木村拓哉ら世界各国の豪華出演者が集結したHuluオリジナルドラマ「THE SWARM/ザ・スウォーム」。“宇宙よりも謎が深い”と言われる深海を舞台に、世界の海で起きている不可解な現象を追うSFサスペンスだ。第1話では各地の海で少しずつ観測される異変の兆候や、人類に危機が迫っているような描写が描かれた。本記事では、考察を踏まえながら同話を振り返る。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】船のすぐそばに浮かんだクジラが伝える危機とは

■「ザ・スウォーム」とは

同作は言わずと知れたファンタジー超大作ゲーム・オブ・スローンズ」のプロデューサー、フランク・ドルジャーが手がける海洋SFサスペンス。原作である「深海のYrr」の著者フランク・シェッツィングをエグゼクティブ・プロデューサーに迎え、小説執筆当時の2004年からさらにアップデートされた“起こり得る未来”を映像化した。

ドイツ最大級の公共放送局 ZDF、フランス国営放送局グループ France Televisions、イタリア国営放送局の国際テレビサービス RAI ITALIAオーストリア公共放送局 ORF、スイス公共放送局 SRF、北欧を代表するメディアエンターテインメント企業 Nordic Entertainment Group、そしてオンライン動画配信サービスHulu Japanといった国をまたぐ国際プロジェクトとして発足した同作。

出演者は「ラスト・リベンジ」「凍てつく楽園」で知られるアレクサンダーカリムを筆頭に、セシル・ドゥ・フランス、レオニー・ベネシュ、ジョシュア・オジック、バルバラ・スコヴァ、シャロンダンカン=ブルースター、そして日本からは木村拓哉が参戦する。

■人を襲うシャチ、海底にあるはずの物質…不穏な第1話

舞台は南太平洋ペルーに広がるウアンチャコ海岸。その日もいつもどおり、漁師が神に祈りを捧げてから漁に出ていく。普段と変わらず同業と顔を合わせ、同じようにワラでできたカヌーを使って沖合へ。しかし網を投げて引き上げようとしたところ、強烈な抵抗が返ってくる。思わずバランスを崩し、網を手放してしまう漁師。

だが網は大事な商売道具だ。泳ぎも堪能な漁師はすぐさま潜っていき、岩に引っかかってしまった網を取るためにナイフを取り出す。しかし作業を続けていると、明るかった海に急な影が落ちてきた。なにごとかと顔を上げた漁師が目にしたのは、異常な量の魚群。渦巻く魚群に囲まれた漁師が水面に上がってくることはなかった。

その後も次々に、各地で海に関する不思議な現象が観測される。死んだシャチが海岸に打ち上げられという報せを聞いたレオン・アナワク(ジョシュア・オジック)は、「こいつを知ってる」と語った。死んでから2~3時間、北西からの風で運ばれてきたことなど、知識と経験で暴いていくレオン。だが海の捕食者であるシャチが傷だらけで死んでしまった理由だけは、推測ができない。

近くの漁村で話を聞いてみても、シャチが狂暴化して船を襲ったという異常事態を耳にするレオン。もちろん、魚欲しさにシャチを刺激する漁師などいない。なぜ急にシャチが異常行動に出たのか、誰もわからないままだった。

一方、シェトランド諸島で海洋研究に従事するシャーロット・“チャーリー”・ワグナー(レオニー・ベネシュ)も海の異常を肌で感じることに。無人潜水機が突如として動かなくなり、水面にメタンハイドレートのかけらを発見したのだ。メタンハイドレートは通常、深海に存在する。しかもたまたま割れたものが浮かんできたのではなく、かけらは大量に浮かんでいた。所属する海洋生物研究所の厳格な教授カタリーナ・レーマン(バルバラ・スコヴァ)も注目しているようで、新たな観測方法の指示が飛ぶ。

海は、明らかにいつもとは違う表情を見せている。

■ついに起きた悲劇

小さな異常が積み重なり、専門家たちは言いようのない胸騒ぎを感じていた。レオンもその1人だったが、ある日ホエール・ウォッチングを営む知り合いの女性に“沿岸のあちこちでクジラが目撃された”という報せが。同じころクジラを観測したレオンが連絡を取ると、「至る所?同時に?」といぶかしむレオンの心配をよそに、ホエール・ウォッチングが開催されるという。

念のためと船で沖合へ出て、集音器で異常がないかクジラの声に耳を傾けるレオン。しかし間もなく彼の船のそばに、大きなクジラが身を寄せる。驚くレオンをよそにクジラはぴたりと動きを止めて、静かな目でレオンを見つめた。やがて離れていったクジラの奇行に戸惑いながらも、改めて集音器に集中するレオン。すると彼の耳に、異常なほど多くのシャチの声が聞こえてきた。

肉眼でも水面を跳ねるシャチの姿を捉えたレオン。その向かう先には、ホエール・ウォッチングの船が。嫌な予感に身を震わせたレオンが船の無線へ呼びかけるが、操舵士は甲板へ出ていた。ちょうど、クジラが姿を表したところだったからだ。

クジラは船の間近で水面に飛び出し、海水のシャワーを観光客に浴びせる。大迫力の光景が見れたと喜ぶ客の笑顔に、経営者の女性も安堵の表情。しかし次の瞬間、クジラが飛び出したのはちょうど船のド真ん中に着地するコースだった。

客の悲鳴とともに、船を真っ二つに割るクジラ。海へ投げ出された客のもとへ、間もなくシャチの大群がやってくるのが見える。なんとかたどり着いたレオンが客を自分の船へ引き上げるが、1人また1人と海のなかへ引きずり込まれていく。レオンは必死に知り合いの女性へ手を伸ばしたが、触れるほんの間際、「レオン!」という言葉を残して女性は海の底へ連れ去られてしまう。

■見える恐怖と見えない恐怖

人間が襲われるストーリーでは、“襲ってくるモンスターがどう人間を傷つけたのか”が描写されることが多いイメージだ。だからこそ、「スウォーム」ではパニックシーンの映像に違和感がある。

シャチが口を開けて襲い来るカットや、沈みゆく人の背後に大きな影が見えることから、ラストのシーンではシャチも攻撃に加わっていたのは間違いないだろう。しかし一方で、明確にシャチが人へ噛みついた描写はない。血で海が濁ることもないし、シャチが人をくわえて泳ぐシーンも、なぜかワンカットすら存在しないのだ。

襲われた人は悲鳴を残して突如水面から消え、一部すら浮き上がってこない。そのことから、まさかクジラシャチに隠れた“何か”がいるのではないか…と想像できた。冒頭、レオンが見知っているシャチは何かに殺されていたが、シャチシャチを襲ったのだろうか。もしかしたらあのシャチは、クジラシャチに隠れて人を襲う何かに殺されてしまったのかもしれない。

先が見通せない、深く暗い海。そこに潜む何かがいるとしたら、人類は今後どう立ち向かっていくのだろうか…。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

木村拓哉も出演する「THE SWARM/ザ・スウォーム」海で次々に起きる不穏な異常/(C)Hulu Japan