最終回を迎えたばかりのTV特撮ドラマ『ウルトラマンブレーザー』(テレ東系)。本作はメイン監督・田口清隆の「今までにない、だけど王道ど真ん中の新たなるウルトラマン」というコンセプトのもとに作られ、毎話放送後はSNSなどで大きな反響があった。そんなTVシリーズのその後を描く『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』が2月23日に公開。今回の劇場版では、隊長・ヒルマ ゲントや副隊長・ナグラ テルアキを始めとする特殊怪獣対応分遣隊「SKaRD(スカード)」の面々が、先進化学企業・ネクロマス社の生み出してしまった“妖骸魔獣ゴンギルガン”に立ち向かう。ウルトラマンブレーザー史上、最も壮絶な戦いが描かれる本作の魅力はどこにあるのか。ヒルマ ゲント役・蕨野友也とナグラ テルアキ役・伊藤祐輝、そしてメガホンを取った田口清隆監督に、TVシリーズの思い出なども交えつつ鼎談してもらった。

【動画】まさか過ぎる撮影現場の裏話も 蕨野友也&伊藤祐輝&田口清隆監督インタビュー

■『ウルトラマンブレーザー』はみんなの日常を切り取った作品

――『ウルトラマンブレーザー』のTVシリーズが最終回を迎え、今回の劇場版へ繋がっていくわけですが、蕨野さんと伊藤さんはそれぞれどのようにゲントとテルアキに向き合われましたか?

蕨野:TVシリーズのときはヒルマ ゲントとはどういう人間なのか、どういうキャラクターなのかをまず台本から読み解こうと思いました。しかし、第1話の台本を何度読んでもわからなかったんです。ですが、何かあったときに、「俺が行く」と発言する、その判断が的確であることはわかりました。そこから2話、3話と進むなかで隊員を順にスカウトし「SKaRD」というチームが出来上がっていった。そこはご覧になっている皆さんと同じ感覚でして、ゲントと一緒に生活しながら役を作っていったイメージですね。「SKaRD」メンバーと接するときは、撮影以外でもゲントのように接することが多かった気がします。

伊藤:田口監督と最初にお話させていただいたときに、テルアキは一言で言えば縁の下の力持ちタイプであるとお伺いしました。害のない怪獣は排除するべきではないと考え、人間と怪獣の共存を目指す役ですともおっしゃられました。それはすごく難しい事だなと感じたのですが、でも理想を現実にしたいと思うことで、今よりもっとよくできることはあるんじゃないかなと考えました。「SKaRD」のメンバーに対しても、テルアキとしてどうすれば今よりもっと仲間を信じて居心地よく感じてくれるかな、そういうことを考えていました。

――田口監督が『ウルトラマンブレーザー』を制作するにあたり、最も心掛けたことはどのような部分でしょうか。

田口:今回は特に、ひさしぶりに完全に独立した世界観でやろうということを考えました。『ウルトラマンブレーザー』が初めて見るウルトラマンになる子ども、なんなら大人もいると思うのですが、そういう人たちがどの話から見始めても入り込めるようにということは、実は強く意識しました。『ウルトラマン』(1966年)や『ウルトラセブン』(1967年)も老若男女、マニアも初見の人も楽しめるようなっていると思います。そのために、こういう人っているよね、こういう状況に置かれたらこうなるよねといった感情移入しやすい実生活を丁寧に描いていこうと考えました。ですから役者のみなさんにも、突飛なキャラクターというよりもナチュラルに、この『ウルトラマンブレーザー』の世界にいる人間として演じてほしいということは伝えました。みんなが本当にこの世界を生きていて、僕たちはそれを切り取る作業をしたという、そんな感じです。それが見ているみなさんにも伝わっていたら嬉しいですね。

■TVシリーズ最終回と劇場版冒頭が同日撮影

――放送を観ていても「SKaRD」のみなさんからは、絆の深さや仲の良さを強く感じました。一番最初の顔合わせから仲が良かったのでしょうか?

蕨野:顔合わせのときは俺いなかった…。

伊藤:(笑)

田口:最初はね(笑)。でも、まさに「SKaRD」っていきなり寄せ集めみたいな感じで始まったので、まさに同じような状態でみんなスタートしたんですよ。

伊藤:僕は、役を通してみなさんのことを少しずつ知っていったような感覚でした。

――印象に残っている話数や現場でのエピソードはございますか?

