「いろいろな沼にハマっている」と語るのは、声優アーティストの千葉翔也さん。悩みに悩んだ末、今回お話しいただくのは、コロナ禍からハマっている“お笑い沼”です。

千葉翔也_アーティスト写真

テレビのネタ番組やYouTubeのネタライブ配信を見るだけにとどまらず、劇場へも足を運ぶほどハマっているとのこと。中でも今好きな芸人さんを聞くと、M-1で優勝した「令和ロマン」をはじめ、「トム・ブラウン」「フースーヤなど出てくる出てくる……。

そこまでハマるのには「お笑いは前向きに、元気になれる存在」であると同時に、お笑いは声優の仕事にも還元できる部分がある様子。「声優もトークをする機会が多くなっている今、学ぶべきところが多い」と話します。

プライベートで楽しむだけではなく、仕事として参考にしていること、逆に共通点を感じるポイントなど、千葉さんが深くハマる“お笑い沼”に迫ります。

また、2024年1月にソロアーティストとして活動を開始する千葉さん1st EP『Blessing』では、なんと5曲中2曲の作詞に挑戦しています。ここでも新たなお笑いの魅力に気づけたよう。ソロアーティストデビューの経緯から、千葉さんが1曲1曲コダワリ抜いたEP制作についてもお届けします。

劇場へ足を運ぶほどハマる“お笑い沼” 「千鳥さんのライブで6組のカップルに囲まれていた」

――はじめに、千葉さんがハマっている沼を教えてください!

千葉翔也(以下、千葉):
いろいろな沼にハマっているのですが、中でも「お笑い」が好きです!

――いつ頃からお笑いの沼にハマっているのでしょうか?

千葉:
学生時代から『レッドカーペット』『はねるのトびらなどテレビでネタ番組やバラエティ番組が流行っていたので日々見ていたのですが、ハマったのはコロナ禍なので割と最近なんです。

「笑えることって大切だな」と思わされたのと同時に、お笑いって自分の個性を活かしていたり技巧を凝らしていたりいろんな人がいるのですが、それって僕がしている声優の仕事と離れている気がしなくて。感動して泣いてもらう演出を作り出す現場は目にしたことはあるのですが、笑わせることってそれに比べてすごく難しいと思うんです。

僕自身、コメディタッチの作品への出演は少ない方なので、お笑いを見ては「笑わせるためには何が必要なんだろう」と真面目に考えてしまいます。

お笑いには、登場した瞬間に面白い人もいるじゃないですか。芸人さんの持つ「人柄」や「テンション」などさまざまな要素が掛け合わさって生まれるものなので、「才能」の一言で片づけるにはもったいない。しかも、芸人の皆さんはそんな細かいことより、「とにかくお客さんを笑わせよう!」としている姿勢がとても尊敬できて。年々好きになっていますね!

――どのようにお笑いに触れることが多いですか?

千葉:
テレビだとM-1(グランプリ)』や『キングオブコント』などの賞レース番組を見ています。最近はコロナ禍もあり、予選なども YouTubeで配信されているのでネットの配信もよく見ていますね。

賞レースの予選に限らず、今はYouTubeがとても便利なんですよ。NON STYLEさんなど誰でも知っている有名な芸人さんからテレビにはあまり出演していないような芸人さんまで、皆さんYouTubeチャンネルをやっています。

ご自身のお笑いライブの映像を配信してくれていて、サクっと見られるのがすごく良くて。移動時間や隙間時間で「笑いたいな」「元気を出したいな」と思った時に見ています。

――移動時間や隙間時間に見られるのが動画のいいところですもんね。

千葉:
手軽で便利ではあるのですが、「動画だと100%のおもしろさが伝わらないな……」と思うこともあります。

YouTubeで見られる動画は基本的に無料ですけど、お笑いに限らずエンタメは自分からお金を払ったからこそより楽しめると思うんです。見る側が対価を払うことで返ってくるものは大きいはずだから、お金を払って劇場へ見に行くのが1番お笑いをおもしろく感じられるはず。

なので、これからも変わらずに劇場にも足を運びます!

