艦に拿捕されます。その際アメリカ軍兵士はその大きさと、潜水艦に航空機を搭載するという発想に、たいそう驚いたといいます。2隻は1946(昭和21)年1月にアメリカ本土で技術調査されると、その後ハワイ近海で標的艦とされ撃沈処分されました。

もともと伊400型は計画時、計18隻が建造される予定でした。ところが結果的には戦局の悪化から、「伊400」「伊401」「伊402」の3隻が完成したのみでした。

旧日本海軍の潜水艦「伊400」。三陸沖で駆逐艦「ブルー」に拿捕された直後の写真(画像:アメリカ海軍)。