購入予定の製品が、実際には販売員の説明とは異なる性能だと分かったら…。購入者からすれば、購入後の楽しみを奪われるだけでなく、購買意欲を弄ばれた不快な気持ちになっても無理はありません。こうしたケースで、誤った説明をした販売員に損害賠償を請求することは可能なのでしょうか。実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、契約の解除や損害賠償の可能性について、石原幸太弁護士に解説していただきました。

契約マンションが説明と違う仕様…。契約解除は可能か?

相談者は竣工予定のマンション購入のため、売買契約書を締結しました。契約当時の営業担当者をAとします。

契約前にAからは「購入するマンションは住宅取得に係る贈与で、条件が有利になる省エネ等住宅に該当する」旨の発言を受けました。これがマンション購入の理由の一つにもなっていました。

その後、営業担当がAからBに変更になります。理由はAの退職です。

相談者は竣工も近づき、入居に関する手続きをしていましたが、Bから「このマンションは省エネ等住宅に該当しない」旨の発言を受けました。

Aから受けていた説明とはまるで異なります。そこで相談者がその旨をBに伝えると、Bから謝罪されました。

契約書や重要事項説明書には、当該マンションが省エネ等住宅に該当するかどうかの記載はありません。従って、相談者としては営業担当の発言から物件が省エネ等住宅に該当するかを判断するしかない状況でした。

省エネ等住宅であることは契約理由の一つだったため、相談者はこの営業担当の誤った情報提供に到底納得できません。

そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の3点について相談しました。

(1)契約解除は可能なのか。

(2)録音やメール等の客観的証拠がないが、法的措置は取れるのか。

(3)誤った情報提供による損害賠償を請求できるのか。

契約を解除することはできない

(1)契約の解除について

相談者の内容をみると、契約書や重要事項説明書には、当該マンションが省エネ等住宅に該当するか否かの記載がない以上、売主が当該マンションを省エネ等住宅にすべき義務を負うと認められる可能性は極めて低いと思われます。したがって、相談者は、債務不履行を理由として契約を解除することはできないと思われます。

しかし、相談者は、当該マンションが省エネ等住宅に該当することが当該マンション購入の理由の一つとなっております。そこで、相談者は、「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」に該当するとして、売買契約を取消すことが考えられます(民法95条1項2号)。

ただし、売買契約を錯誤を理由として取消すためには、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されている必要があります(民法95条2項)。そして錯誤による取消しが認められると、初めから無効であったものとみなされます(民法121条)。

(2)録音やメール等の客観証拠が存在しない場合

上記記載のとおり、錯誤による取消しを訴訟等で主張するためには、「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」に該当すること、「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていること」を証拠に基づいて証明する必要があります。そして、客観証拠は証拠としての価値があり、裁判所も客観証拠を重視します。もっとも、客観証拠が存在しなくとも、尋問等の法廷で発言する証言も証拠となります。

しかし、法廷で発言する証言については、裁判所がその証言の信用性を客観証拠と整合するか否か等の観点から吟味することから、客観証拠が存在しない以上、訴訟等で相談者の主張が認められる可能性は低いと考えられます。

(3)誤った情報提供による損害賠償を請求できるか否か

不動産の売主は、買主に対し、不動産に関する重要な事項について正確な情報を提供して適切に説明すべきであり、誤った情報を提供したり不適切な説明をしたことにより、買主が当該売買契約を締結するか否かの判断を誤らせることがないよう配慮すべき信義則上の義務を負っております。

したがって、当該マンションが省エネ等住宅に該当することが当該売買契約をするにあたって重要な事項に含まれると認められる場合は、上記信義則上の義務違反を理由として、不法行為に基づく損害賠償を請求することができます。

メールやLINE等で証拠化を

訴訟等の法的措置を取るためには、証拠が極めて重要となります。

少額の売買であればともかく、不動産売買等の高額な売買契約では、契約書や重要事項説明書等の客観証拠が存在するのが通常です。そして、裁判所は客観証拠を重視する以上、客観証拠と異なる主張をするためには、それを覆す重要な客観証拠等が必要となります。

したがって、売買契約を締結するにあたって、少しでも疑義が生じた場合は営業担当者に確認すると共に、その内容を証拠化すること、例えば、契約書にその旨明記するよう求める、明記することを拒否された場合は、メールやLINE等で証拠化しておくことが重要です。

石原 幸太

弁護士

(※写真はイメージです/PIXTA)