タクシー運転士不足が解消気味……と思ったらトラックからの転職組が多数! 輸送業界全体でみればドライバー不足問題は山積み

この記事をまとめると

■ライドシェアを解禁する動きが最近目立っている

■タクシーが一時期足りないと言われていたが最近は落ち着いてきた

2024年問題の影響もあり、トラックドライバーがタクシー業界に転職しつつある

タクシーが足りない時期は一旦落ち着いたか

 いま政府なども含め、日本国内でのライドシェアサービス導入について活発な議論が行われている。動きを見ていると、すでに導入ありきで進んでいるようにも見える。

 導入の背景にあるのがタクシーの稼働台数不足である。新型コロナウイルス感染拡大に伴い外出自粛が要請され、タクシー業界も開店休業状態となった。それにより乗務員の離職が加速し、新型コロナウイルス感染拡大が落ち着いて再び街に人が戻ってきても、タクシー運転士がほとんど戻ることもなく、多くのタクシー事業者の車庫には結構な台数のタクシーが稼働しないまま置かれることとなり、需要と供給のバランスが崩れてしまった。

2024年問題の影響でトラックドライバーの転職が加速していた

 しかし、東京都内、とくに都心部を筆者が歩いて感じるのは、ここ最近は街なかで空車のタクシーも目立つようになり、一時期の深刻な稼働台数不足によるタクシー争奪戦のような様子も多少は落ち着きを見せているようにも感じている。

 いまはどこも働き手不足で苦労している。そのため世の中には、タクシー運転士より条件の良い求人が溢れているようにも見えるが、タクシー乗務員を目指す人が目立っているとは事情通。

「じつはトラック運転士がタクシー運転士に流れているのが、首都圏あたりでは目立っています。理由はさまざまでしょうが、2024年問題の影響は否定できないでしょうね(事情通)」

 2024年から時間外労働の規制強化が行われ、いままで以上に働き手を集めないと仕事がまわらなくなるというのが2024年問題。トラック輸送業界では「いままで運ぶことができた量の荷物が裁ききれなくなるのではないか?」というのが危惧されている。バス業界ではいまよりさらに減便や路線の廃止、タクシーでは慢性的な稼働台数不足が不安視されている。

2024年問題の影響でトラックドライバーの転職が加速していた

 職場環境の改善は好ましいことだが、いままでの時間外労働に従事しても満足のいく収入が得られなかったなか、労働時間が減るのだから従事する人は収入が減ることに不安を覚えるのは自然の流れ。

 一方でタクシーは、いまでは大手事業者を中心にアプリ配車サービスも充実しており、お天気任せとまではいわないものの、自分の経験と勘で博打的にエリアを選んでタクシーを流して営業するというスタイルも影を潜め、以前よりは安定した収入も見込めるようになっている。トラックドライバーからタクシードライバーへの転職はおもにトラックより稼げるという理由が大きいようだと事情通は教えてくれた。

タクシードライバーはトラックよりもメリットが大きい!?

 ほかにも、まさに働き方の違いもあるようだ。トラック輸送といってもさまざまな大きさのトラックや勤務形態があるが、なかには車庫を出たら1週間は自宅に帰ることができないというシフトもあると聞く。

「少々昔の話ですが、大型トラックの運転士からタクシー運転士に転職した人がいたそうです。ある日、帰庫したときにそのドライバーさんが事務所の管理者に『俺は以前トラックを運転していたけど、タクシーは毎日自宅に帰ることができるから気が楽だ、そして自分の腕次第で稼ぐこともできる』と語っていました」、とは元業界関係者。

2024年問題の影響でトラックドライバーの転職が加速していた

 地域によっては、現状タクシー事業者の求人に応募してくる人の4割がトラックドライバーだという話も聞いている。

 タクシー業界は、ここのところ各地で運賃の値上げを行っている。運賃自体を上げるのではなく、初乗り料金は変えずに初乗り距離を縮めたり、爾後(じご)料金(距離加算料金)では加算される距離を縮めたり、迎車回送料金の値上げなどを行っているのだが、そのため“ウハウハ”とはいかないまでも収益改善が進んでいるとも事情通は語ってくれた。

2024年問題の影響でトラックドライバーの転職が加速していた

 タクシー運転士が増えることは歓迎すべきことだが、その運転士の供給元がトラック輸送業界ということになると、貨物、旅客も含め自動車輸送業界内でドライバーの奪い合いを行っているようにも見え、自動車により貨物や旅客輸送の“2024年問題”解決どころか、より事態を深刻化させているようにも見える。

 労働環境の改善も大切だが、その前にはやはり目に見える賃金アップの実現が必要なのではないだろうか。そうしないと、給与での歩合給部分の多いタクシー業界にトラックだけではなく、バスドライバーまで流れてくることになるかもしれない。

2024年問題の影響でトラックドライバーの転職が加速していた

タクシー運転士不足が解消気味……と思ったらトラックからの転職組が多数! 輸送業界全体でみればドライバー不足問題は山積み