――劇場にも行かれるんですね。

千葉:
ラジオでお世話になっている方たちにお笑い好きな人が多いので、「週末こういうライブがあるけど一緒に行かない?」と声をかけてもらうんですよ。

行けないことももちろん多いんですけど、行ける時は行くようにしていますね。渋谷の「無限大ホール」や新宿の「ルミネthe吉本」は行きやすいですし、テレビでずっと見ていた人たちがたくさん出演するから、 値段に対して満足度が高いなと感じます。

――劇場でお笑いを見ている中で、特に体験として印象に残っているエピソードはありますか?

千葉:
千鳥さんのネタを劇場で見た時は、「本物だ!」と思いました(笑)

年末にテレビ番組でやっていた「ラーメン屋は夜10時になると、開いてる店は開いてるけど、閉まってる店は閉まってる」みたいなシュールなネタを劇場でも披露していて。劇場にいるお客さんたちが固唾を飲んで見守っていて、 それすらもネタの一部になっているようだった。お客さんを巻き込んでいる感じがすごいなと思いました。

あと、その日は1人で劇場に行っていたんですけど、僕を囲むようにカップルが6組もいて……。席を立った瞬間に僕の左も右も後ろも前も全部がカップルで囲まれていた時は、「誰かに言いてぇ~!!」と思いながらちょっと笑っちゃいました(笑)。

――劇場ってそんなにカップルで見に来られる方が多いんですね。

千葉:
体感ですけど、めちゃくちゃ多いと思いますね。映画館より多いんじゃないかな。千鳥さんのライブの時、6組のカップルに囲まれていたのはさすがにたまたまだと思いますけど(笑)。

――その状況もひっくるめて劇場で見ることのおもしろさがあるように思います(笑)。また、千鳥さんのライブを見に行ったということは、劇場へ足を運ぶときは有名な方を選ぶことが多いのでしょうか。

千葉:
有名な方を選ぶことは多いのですが、今後もし選ぶとしたら「生でこそ見る価値があるな」と思う人のライブを見たいですね。中でも今1番見たいのは、タイタンに所属しているキュウさん

ただ僕、出演情報とかをネットで調べるのがめちゃくちゃ苦手なんですよ……。今日明日のライブで「行けるな!」と思った人を選ぶことが多いので、2024年はちゃんと情報をキャッチして足を運びたいなと思っています。

――選ぶ上では、漫才、コントなどあまりジャンルにはこだわらず?

千葉:
どっちも好きですけど、漫才の方が好きなので漫才を見たいですね。

コントは役を演じられるからおもしろい設定がいくらでも詰め込めるけど、漫才は基本的に芸人さん本人がそのままの姿でいかに楽しませるかを考えるじゃないですか。ルールに縛られながらもおもしろさを追求しているところが好きです。

あと、コントは設定を掴むのに時間がかかる時があるけど、漫才はフォーマットがあるから見やすいとも思いますね。

M-1優勝の「令和ロマン」も! 千葉翔也がハマるお笑い芸人とは

――では、千葉さんが特に好きな芸人さんを教えていただけますか?

千葉:
たくさんいらっしゃるから、どうしよう!(笑) 学生時代は友達とみんなで真似できるネタや芸が好きでしたけど、今は自分で真似できない、その人たちにしかできないネタや芸をされる方たちが好きですね。

中でも今は、令和ロマンさんが好きです! (髙比良)くるまさんの今っぽさのあるおかしいボケと、(松井)ケムリさんの余裕あるツッコミは、笑かしにきているんだけど笑かしにきていないというか……狙っていない感じがいいんですよね。劇場には行けていないので、実際に見てみたいです。

また、トム・ブラウンさんとフースーヤさんのネタ動画を見ては毎日声を出して笑っています。

トム・ブラウンと言ったら合体漫才があると思うのですが、そのフォーマットの中でブラッシュアップされていると感じていて。今のフォーマットを捨てて新しく別のフォーマットをつくる芸人さんもいる中で、トム・ブラウンさんは同じフォーマットの中で年々変化があって。「試行錯誤しているんだな」「ここを工夫したんだろうな」とネタを通して分かるのがおもしろいです。

