「同じことを毎日のように言っているのに、子どもの行動が直らない」ことってありませんか。どうしてこうなってしまうのか、それは親からの言葉が口先だけになっていて、“馬の耳に念仏”状態に陥っているからかもしれないと、子育て本著者・講演家である私は考えています。

家に帰ってから叱っても響かない

 よく、ニュースで「現行犯逮捕」という言葉を耳にします。犯罪行為を行っているそのときに逮捕することです。犯罪は、発生から時間が経過してしまったり、犯人の居場所が変わってしまったりすると、逮捕に時間がかかります。

 子どものしつけをこれと並べるのは大変はばかられるのですが、ある意味では共通点も感じます。子どもが悪い行動を取ったとき、時間が経過してから、場所を変えてから叱るのは効果がないのではないでしょうか。

 例えば子どもが、青信号がチカチカしているのに、信号を無視して横断歩道を渡ったとき。親が「ここで大声を上げて叱ったら、通行人から“虐待しているお母さん”と思われてしまう」と思い、その場では叱らなかったとします。その後、だいぶ時間が経過してから、あるいは家に帰ってから「あのとき、信号が赤に変わりそうになったのに渡ったよね。車にひかれたら危ないでしょ」と叱っても、子どもには響きません。

 まさに横断歩道を渡ろうとしたとき、周りからどう思われても、子どもの命を守るために、そしてこれからの安全意識を高めるために、「危ないから止まりなさい!」とビシッと叱りましょう。

 スーパーで、子どもが「お菓子買って~。買って~」と大騒ぎしたときも同様です。

「ここで押し問答して、買う・買わないでもめていたら、いつまでも泣きやまないで周りに迷惑がかかる」。つい、そんなふうに思ってしまい、やむなく買い与えたとしましょう。そして、家に帰ってから「今日、スーパーでお菓子欲しいって泣いたよね。それってどう思う? 夕飯の買い物に行くたびに『お菓子は買わない』って何度も言ったでしょ! 大騒ぎして泣いたらダメでしょ」と叱ったとしても、「泣いて騒いだら買ってくれた」事実があるので、子どもは既に「誤学習」をしています。

 周りの目を気にしないで、その場で「泣いてもダメよ。今日は買わないって約束したでしょ」と、毅然(きぜん)とした態度で断りましょう。

 ここで大事なのは、「信号を無視した」「お菓子を欲しがった」ときにその場で叱ったら、あとはきれいさっぱり忘れること。その場で注意したら、家に帰ってから再び蒸し返すのはやめましょう。

 そして、その場にいなかった夫に、子どものいないところで報告をしたとしても、夫からさらに叱ってもらう必要はありません。どうしてかというと、その場にいなかった相手から叱られるのは子どもにとって理不尽なことだからです。

褒めるときも「その場」で

 この方法が有効なのは、叱るときだけに限りません。

 わが子が、他の小さい子どもに、自分が使っていたおもちゃを貸してあげたとしましょう。親として、心の中では「うちの子も随分と成長したなあ」とほほ笑ましく思っていたとしても、他のママがいる手前、「お利口だね。偉いね」となかなか口に出しては言えないものです。「親バカと思われたくない」という気持ちになり、ブレーキがかかってしまいます。

 よその子が同じことをしたら、「○○くん、優しいのね」と満面の笑みで伝えられるのに、わが子に対してはなかなかできません。

 家に帰ってから「今日、小さい子におもちゃを貸してあげて偉かったね」と褒めたとします。もちろん、何も言わないよりはましですが、その場で褒められた方が、子どもはうれしいもの。周りから親バカと思われてもいいので、褒めるときもその場で褒めてあげましょう。

 時間が経過し、もう気持ちが他に行っている状態で「あのとき、ああだったでしょ」と言っても子どもは理解しません。叱るときも褒めるときも、そのとき、その場で行う“現行犯主義”でいきましょう。

子育て本著者・講演家 立石美津子

どうして「現行犯主義」がいいの?