田口: TVシリーズの最終回で、ゲントさんがウルトラマンブレーザーに変身するシーンです。スケジュールの都合でどうしてもそうならざるを得なかったのですが、実はあれ、劇場版の冒頭のシーンと、ロケ地と撮影日が同じなんです。TVシリーズ最終回の満身創痍のゲントさんの状態で蕨野さんは朝に現場入りするわけなのですが、最終回の撮影の前に劇場版の仕掛けなどの段取りを決めておかないといけない。まずはその段取り決めて火薬などの仕掛けを仕込んでいる間に、最終回で気持ちが最高潮に入ったゲントさんをやってもらって、それが終わったらまた劇場版の撮影に戻って冒頭のシーンを撮るという…とんでもないスケジュールを組んでしまって本当に申し訳なかったというか。

蕨野:でもあの日はすごく楽しかったです。TVシリーズに関して言えば、あれがどう転んでも最後になるからこそ、今の自分の身体の状態や精神状態はこれでいいのかなって悩むこともあったりして、夜遅くにいきなり田口監督をカフェに呼び出して相談したりとかして(笑)。いろいろとご迷惑をおかけしました。

■オンエア日以外の日にもゲントたちの日常がある

――劇場版のサブタイトル『大怪獣首都激突』には往年の怪獣映画のようなカッコよさを感じました。

田口:とにかく、ド直球の怪獣映画であるということを全面に押し出そうという気持ちの表れであることは間違いないです。昨今、「ゴジラ」を始めとした怪獣作品が次々と作られ盛り上がっている空気がありますが、僕らが子どものころ大好きで見ていた怪獣映画と大きく違うのは、そのほとんどがCGであるということ。そんななか、ウルトラマンシリーズは今もミニチュアとスーツを使って撮影する作品だったりします。だからこそいい。いまそれができるのがウルトラマンなんだと思うので、何の迷いもなく劇場版はド直球の怪獣映画にしようということを決めました。

――劇場版のキャッチコピーの「俺たちが、行く。」も、TVシリーズのキャッチコピー「俺が行く。」が、これまで描かれてきた絆が確かなものになったからというように感じられました。

田口:「俺が行く。」というゲントさんの口癖は僕が提案したものではあるのですが、地球の言葉を一切しゃべらないウルトラマンブレーザーが、最終回で最後の最後に唯一喋った言葉が「俺も行く」だったこと、これは一番最初から決めていたことでした。TVシリーズの第25話を通して、ゲントさんとウルトラマンブレーザー、「SKaRD」の隊員たち、そしてその家族。みんながいろいろな状況のなかで固い信頼を築いていくというのがTVシリーズでした。今回の劇場版はそれが築かれたうえで新しい敵に立ち向かっていくことで、「俺が行く。」から「俺たちが、行く。」になりました。

――蕨野さんと伊藤さんも、撮影現場でそういった絆や信頼は、感じ取れましたでしょうか。

伊藤:僕は、第25話ではモッピー(スカード移動指揮車の愛称)の無線でみんなの声を聞き、声をかけていく役でしたが、それを通じてのつながりというか、各隊員がそれぞれの場所で最善を尽くして、絶対にこの困難を乗り切るんだという今まで培ってきた信頼感みたいなものを最終回の撮影当日も感じたことは、とても印象深く覚えています。

蕨野:全25話のなかでいろんなことが起こり、各隊員の家族との話や思い出もあったりして、自分も一緒に成長する毎週土曜日の朝だったなと感じます。個人的な感覚なのですが、毎週土曜日、撮影した物がオンエアというかたちで流れますが、それ以外の日曜から金曜まで、僕たちはそれぞれきっとオンエアでは流れない生活をしている。あくまで僕らの日常の中の土曜日という一部がオンエアされてるんだ。そういう感覚で毎週土曜日の朝9時にオンエアを見るのが楽しみでした。撮影のときも、トラブルも含めていろんなことが起こります。それにみんなで立ち向かってひとつひとつ積み上げてきたという感覚もあるので、「SKaRD」の5人だけでなく、この作品に関わったみんなで一緒に成長してきた、そういう作品だと思います。そして、ウルトラマンという神秘的な存在って、やっぱりかっこいいんだ。そう改めて認識できる作品であったと感じています。

――最後に劇場版を楽しみにしているみなさんへメッセージをお願いします。

田口:劇場版は、TVシリーズの最終回までのひとつの大きな山が決着した後の話です。ですから、最終回のあとも「SKaRD」は変わらず地球を守っています。そして、今度はこんなとんでもない事件に巻き込まれますが、それまで培ったチームワークと信頼関係があるからこそ怪獣と戦える。非常にエンターテインメントというか、王道一直線な作品にあえてしましたので、逆にTVシリーズを見ていなくても、途中からしか見ていない、もしくは、1話しか見ていなかったという方も、大丈夫なように作ってあります。みなさんぜひとも観にきてください。

伊藤:TVシリーズの最終話まで「SKaRD」やブレーザーが培ってきた絆。劇場版ではまた違う角度から、任務という一言では片付けられないような困難が立ちはだかります。そこに我々「SKaRD」がどう立ち向かっていくのか、そこに注目していただきたいです。

蕨野:スクリーンだからこそ感じられる大迫力の怪獣バトルを楽しむことができます。日常で困ったこと、悩むこと、たくさんあると思います。大丈夫、俺たちがいる!

(取材・文:太田サトル 写真:高野広美)

 『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』は、2月23日全国公開。

(左から)田口清隆監督、蕨野友也、伊藤祐輝  クランクイン! 写真:高野広美