フースーヤさんはデビュー1年目からテレビにバンバン出ていて、そのあとテレビにはあまり出なくなったのですが、最近調べてみたら漫才がめちゃくちゃ上手くて! ネタのテンポやギャグの個数など見るたびに進化していて、変わっていく様を見ていると「お笑いって人がつくっているんだな」と改めて実感させられます。

それから、サンドウィッチマンさんが所属しているグレープカンパニーの後輩・わらふぢなるおさんはコント師として好きです。彼らにもフォーマットがある漫才があるのですが、それがめちゃくちゃおもしろい。コント以外にも漫才もおもしろくて、「自分とは違う人間なんだな……」と思い知らされます(笑)。

ほかにも、男女のコンビも好きです。ゆにばーすさんや相席スタートさんが好きで見ることが多いのですが、男女コンビの中でも蛙亭さんは一時期ライブを見に行ったり、ポッドキャストでラジオを聴いたりするほどハマっていました。中野(周平)さんの個性が強くて、つい見てしまうんですよ(笑)。

――動画を見たり劇場に行ったりするだけではなく、芸人さんのラジオを聴くこともあるんですね。

千葉:
聴きますね。芸人さんのラジオって自分のプライベートをギリギリのところまでお話しているんですよ。芸人さんってプライベートをネタに変換する能力が長けているので、勉強になりつつ参考にならないなと思いながら聴いています(笑)。

アフレコと漫才は「狙いすぎないこと」「存在感を出すこと」が共通している?

――役作りや表現力を培うために、お笑いを観たりラジオを聴いたりすることもあるのでしょうか?

千葉:
それを言い訳にたくさん見ています(笑)。役に立っているかは分からないですが……。

イベントや番組のMCでアメリカザリガニの柳原(哲也)さんや天津の向(清太朗)さんなどとご一緒することが多いんですけど、会話のパスの出し方とか話が蛇足になった時にしっかり本筋に戻してくれる懐の広さがとても勉強になります。

おふたりの性格が優しいというのもあるかもしれないのですが、誰も傷つけずにちゃんとおもしろいトークにしてくださることが多くて。声優もトークする機会が少なくない今、学ぶべきところが多いなと感じています。

あと、アフレコと漫才って似ているところがあると思っているんですよね。

――アフレコと漫才が似ているというのは……?

千葉:
狙っている感がありすぎるとおもしろくならないことが多くて、いかに自然体に見せながらおもしろいと思わせられるかが通じていると思います。

あとは、存在感を出すことですかね。声優の場合、キャラクターが登場して声を発した時に、一発で「このキャラクターはこういう人なんだろうな」と分からせなきゃいけない。芸人さんも登場した瞬間に「この人、こういう人なんだろうな」と分かる存在感が必要じゃないですか。それは、とても似ている気がします。

――少しお笑いの話と逸れるのですが……「このキャラクターはこういう人なんだろうな」と理解することは、声優さんのお芝居に対する印象にも繋がってくると思います。「このキャラクターの声はこの声優さんだ!」とすぐに気づかれるという意味での存在感についてはどのように感じているのでしょうか。

千葉:
声優さんの中でも様々な考えがあると思うのですが、個人的には自分の存在感を出すよりも役柄に合っていて作品のノイズにならない声を出すことが大切だと思っています。見ている人たちに「千葉翔也が演じている」と分かってもらえたら嬉しいけど、僕が考える声優の仕事の1番大切なことは「作品のおもしろさが伝わる」だと思いますね。

――あくまでも、演じるキャラクターの存在感を出すことが大切ということなんですね。

千葉:
僕はそう考えていますね。

あと、お笑いから気づいただことが直近でもう1つあって。ソロアーティストデビューにあたって、作詞をしてみたのですが、そこでもすごく気づきになりました。

一見意味のなさそうな相槌でも、あるのとないのとでは全く印象が異なることってあると思うんです。ネタの本編に入る前の会話も、大笑いを起こすためのセリフではないにしても、そのあとに続く笑いのために意味のあるセリフなんだろうなとか。

