厚生労働省の調査によると、日本人の平均給与は500万円弱。そんな平均的な日本人は、将来、いくら年金をもらえるのでしょうか。みていきましょう。

月31万円、年496万円…将来受け取れる「年金額」は?

日本銀行が3ヵ月に1度のペースで行っている『生活意識に関するアンケート調査(第96回<2023年12月調査>)』によると、「暮らし向きにゆとりが出てきた」は3.8%で、前回調査から0.3ポイントダウン。暮らし向きにゆとりがなくなってきた」との差はマイナス52.2%でした。

また物価に対する実感として「かなり上がった」は62.8%、「少し上がった」が31.7%。この1年の推移を見ていくと「95.0%」→「95.5%」→「95.5%」→「94.5%」と、いまだに出口の見えない物価高に苦しい思いをする一般庶民の実態が見えてきます。

なかでも苦しい思いをしているのが、収入を得る手段が限られる高齢者。厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査』によると、収入のすべてが公的年金という世帯は、高齢者世帯の44.0%。8割を超える世帯を含めると6割に達します。物価上昇分だけ年金受給額も上昇するということはなく、高齢者世帯は非常にインフレに弱いといえます。

しかし現役を引退し、「年金+貯蓄の取り崩し」が基本となる高齢者。今回のようなインフレに備えるには現役時代にいかに資産を築くかしか方法はなく、資産を築くことができず、十分な年金がもらえない、となると、一生働き続けるしかありません。やはり「いくら年金がもらえるか」は、老後を見据えて最大の関心ごとといえるでしょう。

2階建て構造が基本の日本の公的年金。将来、いくらの年金がもらえるかは、国民年金であれば「年金額×(保険料の納付月数÷480ヵ月)」、厚生年金は加入期間が2003年3月までは①「平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数」、加入期間2003年4月以降は②「平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」で計算できます。

日本人(正社員+非正規社員)の平均給与(平均年齢43.7歳)は、月収で31.1万円、賞与も含めた年収で496.5万円です。仮に20歳から60歳まで、ずっと平均給与という人がいたとしましょう。生涯年収は1億9,892.2万円となり、65歳からもらえる厚生年金は月8.9万円ほど。国民年金の受給額は月額6万6,250円令和5年度)なので、月15.6万円ほどの受給額です。

ひとつ気をつけたいのが、年金は雑所得。課税の対象です。実際の受取額は、額面の85~90%とみておくといいでしょう。つまり、平均的な日本人の年金手取り額は月13.2万~14.0万円ほどになる計算です。

正社員/非正規社員別「65歳から受け取れる年金額」

同じように20歳から60歳まで、ずっと正社員だった場合、ずっと非正規社員だった場合の年金額を考えてみましょう。あくまでも単純計算ではありますが、平均的なサラリーマンであれば、月17.5万円。手取りにして月15万〜16万円程度になりそう。一方でずっと非正規社員だった場合は、男性で月11万円前後、これが毎月の生活費のベースになります。

【平均的な「年金額」の目安】

正社員

男性:月17.5万円(手取り月14.9万~15.8万円)

女性:月14.9万円(手取り月12.7万~13.4万円)

◆非正規社員

男性:月12.7万円(手取り月10.8万~11.5万円)

女性:月11.4万円(手取り月9.7万~10.3万円)

平均的な日本人で年金手取り額は14万円以下…年金だけで暮らすことは可能?

総務省令和4年 家計調査 家計収支編』によると、高齢者の1ヵ月の平均支出額は月14万円程度。平均的なサラリーマンであれば、年金だけでギリギリ暮らしていける水準。日本人の平均的な年金手取り額では、毎月貯蓄の取り崩しが必要になる……これが日本の高齢者の実情です。

――たったこれだけか、少ないなあ……

将来、受け取れるだろう年金額に衝撃を受けた人も多いのではないでしょうか。もちろん、実際に年金だけで足りるかどうかは、ライフスタイルや、持ち家か賃貸かなど住まいのカタチにもよるので、一概にいうことはできません。ただ前出の『国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯の48.3%が「生活が苦しい」、45.1%が「普通」と回答しています。「年金だけで悠々自適な老後」には程遠い……これが日本の高齢者の実態です。

さらに今後、年金財政は厳しくなり、2040年代には年金2割目減りは確実。そう考えると、年金への依存度を減らし自助努力に頼ることが、これから老後を迎える現役世代にとって、一番の老後対策といえそうです。

[関連資料]

日本銀行『生活意識に関するアンケート調査(第96回<2023年12月調査>)』

厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査』

総務省『令和4年 家計調査 家計収支編』