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 これもプラセボ効果の一種かもしれない。実際には同じ時間が経過していても、怪我人が長い時間が経過したと感じている方が、傷の治癒速度が上がるのだ。

 これは主観的に感じる時間の長さが、傷の治り具合に大きく影響していることを意味する。感じている時間の長さによって、傷の治りが早くなったり、遅くなったりするのだ。

 この摩訶不思議な研究結果は、心が抱く抽象的な考えが、肉体の健康に直接影響することを示しているという。まさに「病は気から」を実証したことになる。

【画像】 主観的な時間の感じ方が傷の治癒速度に影響する

 時間の感覚がその時その時で違うことなら誰でも体験しているだろう。楽しい時間はあっという間だし、退屈な時間は永遠に続くかのようだ。

 だがその主観的な時間の長さが、傷の治り具合に影響するなんて信じられるだろうか? 少なくとも今回のハーバード大学のチームによる研究では、そのような結果が出ている。

 今回の実験に参加したのは、「カッピング療法の効果と性格の関係を調べる研究」との名目で集められた人たちだ。

 カッピング療法とは、コップのようなものを肌に密着させ、その部分を吸引してやる伝統医療だ。血行が促進され、老廃物が排出されるので体に良いとされているが、科学的な根拠は薄く、副作用もあるために疑問視されている。

 その効果が本当かどうかはさておき、これを行うと皮膚を吸引したことによるカップ痕が残る。今回の研究では、この痕の治り具合を観察した。

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 参加者たちはカッピングを受けた後で、性格を知るためと称された実験を受ける。この実験の時間は参加者全員同じで、28分間だ。

 だがタイマーの時間を操作することで時間を誤認するような仕掛けがされていた。

 被験者によって、実際の時間・実時間の半分・実時間の2倍のいずれかの"主観的時間"を過ごすよう仕向けられた。

 その結果は、冒頭で説明した通り。参加者がより長い時間が経過したと感じていた場合、カップ痕の治りが早かったのだ。反対に、短い時間しか経過していないと感じていた場合には、治りが遅かった。

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心と体はつながっている

 この研究は、私たちの健康について知るには、心と体の「一体性」という概念を取り入れる必要があることを示す強力な事例だ。

 これまで心が肉体的な健康におよぼす作用は、心が感情(ストレス、炎症、免疫機能など)や行動(健康的な行動につながる考え方など)に与える影響という観点から理解されることが多かった。

 だが今回の研究は、もっと抽象的な概念(ここでは時間)も、肉体に直接影響することを示唆している。

 研究チームは、この不可思議な現象の原因となるメカニズムやより広い意味合いを理解するために、さらなる研究を進めているところだ。

 この研究は『Nature Scientific Reports』(2023年12月17日付、査読済)に掲載された。

References:Perceived time has an actual effect on physic | EurekAlert! / written by hiroching / edited by / parumo

 
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人体の不思議。心理的な時間の認識が傷の治癒速度に影響を与える