すごく綿密に考えられているんですよね。短い尺の中で全力を出し切るという意味では作詞作業でも意識したので、芸人さんたちへのリスペクトをより覚えました。

――声優と芸人は異なる職業ですが、似ている部分や活かせる部分がたくさんあるんですね。ちなみに、最近は声優さんのバラエティ番組もありますが、千葉さんご自身はコントや漫才をしたいと思うことはないのでしょうか。

千葉:
挑戦してみたいです。一度、声優友達の浦尾岳大さんと矢野奨吾さんと3人でイベントをやった時に、僕らマターでやることを決めなければいけなくて。「じゃあ、コントをやりたいです!」となったんですよ。だけど、コロナ禍直撃だったこともあって接触が難しく、朗読軸でおもしろい話をすることに。

なので、彼らのように滑ったところで傷を分かち合える仲良しな人たちとやってみたいですね(笑)。

――どんなネタがやりたいとかありますか?

千葉:
僕は舞台に登場しただけで笑いが取れるタイプではないので、斬新な設定や引きのある言葉などを考えられたらいいなとは思います。

とはいえ、僕が考えつくなら誰かがやっていると思うので……簡単に手を出していいものじゃないとも思っています(笑)。

そんな中でも、やってみたいのはコントですかね……! 役者業が活かせるかも……。漫才は自分がいかにおもしろくない人間か突きつけられそうな気がするので遠慮しておきます(笑)。

――声優さんも今は人前に立つイベントやライブが多いから、意外とすんなりできてしまいそうな気がしています。

千葉:
声優は人前に立つ機会が極限まで少ない職業だと思うので、かなり勇気のいることだと個人的には思いますね。仮にアニメ作品のイベントでステージに立つにしても、声優って0ベースでのトークがほとんどないんですよ。

なぜなら、基本的には作品を背負ってステージに立つことがほとんどで。僕を知ってくれている人もいますが、本来は作品が好きな人が集まって、時間を分かち合いながら楽しいことをしているんですよね。何も背負わず身を晒してステージに立つことはほぼないからこそ、芸人さんのように舞台には立てないような気がしています。

千葉翔也『Blessing』通常盤

千葉翔也1st EP『Blessing』通常盤ジャケット

――1月からソロアーティストとして活動を始められますが、それは作品やキャラクターを何も背負わずに人前へ立つことになりますよね。

千葉:
そうなんですよね。それはそれで、とても新鮮な気持ちでいます。

ソロアーティストとしてリリースする曲やライブは、作品やキャラを背負ったものとは全く違うものになるだろうし、なったらいいなとも思っています。

次ページ▼2曲の作詞に挑戦した1st EP『Blessing』制作の裏話

憧れのキングレコードからのソロアーティストデビューにプレッシャーも

――そもそもソロアーティストデビューは、どのような経緯で決まったのでしょうか?

千葉:
以前に作品でお世話になっていたキングレコードのプロデューサーさんから昨年声をかけていただき、ソロアーティストデビューが決まりました。

もともと歌を歌うことが好きで、すごくやりたい気持ちがあったのでとても嬉しかったのですが、「ソロアーティストとして活動ができるんだ!」と実感を得るまでは、かなり時間がかかりました(笑)。

――作品を背負わず1人で活動することへ不安やプレッシャーを感じることは?

