2024年4月から『機動戦士ガンダム』は45周年に突入。それに先駆け、1月26日(金)からは劇場映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が公開される。「SEEDシリーズ」はガンダムシリーズの中で宇宙世紀シリーズ、宇宙世紀外の通称“アナザーシリーズ”に分けられる後者の方の作品だ。宇宙世紀シリーズとアナザーシリーズは何が違うのか? 実はこれを知るとガンダムシリーズの全景がよく見えてくる。『SEED FREEDOM』の盛り上がりを受けて「ガンダム」に興味を持ったという方のために、WEBザテレビジョン編集部ガンダム担当がこの2シリーズの違いを解説していこう。

“おひげ”のガンダムが話題になった『∀ガンダム」(C)創通・サンライズ

宇宙世紀ガンダムシリーズの王道

宇宙世紀シリーズとは、1979年にアニメーション監督の富野由悠季が生み出した最初の『機動戦士ガンダム』(以下、ファーストガンダム)を物語の起源にした作品群のこと。アムロ・レイシャア・アズナブルがいる世界と言えば分かる人もいるだろう。今私たちが生きている西暦の次の年号「宇宙世紀(Universal Century=U.C.)」が舞台になっている。それもあり、近未来SFだが、既視感もある光景が広がっている。作品によって宇宙世紀の中のどの時代か、場所かなどの違いはあるが、ひと繋がりの世界である。分かりやすい例を挙げると、ファーストガンダムはU.C.0079の時代の物語。続編の『機動戦士Zガンダム』(1985)はそこから8年後のU.C.0087が舞台になる。

ガンダムシリーズ初期の作品群は総じて宇宙世紀が舞台になり、ミノフスキー粒子モビルスーツニュータイプといった作中設定をはじめ、文化や民族、国家、科学技術など、(描かれる時代や地域による変化はあるものの)統一されている。宇宙世紀富野監督が創造した世界であり、言わばガンダムシリーズにおける王道と捉えることもできるだろう。中には『機動戦士ガンダムUC』(2010)のように、富野以外が監督を務めた作品もあるが、宇宙世紀を舞台にした作品は全て宇宙世紀シリーズになる。

現在のところ宇宙世紀シリーズでもっとも古い時系列に位置する作品は『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(2015)で、これはファーストガンダムよりも前の時代を描いている。逆にもっと後の年代を描いているのが『ガンダム Gのレコンギスタ』(2014)だと言われている。『G-レコ』は宇宙世紀が終わり、そのはるか先の未来を舞台にした作品。「言われている」と曖昧なのは、『G-レコ』と後述する『∀ガンダム』(1999)で、どちらが後の時代を描いているのか、明確な設定が出ていないからだ。

作品としての宇宙世紀シリーズの傾向と言えば、リアルで重厚な世界観、戦争描写、シリアスなドラマ展開などが挙げられる。富野による初期のガンダムシリーズの流れを汲みつつも押し広げた壮大なサーガであり、何世代にもわたる巨大な戦記ものの様相を呈している。特にファーストガンダムの舞台になった一年戦争ものは人気スポットだ。少年時代に心を掴まれて以来、ずっと応援し続けている往年のファンも多く、まさにガンダムシリーズの屋台骨とも言えるのだ。

■アナザーシリーズはそれぞれが独立した別世界

一方、アナザーシリーズは、作品ごとに紀年が異なっており、互いに関係性を持たない独立した世界観を持つ。そもそも『機動武闘伝Gガンダム』(1994)が放送されるまでは、全てのガンダム作品は宇宙世紀だった。しかし、宇宙世紀という世界を掘れば掘れるほど物語とファンはコアになっていき、ライト層を無意識に遠ざけてしまっていた。ファーストガンダムを知らない人がいきなり『機動戦士ガンダムUC』を観て楽しめるのかと問われたら、「楽しめないことはないが、知っておいた方がいい」と答えるしかない。

これはシリーズ作品に共通した宿命でもあるが、そんなネガティブな流れを払拭させたのが『Gガンダム』だった。ガンダムを使って格闘技大会を開くという斬新な発想はオールドファンから苦言を受けつつも、新たな視聴者層を取り込むことに成功した。ここまで振り切った作品になったのは、富野ではない監督を擁立(今川泰宏)、子ども向けに作るといった要因があり、結果的に制作サイドにも根を張っていたファーストガンダムの神格化を突き破る前例になったようだ。これ以降、個性豊かなアナザーシリーズ作品が次々と生まれていく。

