12月22日よりNetflixで配信中のオリジナルドラマシリーズ「京城クリーチャー」が、世界中で熱い支持を得て好評だ。公開から3日後の12月27日NetflixオフィシャルのTOP10によれば、グローバルTOP10(非英語)部門の3位を記録。韓国1位をはじめ、シンガポール、タイ、台湾、インドフィリピンなど計20の国や地域のTOP10にランクインした。

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■混乱の時代を生き抜くために信念を隠す静かな〝ヒーロー〟を熱演した「京城クリーチャー」

「京城クリーチャー」は、1945年春を迎えつつある京城(日本統治下のソウル)が舞台だ。巷で有名な質屋・金鈺(きんぎょく)堂を営む若社長テサン(パク・ソジュン)は、日本人の警務官・石川(キム・ドヒョン)から、失踪した愛人明子(ジウ)を探すよう命ぜられる。見つけ出せなければ金鈺堂も財産も全て取り上げ、前線に送ると脅されたテサンは、人探しを生業とする“トドゥクン”のチェオク(ハン・ソヒ)に明子の捜索の手助けを依頼。チェオクは交換条件として、10年前に行方不明になった母と、母の消息を知る日本人画家幸本(ウ・ジヒョン)を探してくれるようテサンに頼む。その頃、日本政府が管轄する甕城病院では、強制的に連行された韓国人に対し生体実験を繰り返し、おぞましい怪物を作り出そうとしていた。

海外メディアは「没入感に優れ、幾重にも積もったミステリーを解いてみたい」(The Guardian)、「歴史、ロマンス、ミステリー、SF、怪物を中毒性あふれるように混合し、途方もないヒット作になるほど優れている」(CNN)などと好評を伝えた。

本作で生き別れた母を探し続け、のちに想像もしなかったむごい事実に直面するチェオクを熱演するハン・ソヒもさることながら、自分自身も傷つきながら共闘するテサン役のパク・ソジュンの存在感も魅力的だ。

パク・ソジュン演じるテサンは、洗練されたスーツを身にまとい、日本統治下の京城でよく見られたという“モダンボーイ”だ。一方、高級品ばかりを扱って私服を肥やし、日本人相手にも商売をする姿は、日本軍の横暴と差別にあえぐ大衆から反感も買っている。享楽的なテサンは一見すると、チェオクはもちろん、独立軍として密かに活動する親友ジュンテク(ウィ・ハジュン)とはかけ離れたキャラクターだ。

しかし、彼にはもっと複雑な内面がある。日本軍の暴力で母を亡くし天涯孤独になったテサンは、「生きろ」という母の遺言どおり、生き抜くためにしぶとく立ち回ってきた。それでも、人間としての誇りがないわけではない。チェオクと協力し誘拐された民衆を助け出すシーンで、テサンは彼らを「逃げるのではなく、帰るのだから」と励ます。そのセリフには、朝鮮の地は本来は誰のものなのかが暗に示されていて、静かな力強さがある。

さらに目を引くのが、チェオクを演じるハン・ソヒとのケミストリーだ。怪物の正体を知りショックで慟哭するチェオクを、いたわるように抱き寄せるテサン。「“大丈夫?”とは聞きません。大丈夫なはずないから。それでも、元気を出して」とキャラメルを差し出す手つきには、男女の恋愛よりももっと広い、人間に対する慈しみを感じる。ジュンテクはテサンのことを「薄情なふりをしているが、僕を理解し支えようとしている」と、信頼感を口にする。テサンはもちろん、ドラマの主役で“ヒーロー”でもあるが、彼が協力者という立場で居続けることで、孤高で悲しみを背負った英雄としてチェオクの姿が光っている。パク・ソジュンがハン・ソヒの演技を受けることで完成する関係性が深い。

■観客が共感するキャラクターを好演した『コンクリートユートピア

どんな俳優も、各々光り輝くような個性と才能を持ち合わせている。おそらく誰もが、出演作ではその魅力を余すことなく発揮したいと思うだろう。だからこそ、共演することで相手役を輝かせる俳優というのは稀有だと言えるだろう。

俺様御曹司を一切恥じらうことなく演じきったことで、相手役のパク・ミニョンの可愛らしさを際立たせた「キム秘書はいったい、なぜ?」や、IUのコメディセンスを発見させた『ドリーム 〜狙え、人生逆転ゴール!〜』(22)など、パク・ソジュンは、相手の性格や反応、表現を引き出すような“受け”の演技に長けている。自分自身が前に出ることなく“受け”に徹することで、共演者が演じるキャラクターのチャームポイントはもちろん、悲壮さや、恐ろしい野望を引き立たせる。それが俳優パク・ソジュンの本質的魅力だ。

世界を襲った大災害で壊滅的な打撃を受けたソウルを舞台にしたディザスタームービーコンクリートユートピア』(公開中)で、パク・ソジュンは住民の一人ミンソンを演じている。

