a flood of circleが主宰する『A FLOOD OF CIRCUS 2024』の初日が1月12日に新代田FEVERにて開催された。これまでの“A FLOOD OF CIRCUS”は1日に多彩なゲストを迎えるイベント形式だったが、今回はすべて異なる会場でツーマンを4回行うという新たな試み。フロントマンである佐々木亮介(Vo/Gt)の「a flood of circleの歴史の点と点が繋がって、見たことない景色が待ってると思う」という予告通りの夜がこの日も繰り広げられた。

初日にゲストとして招かれたのは、日々の鬱屈した感情を激しいロックサウンドで昇華させる時速36km。仲川慎之介(Vo/Gt)はフラッドの「I’M FREE」Tシャツと佐々木の影響で買った革ジャンで身を包むというこの日ならではの正装をしていたように、初対バンの喜びを噛みしめるよう、憧れたあの日の自分に恥じぬよう、並々ならぬ気合いを見せるライブを展開していく。

じっくり深く歩み出しながらも終盤には生命を帯びたように輝かしいサウンドとなる「サテライト」で口火を切り、「おはようございます、時速36kmです」と佐々木の恒例の挨拶を仲川が口にした「スーパーソニック」でさらに覚醒。オギノテツ(Ba/Throat)と松本ヒデアキ(Ds/Cho)からなるリズム隊も躍動し、石井開(Gt/Cho)も思いっきりギターをかき鳴らす。そんな激しいサウンドの中でも決して揺るがない仲川の歌声。キメも痛快だ。やはり、そこはライブにこだわり続けるロックバンド。憧れだけで終わらせるわけにはいかないのだ。

とは言え、リスペクトと愛情が滲み出る場面も多く、「スーパースター」では石井とオギノのソロをぶっ放した後、曲中にメンバー紹介するという、フラッドの「プシケ」をオマージュしたかのようなアプローチをしたり、「みなさん、ロックンロールは好きですか?」と観客に呼びかけてから披露したのはフラッドの「I LOVE YOU」であったり、特別な一夜だということも感じさせてくれた。

その「I LOVE YOU」から始まった終盤戦は張り詰めたテンションのその先へ踏み込み素晴らしい流れ。「七月七日通り」から「ハロー」へと繋ぎ、一気にフロアを持っていく。勢いだけじゃなくグルーヴも凄まじく、随所に施されたセンス溢れるフレーズもあり、自分たちの核を提示するのだ。

そこから〈うまくやるよ うまくやれよ〉と語りかける「優しい歌」で熱量たっぷりな風を吹かせ、最後はフラッドの「シーガル」の導入を引用し、「オレたちとアンタたちの明日に捧げます!」と仲川が叫んで「銀河鉄道の夜明け」を投下。そのギリギリまで踏み込む姿に観客も感化され、より密度が高まるフロア。石井は全身を使って弾き倒し、オギノは叫び飛び跳ねる。松本もリミッターはかけずに突き進み、仲川はそのど真ん中で歌い上げる。それぞれが全身全霊。最高の瞬間だった。

その熱演を受けて立つフラッドは「おはようございますa flood of circleです」、「Are You Ready?」と佐々木が呼びかけ、「フェルディナン・グリフォンサーカス」からフルスロットルで極上のロックンロールパーティをスタートさせる。〈サーカスへみんなようこそ〉から始まる歌詞、そそるリズムに軽快な裏打ちギター、プレリュードとしては強烈すぎる一撃に観客のテンションもガツンと上がり、突き上げられる無数の拳。黒を基調とした衣装に赤い照明もよく似合う。

咆哮からもう一発「Are You Ready?」と佐々木がかまし、例え心が沈んだとしても引っ張り上げてくれるパワーを誇る「Human License」、シリアスなムードも漂うが溢れ出る情熱とキレの良さに絶叫する観客が続出した「スカイウォーカー」とヒートアップする中、より高みを目指そうとした「Black Eye Blues」はまさに鮮烈。ハンドマイクでラップを叩きつけた佐々木はフロア中央へ飛び込み、「行こうぜー!」と雄叫びを上げ、凄まじい一体感を生み出していく。そんな状況にも動じず、ステージ上のアオキテツ(Gt)、HISAYO(Ba)、渡邊一丘(Ds)が的確にサウンドを構築する姿も頼もしかった。