アナザーシリーズはそれぞれが異なる世界観を持つため、歴代ガンダム作品を一切知らない人でも気軽に楽しめることができるのが最大の魅力だ。「SEEDシリーズ」や『機動戦士ガンダム 水星の魔女』のヒットもまた、アナザーシリーズの自由さが生んだ賜物だと言えるだろう。

■『∀ガンダム』で宇宙世紀とアナザーが1つに!?

最後に、富野が仕掛けた衝撃のガンダム設定に触れておこう。ここまで宇宙世紀が1つの世界で、アナザーシリーズはそれぞれが別世界だと解説してきた。それは間違いではないが、最終的に全てのガンダムシリーズは1つの世界、宇宙世紀の延長の未来世界であるというのが、より厳密な解釈になる。皆さんの頭に「?」が出ていそうだが、ちょっと待ってほしい。これは『∀ガンダム』で明らかになった設定で、現在にまで至る公式見解なのだ。

∀ガンダム』には「黒歴史」と呼ばれる封印装置のようなものが登場し、そこには宇宙世紀のみならず、“全てのガンダム”の遺物が眠っていた。つまりは、どのような経緯を辿るかは不明ながらも、全てのガンダム作品は『∀ガンダム』の世界線に行き着くということ。これが『ガンダム』を創造した富野による、ガンダム作品の帰結ということだ。なお、巷でよく使われる「隠したい過去」を意味する「黒歴史」は本作から広まっていったスラングでもある。

以降ではガンダムシリーズの主な映像作品を、宇宙世紀シリーズとアナザーシリーズに分類したリストを表記する。実は宇宙世紀とアナザーシリーズ以外にも「SDガンダムシリーズ」や「ビルドガンダムシリーズ」といったものもあるが、それはまたの機会に紹介したい。

宇宙世紀シリーズ/時系列順

U.C.0068    機動戦士ガンダム THE ORIGIN(OVA)

U.C.0079    機動戦士ガンダム(TVアニメ) 

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島(映画)

機動戦士ガンダム MS IGLOO(OVA)

機動戦士ガンダム 第08MS小隊(OVA)

機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争(OVA)

機動戦士ガンダム サンダーボルト(配信アニメ)

U.C.0083    機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY(OVA)

U.C.0087    機動戦士Ζガンダム(TVアニメ)

U.C.0088    機動戦士ガンダムZZ(TVアニメ)

U.C.0093    機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(映画)

U.C.0096    機動戦士ガンダムUC(OVA)

U.C.0096    機動戦士ガンダム Twilight AXIS(配信アニメ)

U.C.0097    機動戦士ガンダムNT(映画)

U.C.0105    機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(映画)

U.C.0123    機動戦士ガンダムF91(映画)

U.C.0153    機動戦士Vガンダム(TVアニメ)

はるか未来   ∀ガンダム

ガンダム Gのレコンギスタ(TVアニメ)

※『∀ガンダム』と『Gのレコンギスタ』の時系列については詳細不明

アナザーガンダムシリーズ

未来世紀

機動武闘伝Gガンダム(TVアニメ)

アフターコロニー

新機動戦記ガンダムW(TVアニメ)

新機動戦記ガンダムW Endless Waltz(映画)

アフターウォー

機動新世紀ガンダX(TVアニメ)

コズミック・イラ

機動戦士ガンダムSEED(TVアニメ)

機動戦士ガンダムSEED DESTINY(TVアニメ)

機動戦士ガンダムSEED C.E.73-STARGAZER-(OVA)

西暦

機動戦士ガンダム00(TVアニメ)

劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-(映画)

アドバンスド・ジェネレーション

機動戦士ガンダムAGE(TVアニメ)

ポスト・ディザスター

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ(TVアニメ)

ド・ステラ

機動戦士ガンダム 水星の魔女

2024年、ガンダムシリーズは45周年に突入 (C)創通・サンライズ/(C)創通・サンライズ