2023年10月より放送中の『フリースタイル日本統一』(テレビ朝日/ABEMA)。同番組では、全国16地区で活躍するラッパーが3名1組となって、それぞれの地元の威信を賭けてフリースタイルバトルに挑戦。勝利チームは敗退チームから好きなラッパー1名を吸収し、最終的に日本統一を果たすと、その暁として賞金100万円が贈られる。

参考:【写真】遂に現役最強・呂布カルマを初陣に引きずりだす……『フリースタイル日本統一』#14の場面カット

 今回は、1月16日に公開された【#14】のハイライトを振り返っていく。細かなネタバレもあるためご注意いただきたい。

・呂布カルマ、歩歩とのバトルは予想外の判定結果に

 前回の【#13】に引き続き、TEAM東海(呂布カルマ×泰斗a.k.a.裂固×楓×KANDAI)とTEAM京都(ミメイ×POWER WAVE×歩歩×Fuma no KTR)が対戦中。まずは、今回最年少の楓が一戦目を勝利すると、敗退したPOWER WAVEが離れるのを待たず、チームの大黒柱である歩歩が物凄い食い気味でステージに乗り込んできた。そのまま、じゃんけんをせずに先攻を選ぶと、楓に1-4、続くKANDAIに0-5の大差で2連勝を見せつけ、いよいよ“あの強敵”を初陣の場に引きずりだす。現役最強フリースタイラー、呂布カルマ

 今回のオンエアについては、“チーム戦”と“流れ”という言葉をキーワードに振り返りたい。まずは、呂布カルマ v.s. 歩歩のハイライトをご覧いただこう。

呂布カルマ:大声出して走り回って それがおもろいっていうセンスは大学生と一緒かよ

歩歩:こっちFrom関西 吉本新喜劇 俺の方余裕で信じていい

呂布カルマ吉本新喜劇は大阪のもんで お前ら京都の事なんてナメてんぜ/さっき投げ捨てたはずの帽子が戻ってきて それまんまと被っちゃってるお前みてぇな奴 一度捨てたもんはもう二度と手に入れるな 男だろ オメェ情けねぇな

歩歩:物を大切にする 輪廻転生 俺はラップ言葉 韻でセッションしないと/俺は京都のダルシム ヨガファイヤー お前みたいな奴は用がないな

呂布カルマ:歩歩 お前がヨタヨタ歩いてる間に 俺は同い年だけどもっと先に行っちまったぞ/いつまでも歩いてるとお前なんかもう見えやしない

歩歩:俺は道なき道を歩き続けたら 気づいたからこの場にいる

 文字数の関係で割愛したが、歩歩はKANDAI戦にて最後、トレードマークのハットを脱ぎ捨て、ブーメランのようにフロアに投げ捨てていた。呂布カルマが2ターン目で指摘しているのはこのことである。

 全体を通して、スタンス的な意味で歩歩のマウントを譲らず、〈吉本新喜劇は大阪のもんで〉など、正論かつシニカルな笑いを繰り出し続けたのは、呂布カルマの方。対して、ここまでの連戦で、“ヨガファイヤー”などの切り札をあらかた使い尽くしてしまった歩歩には若干のスタミナ切れ感が見受けられたほか、ライムの落とし方にも少々荒さを感じ、“ん?”と思う場面もところどころ。最終ターンを終えたときには、彼自身も負けを予感した表情を見せていたようにも思える。

 が結果は、いとうせいこうとKEN THE 390が呂布カルマを選ぶも、2-3で歩歩の勝利。あの呂布カルマの初陣である。こんなあっさり負けるとは想像もしておらず、TEAM東海も微妙な顔つきに。そんな窮地でも、いや、だからこそ、最終ラインを任された泰斗a.k.a.裂固の顔は死んではいなかった。

・“試合の流れ”が目に見える形に “チーム戦”や“ビート”をキーワードに解説

 裂固は開幕早々、先攻で〈俺はカルマさん勝ってたと思ってたぜ〉と、誰もが気になっていただろう部分を指摘。そのまま得意のライムで畳み掛けるも、歩歩も〈俺はネアンデルタール人 レペゼン旧石器 急接近でチューでもしようか?〉〈ポポポポーン〉など、おそらく過去にフリースタイルバトルで誰も使ったことがないだろう語彙を乱射し、ここにきてギアを上げてくる。そんな彼の攻撃をしぶとく耐え抜き、なんとか持ち堪えたのが裂固。結果は、3-2の僅差で裂固が勝利を勝ち取った。

 この勝敗について、いくつか感じたことがある。まずは、このバトル後にKEN THE 390の講評でも触れられた通り、呂布カルマ戦を経て、観客の歩歩に対する目が冷ややかになっていたこと。

 呂布カルマが放った数々のラインはもちろん、登場時の「俺が笑いを教えたるわ」といったバトル外での言葉にも意味があった。歩歩は、ここまでの連戦でのスタミナ切れや、突飛な行動が徐々に減りつつあったのも事実だが、そうしたわかりやすい要因ではなく、呂布カルマの浴びせた冷や水が、徐々になって効いてきたに違いない。バトル自体はあくまで個人戦ながら、全体的な勝敗を決めるのはチーム戦。複数のラッパーがバトンを繋ぐ面白さや“流れ”の大切さが、このあたりによく現れていたと思う。

 “流れ”という意味では、ビートとの相性も重要だと改めて感じさせられた。順に、楓戦はGottz & MUD「Adrenalin - Remix」、KANDAI戦はICE BAHNLEGACY」、呂布カルマ戦はBAD HOP「Kawasaki Drift」、裂固戦はELIONE「Winner's Circle」と、歩歩は合計4つのビートに乗ったわけだ。そのうち「LEGACY」は得意かと思われるブーンバップだったほか「Adrenalin」もトラップビートのなかではノリ重視な動きのある方。

 一方、後半の「Kawasaki Drift」「Winner's Circle」には、歩歩のエンタメ重視なスタイルが乗せづらく、どうしても格好よい言葉の方が相性がよい。その方が観客にも刺さりやすいし、“ビートが喋る言葉”にも近づけられる。「Kawasaki Drift」なんて、血が滲み、黒く汚れた油がまとわりついた印象を抱いてしまう。ただそれは、これが川崎の悪環境を生き抜いたBAD HOPのビートだと、すでに先行イメージを抱いてしまっているからかもしれないが。

 なんにせよ、チーム戦やビートと、さまざまな“流れ”がわかりやすく捉えられた歩歩の4連戦。勝利した裂固は次週、TEAM東海を勝利まで引っ張れるか。楓の兄貴分として、男の背中を見せてくれ。

(文=一条皓太)

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