千葉:
声をかけてくださった方など僕のことを知ってくださっている人がいるという意味では、0スタートではないので、不安はありませんでした。

ただ、キングレコードというレーベルに対してとても憧れがあり、プレッシャーは感じていましたね。

――キングレコードに憧れていたんですね。

千葉:
僕ら世代って、「アニソンと言えばキングレコード!」というイメージを持っている人が多いと思うんですよ。水樹(奈々)さんや宮野(真守)さんはもちろん、angelaさんのラジオも聴いていました。

声優になってからは、その存在の大きさを肌で感じるようになりました。そこから、「いざ、ソロアーティストデビュー!」となるとどこか他人事のような感覚です。同時にめちゃくちゃ嬉しいなと思っています。

キングレコードからソロアーティストデビューする」とお知らせして嬉しかったのが、いろんな方からキングレコード、すごく合っているね!」と言われたことで。僕、10月8日を「千葉=千・8=1008…ということで、チバの日」として定めたのですが(笑)、その日に日頃お世話になっている方たちにあいさつ回りを兼ねてお知らせしたんです。

そしたら、「おめでとう!」という言葉と同時に、そんな風に言っていただいて、心強い意見だと思ったと同時に「そうやって言ってもらえる自分でいられたんだ」と思いました。

――皆さんから「キングレコードに合っている」と言われている中で、千葉さんご自身はどのようなアーティスト像を思い描いていますか?

千葉:
デビュー発表前に「今、僕のことを知ってくださっている方たちが僕に対してどのような印象を抱いているのだろう」と、たくさんのスタッフさんと一緒に考えてみました。

でも、僕は声優としていろんな役を演じているから、作品によって印象が変わるんですよね。エキセントリックな役を演じることもあれば、熱血な役を演じることもある。だから、1つの印象に絞ることができませんでした。

なので、まずは自分に嘘をつかず、素直に納得できるものを出していきたいと思ったんです。1st EPを制作する上でも、見栄えを気にするのではなく、「今の自分が咀嚼できる言葉を表現していこう」と。その先に、自分の見せ方が決まってくるのかなと今はぼんやり思っています。

初EPで2曲の作詞に挑戦「アーティスト活動の指標をテーマに詞を書きました」

――1月17日発売の1st EP『Blessing』は、どのように制作を進めていったのでしょうか?

千葉:
楽曲を制作するにあたってコンセプトを決め、作家さんたちが送ってくださった楽曲の中からコンセプトに沿った形でまずは曲を決めていきました。

曲を決める際には、「すごくいい曲だけど、この曲は僕以外の人が歌った方が素敵に表現できるだろうな」「これはただ好きなだけで僕が上手く表現できる曲ではないな」といろいろなことを考えました。

また歌詞に関しても、自分で書いている曲はもちろん、書いていただいた曲も、「ここは自分的にほかのワードの方がしっくりきます」「このワードは自分的にネガティブな印象があります」といろいろ提案して変えることもありました。

――千葉さんのアイデアがかなり反映したEPということですね。今回、作詞曲が2曲ということにも驚かされました。

千葉:
作詞はもともとやってみたいと思っていたんです。ソロデビューという大切なタイミングだからこそ、自分の想いがより伝わるだろうと、作詞に挑戦させてもらいました。

僕が書いているからという理由で、あまり良くない出来の歌詞でも「いいんじゃない?」と言われることってすごく悲しいので、自分で自分にプレッシャーをかけながら、僕なりに曲と向き合って作詞をしました

――「曲を制作するにあたってコンセプトを決めた」とお話されていましたが、千葉さん作詞曲の「I’ll be」「Blessing」はどのようなコンセプトで制作を進めていったのでしょう。

千葉:
まず、EP1曲目の「I’ll be」は、先ほどのアーティスト像でもお話したような「現状の見え方を変えて自分を肯定できるようになろう」という活動指標をイメージして歌詞を書きました。サビで繰り返し歌っている<悲しい言葉の意味を塗り替えて>という歌詞が指標を表しています。

Blessing」も同じく活動指標ではあるのですが、「Blessing」には曲の中で完結する世界観があります。デモ段階でいただいた仮の歌詞には「風」がモチーフになっていて。風は目に見えないけど、そばにいたり力になったりする存在で、そんな風と同じ存在が過去の自分だと思ったんです。過去の自分って目を閉じても絶対的に近くにいる存在じゃないですか。

