僕のヒーローアカデミア The“Ultra”Stage」や「Dr.STONE THE STAGE~SCIENCE WORLD~」など人気原作のステージに出演し、強烈な印象を残す活躍を見せている大隅勇太。1月19日(金)からは、楪=クリスチアン=リオン役を務める新ミュージカルスタミュ」への出演も控えている。そこで、最新作への意気込みに加え、これまでのキャリアを振り返りながら、芸能界を志したきっかけや、作品との出合いから見えてきた将来のビジョンについて語ってもらった。

【写真】1月19日(金)から上演される新ミュージカル「スタミュ」へ出演する大隅勇太

サッカー少年から未経験の芸能界へ

――大隅さんは地元の北海道にいた頃から芸能活動をされていましたが、この世界を目指そうと思ったのはなぜですか?

小学校1年生から高校3年生までの12年間、本気でサッカーをやっていたんです。高校もサッカーの特待生で入ったほどで。でも、高校卒業を機にサッカーを辞めてしまって、自分の中が空っぽになったように感じていました。他に熱中できるものを探していたときに、子供の頃から、バラエティ番組やドラマを観るのが好きだったことを思い出して、芸能界を目指してみようと思ったんです。

――そこから地元の養成所に通い出したんですね。

最初は札幌で有名なモデル事務所に入って仕事をしていたんですが、なんとなくここではないなと感じて、その後、AAAの西島隆弘さんやw-inds.の千葉涼平さん、緒方龍一さんが所属していたスクールに通いました。その子の生徒はほとんどが子供だったんですが、当時19歳くらいの僕は歌もダンスも未経験だったので、小さな子たちに「どうしてお兄ちゃん踊れないの?」といじられていましたね(笑)。

――未経験でこの世界に飛び込んだことに関して、不安などは感じていなかったのでしょうか?

今はできなくても、いずれできるだろう、形になるだろうという自信はありました。僕は小さい頃から、自分は運がよくて何事もどうにかできると思っているところがあって。もちろん落ちこむこともありますけど、まずはやってみよう、失敗してもいいじゃんというポジティブ思考なんです。

――くじけそうになった経験は、まったくないですか?

デビューまでに、企画が白紙になったり、所属グループを転々とすることになったり、すごく時間がかかっている方だと思うんです。それで、他の人と比べて「あの人はスムーズに進んでいるのに、自分は時間がかかっているな」と落ちこんだことはありました。

ただ、状況が変化するたびに、ステップアップしている実感もあったんです。準備していた企画が白紙になった時も、そのあとに受けたオーディションでミュージカル『テニスの王子様』柳生比呂士役が決まりましたし。他の人より進むスピードは遅いかもしれないけど、確実に階段は上っていると思えていたので、落ちこんでも続けることができました。

■“テニミュ”の先輩俳優の背中が道標

――2.5次元作品はお芝居の他にも歌やダンスを求められることが多いと思います。大隅さんは特に歌がお上手な印象があるのですが、歌の仕事に対してはどのように感じていますか?

ミュージカル界では40代、50代の俳優さんたちが活躍されていますし、僕は今20代なので、30代、40代になる頃にはそこを目指したいと思っています。この先、「大隅勇太はやっぱりミュージカル界に行くんだね」と思われる役者になりたくて努力をしていますし、周囲にそう思ってもらえる見せ方というのも大事だと考えているので、セルフプロデュースは意識しています。

――いつかミュージカル界に、という思いはいつ頃に芽生えたのでしょう。

テニミュ”に出演した頃です。“テニミュ”に出ていた先輩たちがいろいろなジャンルでお仕事をされているのを見て、ミュージカルもひとつの道だと思ったんです。そうやって自分で将来について考えないと戦っていけない世界ですし、共演する方たちもすばらしい方ばかりなので負けていられないなと感じています。

■日常ではできない表現ができた役との出合い

――俳優としての仕事は、どういうところにやりがいや魅力を感じていますか?

素の状態だとできないことを、役を通して振り切って表現できることが、この仕事の魅力だと思っています。

2023年10月公演の「青山オペレッタ THE STAGE 〜ストーリア・パラッレーラ・ウノ〜」では、僕の演じる櫻井ノエが劇中劇の主演だったんです。ギリシャ神話を題材にしたストーリーで、ノエ演じるオルペウスは最愛の人と出会って喜んだり、その人を亡くして泣き叫んだりと感情の幅が大きい役でした。その役を演じているとき、すごく気持ちよかったんです。

――具体的にはどういったことでしょうか。

日常生活で涙が出るぐらい悲しいことってなかなか経験したことがないんですけど、でも、本当は泣き叫んでみることも経験してみたかったというか。僕がやりたくてもできなかったことを、役を通してできたんですよね。

もちろん、役の心情を無視して勝手に表現する訳ではなく、役に合わせて考えています。なので、“青オペ”では櫻井ノエが劇中劇オルペウスという役柄を演じるという複雑な状況だったからこそ、さまざまな表現にチャレンジすることができたんだと思います。

■生活リズムを整えるために始めた料理が趣味に

――最新作としては、新ミュージカルスタミュ」が1月19日(金)からスタートしますが、稽古場の雰囲気はいかがですか?

スタミュミュ”では、初めてキャストの中で最年長という立場を経験しています。 今回の“スタミュミュ”は舞台経験があまりない子たちもいて、だからこそ積極的に話しかけたり、コミュニケーションをとるようにしています。

芝居の経験は浅くても、踊ったらキラキラ輝く、歌ったらすごく表情がよくなる子がたくさんいて刺激を受けますし、後輩たちに舞台を好きになってもらえるように、この作品を通して舞台の魅力や楽しさを伝えることができたらいいなと思いますね。

――では、プライベートの時間の過ごし方についても教えてください。

基本的には休みの日でも稽古動画や台本を見たりと、仕事のことを考えています。ただ、趣味を増やそうと努力をしていて、フットサルに行ってみたり、料理にチャレンジしたりと、人らしい生活、ていねいな暮らしみたいなものを心がけています。

――意識をしてやらないと生活リズムが狂ってしまう、ということでしょうか?

そうなんですよ。もともと料理をはじめたのも、変な時間に寝るのを防ぐためなんです。疲れて帰ってうっかりそのまま寝ると、夜中に目が覚めて生活リズムがぐちゃぐちゃになってしまうので。帰宅したらすぐ料理を作る、そうするとお風呂もスムーズに入れて、ちゃんとした時間に眠ることができる。そういう生活を始めてみたら意外と楽しくて、今では料理をすることがリフレッシュになっています。

◆撮影=八木英里奈/取材・文=榎本麻紀恵/ヘア&メーク=田中宏昌/スタイリスト=齋藤良介

大隅勇太/撮影=八木英里奈