そんな狂騒から佐々木がアコギを持ち、時速36kmへの想いをフリースタイルで言葉にした後、しみじみと聴かせた「人工衛星のブルース」を奏でていき、しっとりとしたパートになるかと思いきや、心の壁をぶち破るようなリズムでフロアをかき回す「花降る空に不滅の歌を」、心が浮き立つメロディとロックの強度のマッチングが素晴らしい「春の嵐」と続けていくのだが、この流れをスムーズにプレイできるのもフラッドならでは。型にハマらないバンドだからこそであろう。

ここで改めて佐々木が「本気のバンドに出会えて嬉しい。本気のお客さんに出会えて嬉しい」とこの日の喜びを口にし、「スターが死んでも、ロックンロールが死んでも……やる」と続けていく強い気持ちを観客へ届け、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)をプロデューサーに迎えた新曲「キャンドルソング」を披露。彼ららしいスタイルで願いを叫ぶ、クライマックスのコーラスも沁みる出来栄えだった。

そして、ギターのフレーズで察知した観客が一気に大興奮したのが「Diamond Rocks」。ギリギリまで踏み込むスリリングさにフロアは揺れに揺れ、〈咲く時は命掛け 命掛けで生きていくだけ〉と己の生き様を突きつけ、凄まじいバイタリティを持つ「花」で熱気はさらに上昇。佐々木が自分のマイクをフロアへ向けるほどの大歓声が沸き上がっていく。

そんな熱気が充満するところへ等身大というよりも佐々木亮介そのものが投影され、ロックのエネルギーで未来を切り開く「月夜の道を俺が行く」を放ち、本編ラストは後悔や葛藤を吹き飛ばし、とにかく踏み出していくと強いメッセージを込めた「本気で生きているのなら」をセレクト。圧倒的な覚悟を見せつけてくれた。

アンコールでは仲川に佐々木が自分のギターを託して「象のブルース」を共にプレイし、そのままの流れで「I LOVE YOU」も鳴らすというスペシャルな展開。予期せぬ出来事に観客も瞬時に最高潮へ達し、締めくくりとなった「ゴールド・ディガーズ」はステージもフロアも手のつけられないような状況。最後の最後まで勢いが増す様子は絶景としか言いようがなかった。

『A FLOOD OF CIRCUS 2024』はまだ一夜を終えたばかり。1月19日恵比寿ガーデンホールにてLiSA、2月9日は東京キネマ倶楽部にてドミコ、2月14日はZepp DiverCityにてUNISON SQUARE GARDENと相まみえるフラッド。期待は高まるばかりだが、彼らならばそのハードルも軽々と越えてくれるに違いない。

文:ヤコウリュウジ 写真:新保勇樹

<公演情報>
a flood of circle『A FLOOD OF CIRCUS 2024』

1月12日 新代田FEVER

セットリスト

■時速36km
01 サテライト
02 スーパーソニック
03 動物的な暮らし
04 かげろう
05 スーパースター
06 シャイニング
07 ブルー
08 I LOVE YOU(カバー)
09 七月七日通り
10 ハロー
11 優しい歌
12 銀河鉄道の夜明け

■a flood of cicle
01 フェルディナン・グリフォンサーカス
02 Human License
03 スカイウォーカー
04 Black Eye Blues
05 人工衛星のブルース
06 花降る空に不滅の歌を
07 春の嵐
08 キャンドルソング
09 Diamond Rocks
10 花
11 月夜の道を俺が行く
12 本気で生きているのなら
EN1 象のブルース(feat. 仲川慎之介)
EN2 I LOVE YOU(feat. 仲川慎之介)
EN3 ゴールド・ディガーズ

<イベント情報>
a flood of circle『A FLOOD OF CIRCUS 2024』

※終了公演は割愛

2024年1月19日(金) 恵比寿ガーデンホール
ゲスト:LiSA

2024年2月9日(金) 東京キネマ倶楽部
ゲスト:ドミコ

2024年2月14日(水) Zepp DiverCity TOKYO
ゲスト:UNISON SQUARE GARDEN

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2338681

公式サイト:
http://www.afloodofcircle.com/

a flood of circle『A FLOOD OF CIRCUS 2024』1月12日 新代田FEVER