そう思った時、過去の自分を切り離さないと成長はできないけど、僕は過去の自分を否定したくないなって。「昨日の自分から今日の自分、明日の自分に伝えたいこと」をベースに、背中を押すというよりはそっと隣にいるような言葉を選んで歌詞を書きました。聴いてくださる皆さんにとって、この曲や僕との距離感がそうであってほしいなと思っています。

――歌声もすごく優しくて、歌詞の優しさと相まって、より隣に寄り添うような楽曲だなと思いました。

千葉:
本当ですか!? 声優の仕事をしていると「優しい声」と言われることが少ないので、そう言っていただけて安心しました(笑)。

Blessing」のミュージックビデオ Short ver.を発表した時、いろんな方に「前向きな歌詞ですね」と言ってもらえたんです。そう言われること自体はすごく嬉しいのですが、 実はよく聴くとあまり前向きなことは言っていなくて。例えば、サビの<未来へと手を引く優しい言葉が もうこの世界にはありふれてるけど>という歌詞。

100人中100人が「この言葉で元気が出る!」「この言葉に支えられている」と思える言葉ってなかなかないですし、多くの人が「元気が出る!」と思うワードが正しいとされがちだけど刺さらなかった人はすごく疎外感を覚える。だから、「疎外感をできるだけ排除した言葉で、1人でも多く元気になれる歌詞を書きたい」というのはとてもこだわりました

――作詞曲以外の楽曲のこだわりポイントもお伺いしていきたいのですが、EP2曲目の「Hi-Five!」は作詞曲とガラッとイメージが変わりますよね。アニメのオープニングテーマのようなキャッチーさを感じました。

千葉:
何かのオープニングで使ってほしいですね(笑)。「Hi-Five!」にはハイタッチという意味があるので、曲調的には“元気さ”や “楽しさ”にフォーカスしている曲です。

ライブでやることを見据えて制作した曲だったのですが、イヤホンで聴いても「いいな」と思えたり、ライブに行った時のように「 元気が出るな」と思えたりする曲がほしいなと。なので、街を歩いた靴の音、手拍子をした手の感触……そういう感覚を持ち帰ってほしいというコンセプトで制作しました。

――まさにライブで聴きたい曲だなと思いました。みんなで一緒にクラップしているところがイメージできます。

千葉:
だけど、歌詞的には“色男”のようなことを言っているんです。「自分、カッコいいこと言っている」
と自覚を持って歌っている人のイメージですね。

一方で、歌詞にある<爽快な朝も饒舌な夜も大丈夫 ここにいるよ><「出会えてよかった」 そんな台詞そっと 心で呟き 噛みしめるそのたび あふれ出してくる 願い込めて 今>とかは、照れくささを感じながら歌っている感じを残しています。

最初は、ただただ「パッショナブルでカッコいい曲」というイメージだったのですが、ギターなどの楽器を歌に合わせて収録したものを聴いてみると、EPの5曲の中では言葉だけじゃなく存在そのものが心強いと思える曲になりました。作業が進むごとに、どんどんいい曲になっていった気がします。

――また、3曲目の「感情論」も1、2曲目とは雰囲気がかなり異なり、すごくオシャレな印象を抱きました

千葉:
そうなんです! 最初は別のコンセプトで集めていただいた曲のために提出されたものだったのですが、「この曲は絶対に使いたい!」「フルで曲をつくってほしい!」と、ワンコーラスのデモからコンセプトに合わせて歌詞やサビを大幅に変えていただきました。

もともとはもっと打ち込みっぽい音だったのですが、EP全体を通してバンドサウンドに統一したかったので、その路線に変更いただいています。なので、歌い方も感情的になりすぎず歌っていますね。歌い方がシンプルな代わりに、オケがお芝居してくれているように感じています。

また、僕から「ラップをやりたい」とお伝えして、挑戦させてもらいました。千葉翔也がEDM的な曲を歌うとこういう世界観になります」というイメージの曲ですね。ソロアーティストだからこそ生まれた曲だと思います。

