●九州・宮崎県郷土料理チキン南蛮。東京では実はなかなか味わえない、本場の“リアルガチ”な本格チキン南蛮を出すお店に行ってきた。

 宮崎県延岡市郷土料理チキン南蛮。大きくとらえれば「ご当地からあげ」の一種と言ってもよいでしょう。ちなみにチキン南蛮が生まれたのは昭和30年代ごろ。延岡市内にあった洋食店『ロンドン』のまかない料理がそのルーツと言われています。当時そこで働いていた2人の料理人がそれぞれ独立してオープンしたのが『おぐら』と『直ちゃん』。そこでメニュー化されたのがチキン南蛮の歴史的スタートなのです。

 さて、そんなチキン南蛮ですが、定食やお弁当としてはもちろんのこと、最近はお酒のアテとして居酒屋さんのメニューで見かけることも増えました。もちろん、カラアゲニストである筆者も大好物です。

地下鉄銀座線・末広町駅の地上出口からすぐのところにある『宮崎チキン南蛮専門 ひむか食堂』。JR秋葉原駅からは徒歩7分
地下鉄銀座線末広町駅の地上出口からすぐのところにある『宮崎チキン南蛮専門 ひむか食堂』。JR秋葉原駅からは徒歩7分

 東京・秋葉原に昨年(2023年)9月にオープンした『宮崎チキン南蛮専門 ひむか食堂』は、その名の通り本場・宮崎のチキン南蛮を味わえます。実はここ、以前、このコラムでもご紹介した『入谷キッチン&バル』(閉店)のオーナー・竹本寛さんが秋葉原で新たに始めたお店。

 宮崎県出身の竹本さんは“チキン南蛮愛”のとても強い方で、本場の味の研究にも熱心です。一体どんなチキン南蛮が味わえるのやら。さっそく実食レポートといきましょう。

チキン南蛮発祥店『おぐら』と『直ちゃん』の味を再現

券売機で食券を購入。チキン南蛮だけで3種類もあるのがスゴい
券売機で食券を購入。チキン南蛮だけで3種類もあるのがスゴい

『ひむか食堂』では、3種類のチキン南蛮定食が用意されています。券売機で食券を購入してオーダーするスタイルですが、写真を見るとどれも美味しそうで迷ってしまいますね。

「本場宮崎チキン南蛮定食・一枚肉」(1390円)は、チキン南蛮発祥店のひとつ『おぐら』(宮崎市)のインスパイア系といったところ。揚げたムネ肉を南蛮酢にくぐらせ、タルタルソースをたっぷりかけた、私たちにもっとも馴染みのあるチキン南蛮です。

「本場宮崎チキン南蛮定食・一枚肉」(ご飯・スープ付きで1390円)。「半身」(980円)もある
「本場宮崎チキン南蛮定食・一枚肉」(ご飯・スープ付きで1390円)。「半身」(980円)もある

 タルタルソースは自家製のマヨネーズをベースに数種類のスパイスゆで卵キュウリニンジン、自家製ピクルス玉ねぎパセリなどを加えて作っているとのこと。ひと口ペロリとなめてみると、さっぱりしていながらもトロリとした舌ざわりがたまらない味わい。

タルタルソースをたっぷりつけて。南蛮酢の香りがふわりと立ち、食欲スイッチがONになりっぱなし
タルタルソースをたっぷりつけて。南蛮酢の香りがふわりと立ち、食欲スイッチがONになりっぱなし

 南蛮酢は13年の歳月をかけて作り出したという、これまたこちらのオリジナル。チキンをひと噛みすると、その香ばしい香りが鼻をくすぐります。ムネ肉とは思えない柔らかい肉。それを包むカリッと感ある衣は南蛮酢を軽く含んでかすかなしっとり感も。そこにタルタルソースが絶妙なアシストをしています。ピクルス玉ねぎなどのプチプチした食感もまた最高!

 このほか、モモ肉を使った「ひむかのチキン南蛮定食・3個」(1250円)も、文句なしのウマさ! 南蛮酢・タルタルソース・衣・肉の一体感が素晴らしい。トロットロの歯ざわりと舌ざわりで、胃袋まで溶けてしまいそう。疲れたときに食べると一気に元気が回復しそうなパワフルな味わいです。

「ひむかのチキン南蛮定食・3個」(1250円)。足りない人は「4個」(1600円)をどうぞ
「ひむかのチキン南蛮定食・3個」(1250円)。足りない人は「4個」(1600円)をどうぞ

『直ちゃん』風のチキン南蛮はタルタルソースなし!

「元祖延岡チキン南蛮定食・一枚肉」(1350円)。「半身」(950円)もあり
「元祖延岡チキン南蛮定食・一枚肉」(1350円)。「半身」(950円)もあり

 そして最後は、発祥店『直ちゃん』(延岡市)の味を可能な限り再現したという「元祖延岡チキン南蛮定食・一枚肉」(1350円)。こちら、なんとタルタルソースなしのタイプ。チキン南蛮というと、どうしてもタルタルのイメージが強いですが、実はこのタイプが元祖と言われています。

実は元祖チキン南蛮はタルタルソースなし。それでもものすごくウマい
実は元祖チキン南蛮タルタルソースなし。それでもものすごくウマい

 このチキン南蛮がこれまた超絶美味しくてビックリ。南蛮酢がほかの2品のものよりもやや濃い印象で、それが衣にしっかりなじみ、ガツンと来る感じ。タルタルソースがなくてもここまで美味しくできるとは! オーナーの竹本さんが以前営んでいた『入谷キッチン&バル』のチキン南蛮も筆者は大好きで何度も食べたのですが、その味よりも格段にレベルアップしています。

まとめ

席はカウンターのみ15席
席はカウンターのみ15席

 しかし東京でここまで美味しい本場の味を体験できる日が来るとは思いませんでした。場所柄、ピークタイムは行列もできていますが、一食の価値アリです。本場のチキン南蛮を味わってみたい人は、ぜひ一度訪れてみてください。

●SHOP INFO

店名:宮崎チキン南蛮専門 ひむか食堂

住:東京都千代田区外神田3-16-13
TEL:03-3525-8664
営:ランチ11:30~15:00
ディナー18:00~20:00
※仕込みがなくなり次第閉店
休:年末年始

●著者プロフィール

松本壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」である大分県中津市。美味しいからあげを求めて東奔西走する「から活=からあげ探索活動」に明け暮れている。

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