ほとんどの建物が倒壊するなか、唯一崩落を逃れたファングンアパートには居住者以外の生存者たちが外から押し寄せ、治安が悪化していた。危機感を抱いた住民たちは、マンション内の統制のためにリーダーを選び、外部と遮断することを決定。抜擢されたのが、中年男性ヨンタク(イ・ビョンホン)だった。アパートの一室が放火される事件が起きた時、危険を顧みず消火作業を行った勇敢さで皆の信頼を得ていたのだ。強いリーダーシップを発揮するヨンタクのおかげで住民たちは安心した生活を取り戻したかに見えたが、彼の狂気的な一面にあおられるように、徐々に争いが勃発していく。

イ・ビョンホンの凄みある怪演に目を奪われるが、ミンソンを演じるパク・ソジュンの存在感もかなり余韻を残す。誠実な性格のミンソンは、ある過去のせいで罪悪感を背負っている。そんな彼が、リーダーシップのあるヨンタクに心酔するのは理解できるし、ヨンタクに防衛隊長として指名されたことに誇らしさを感じるのも無理はない。そして人間は、自分が信じたものを疑いたくはない。こうしてミンソンは、ヨンタクに促されるまま行動がエスカレートしていく。ミンソンの妻のミョンファ(パク・ボヨン)が、看護師という職業倫理と、人としての信念で動く姿とは対照的だ。

もしも自分がファングンアパートの住民で、ヨンタクのようにカリスマティックなリーダーを目の当たりにしたら、ミンソンとは違う行動を取れるだろうか? そんな重い問いを突きつけられる人物だった。優しくて、決して悪人ではないのにもかかわらず、もろいからこそ強い誰かにすがり、流されるように愚かな行為に加担していく。パク・ソジュンは、ビジュアルやオーラを含め持ち前の輝きを封印し、小市民のミンソンと完璧にシンクロした。彼が役に没入することで、観客はこの最も現実的なキャラクターに自らを置き換えて映画を見届けることになる。

■〝受け〟の演技の上手さは信頼関係の証。俳優パク・ソジュンの魅力とは

パラサイト 半地下の家族』(19)に、ギウ(チェ・ウシク)の友人で名門大学に通う青年ミニョンとして登場する。パク家の娘ダヘ(チョン・ジソ)とは家庭教師と教え子の関係だったが、好意を持っている。留学で家庭教師を辞めなければならないため、ダヘに手を出さない後任者としてギウを推す。ポン・ジュノ監督によれば、パク・ソジュンの特別出演は“ウガファミリー”のチェ・ウシクとのフレンドシップがきっかけだったそうだ。「実際に親友だから、そのムードを映画にも持ち込みたかった。2人はリラックスして演技してくれて、シナリオの設定を見せるのにちょうど良かった。(見た目の)フィジカル的な違いから出る雰囲気も良かった。パク・ソジュンは映画の中で金持ちとして出てくるので、別の世界から来た人として見てほしかった」と、息ピッタリだった2人に称賛を送っている。

もちろん、世界的な巨匠のポン・ジュノ監督が、単純に出演陣との仲の良さを買ってパク・ソジュンを特別にキャスティングしたわけではない。スーパーマーケットの前で焼酎を飲みながら、「ダヘを頼む」とギウに伝える。富をもたらす置物の山水景石をパク家にプレゼントする。好青年だが恵まれているがゆえに鼻持ちのならないミニョンの性格が、このギウとの会話やパク家とのやり取りの中に薄ら透けている。短いシーンの中に映画の重要な要素、“持つ者”が“持たざる者”へ取る“良かれと思っての行動”の中に潜む無意識な蔑視が暗示されているのだ。

士官候補生の孫で海外留学を控えている、生まれも育ちも恵まれていて余裕のあるミニョンと、異臭漂う半地下で、甲斐性のない父ら家族4人ひしめき合って暮らすギウ。結局ギウはダヘと恋仲になり、“持つ者”ミニョンから奪う痛快さを表現した。大雨の日の階段シーンなど、ポン・ジュノ監督はこの映画の中にいくつもの暗喩や象徴を仕込んでいる。パク・ソジュンの演じたミニョンもまた、映画を駆動させる見事な歯車だったのだ。

パク・ソジュン、チェ・ウシク、パク・ヒョンシクという俳優陣に加え、BTSのV、ヒップホップアーティストのPeakboyの5人は、芸能界の仲良しグループ“ウガファミリー”としてよく知られている。イ・ソジンを中心にした芸能人が食堂を経営するバラエティ番組「ソジンの家」には、“ウガファミリー”からパク・ソジュン、チェ・ウシク、Vが参加していて、3人のおっとりした天然っぽさを見せるチェ・ウシク、自由なマンネ(末っ子)のVのバランスを取りながら若手をまとめている存在感が好ましい。

ウガファミリーのメンバーはソジュンを「精神的に頼っている“父親”のような存在」だと話す。5人の絆が垣間見える人物評であると同時に、彼が役者として見せる“受け”の演技もまた、相手の俳優との厚い信頼関係に呼応してこそできるのだと思う。共演者が頼れる演技者。それが俳優パク・ソジュンの魅力なのではないだろうか。

文/荒井 南

主演でも助演でも輝く俳優パク・ソジュンの魅力に迫る!/[c]Netflix