――最後に、4曲目の「WISH」。最初はギターのシンプルな音色から始まりますが、徐々に音数が増えて盛り上がっていくのが印象的な1曲です。

千葉:
「WISH」も集めていただいた曲から選ばせていただいたのですが、もともと「アコースティックな曲」「日々笑っていられたらそれでいい」というコンセプトで制作を進めたんですね。

そしたら、作曲・編曲を担当した小野(貴光)さんが、アコースティックにとどまらない本気の楽曲を作ってくださいました。大きいことを伝える歌詞ではないけど、小野さんの曲で壮大に伝えられる曲になったと思います。

バラードでもなく弾き語り曲でもない、バンドサウンドに乗せて些細な思いを届ける。すごくコンセプチュアルに仕上がっていて、僕らが思い描いていたEPの幅を、 いい意味で広げてくれた曲です。サビ前に楽器だけの長いパートがあるのですが、詞がなくても曲で思いが伝わるところが、僕はすごく好きです。

――バンドサウンドが軸にありながらも、それぞれが全く違う印象の楽曲なのがおもしろいです。

千葉:
歌い方も5曲全て違う声で歌うのではなく、 千葉翔也として素直に歌った表現の中から制作チームが曲に合わせた表現を提案してくれてブラッシュアップしていきました。だからこそ、より曲の違いが分かるようになっているのかもしれません。

千葉翔也『Blessing』初回限定盤

千葉翔也1st EP『Blessing初回限定盤ジャケット

――EP全体をバンドサウンドにしたのは、バンドがお好きだからというのもあるんですか?

千葉:
はい。学生時代からJanne Da Arcなどを聴いてきました。バンドってカッコいいじゃないですか。「カッコいいは正義!」と思っているので(笑)、ずっとバンドが好きです。また、制作してくださったスタッフの皆さんもバンド好きが多かったのも影響していると思います。

――素敵なお話をありがとうございました! それでは最後に、千葉さんにとって“沼”とはどのような存在ですか?

千葉:
前向きに、元気になれる存在です。お笑いに限らずエンターテインメント全般ですが、その人が持っている可能性を最大限に生かしているものを見ることがすごく好きなんです。

また、芸人さんやアーティストの方たちのライブを見ると、「自分の持っている能力や可能性を100%しっかり活かせているかな?」と自問自答させてくれる存在でもあります。

(執筆:羽賀こはく、取材&編集:阿部裕華)

1st EP『Blessing』リリース情報

2024年1月17日リリース

初回限定盤(CD+M-CARD)】
品番:KICS-94133
定価:¥3,630(税込)
スリーブケース仕様 / 2枚組フォトカード封入(3種ランダム / 2枚の対は同じペア)

<CD>
・表題曲「Blessing」含む全5曲収録
・「Blessing」作詞:千葉翔也 作曲・編曲:加藤祐平

<M-CARD> ※初回限定盤のみ
・「BlessingMusic Video
・1st EP「Blessing」MAKING 収録予定
※MAKINGはレコーディングやジャケット撮影、Music Videoへの密着を予定しています
※M-CARDは動画コンテンツをスマホ/タブレット/パソコンなどでダウンロードしてお楽しみ頂けるカードです
※ダウンロード有効期限は2026年1月17日まで。

【通常盤(CD only)】
品番:KICS-4133
定価:¥2,530(税込)
※2枚組フォトカード封入(3種ランダム / 2枚の対は同じペア)
※2枚組フォトカードの絵柄は初回限定盤と同様になります

<CD>
・表題曲「Blessing」含む全5曲収録
・「Blessing」作詞:千葉翔也 作曲・編曲:加藤祐平

千葉翔也PROFILE

千葉翔也(ちば・しょうや)
1995年8月29日生まれ、東京都出身。B型。

千葉翔也 アーティストページ:https://chibashoya.com/
千葉翔也 公式X(旧:Twitter)https://x.com/Shoya_Chiba
千葉翔也 アーティスト公式X(旧:Twitter)https://x.com/ShoyaChibaMusic
千葉翔也 公式Instagram:https://www.instagram.com/shoya_chiba_official/
千葉翔也 公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@ChibaShoya_Official