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毎日の移動が楽しくなるドライバーズカー

スイス製アーミーナイフのように、マルチに活躍するクルマをお探しなら、ホットハッチに勝るものはない。速さ、安定性、実用性と、手頃な価格が融合した、言わばアドレナリンポンプであり、何でもこなせる多目的性においては他の追随を許さない。

【画像】GRヤリスがさらに進化!改良は「生半可」じゃない【改良新型トヨタGRヤリスを写真で見る】 全30枚

ホットハッチのレシピはいたってシンプルだ。小型のハッチバックにパワフルなエンジンを搭載し、それに合わせてサスペンションブレーキを強化する。とことんやるなら、赤いストライプはもちろんのこと、おしゃれなボディパーツも追加したくなる。

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AUTOCARが実際に試乗した中から、特に優れた10台を紹介する。

その結果、標準車と同じようにオーナーの生活にすんなりと溶け込むクルマとなり、残業を終えて勤務先から長い家路につくときには、そのしかめっ面も笑顔に変わってしまうのだ。

ホットハッチというジャンル自体は真新しいものではなく、フォルクスワーゲンがゴルフGTIを投入から半世紀近く経った今でも、世界各地で人気がある。欧州では特にホットハッチの文化が根強く、多くの自動車ブランドがラインナップしている。

しかし、ますます厳しくなる排ガス規制など時代の変化により、ホットハッチの在り方も変わりつつある。価格はかつてほど手頃なものではなくなり、パワートレインの電動化が推奨される今、内燃エンジン搭載車としてほぼ最後の世代であることは間違いない。

法律で禁止される前の今こそ、この速くて万能なクルマを買うチャンスなのだ。問題は、「どれを選ぶか」だ。そこで今回は、ホットハッチが人気を集める欧州からベストな10台を紹介したい。

1. トヨタGRヤリス

当初はラリー・ホモロゲーション・スペシャルとして開発されたGRヤリスは、WRCのルール変更によって厳密には不要となったため、量産化が危惧されていた。以前なら、このようなクルマは隅に追いやられて忘れ去られていただろうが、トヨタの現会長である豊田章男氏は本物のクルマ好きであり、モータースポーツにインスパイアされたGRヤリスが朽ち果てるのを見ることはできなかったようだ。

開発にどれだけの費用がかかったのかは想像に難くないが、トヨタが「FUN TO DRIVE」を掲げている以上、資金をかき集める価値があったのは明らかだ。

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1. トヨタGRヤリス

ガチガチに強化されたボディの中には、最高出力260psの1.6L 3気筒ターボエンジンと四輪駆動システム(オプションで機械式トルクベクタリング・ディファレンシャルも選択可能)が搭載され、0-100km/h加速をわずか5.5秒で走破する。

また、シャシーとサスペンショントヨタガズー・レーシングのWRCチームの意見を取り入れて開発)は、どんな天候でも安心して走れるように完璧にチューニングされている。

クルマとの対話が可能なコントロール性、確かなコーナリングバランス、そしていつでもどこでも速さと楽しさを与えてくれる不思議なGRヤリスは、非常に稀少で特別なパフォーマンスカーである。残念ながら「時代遅れ」になりつつあるジャンルのクルマではあるが、こうして再燃したことを嬉しく思う。

2. ホンダ・シビック・タイプR

先代のホンダシビック・タイプRは、本誌のお気に入りのホットハッチの1つだったので、新型車への期待も高かったが、嬉しいことにその期待は裏切られなかった。多くの点で先代と変わらないからだ。エクステリアとインテリアは新しいが、プラットフォームは先代のものを「最適化」したものである。

パワートレインとしては、おなじみのターボチャージャー付き2.0Lエンジンが、フライホイールの軽量化、インテークの見直し、排気フローの改善などにより、最高出力320psから330psへとパワーアップしている。

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2. ホンダシビック・タイプR

デュアルアクシス・フロントサスペンションとマルチリンク・リアアクスルはよく似ているが、トレッド幅が15mm拡大されたこと、ボディシェルが15%強化されたことと相まって、よりシャープなハンドリングと高い快適性を両立している。GTレースカーのようなリアウイングがまだちょっとした「やんちゃ感」を醸し出しているとはいえ、先代よりも大人のクルマに感じられる。

0-100km/h加速5.4秒、最高速度270km/hというパフォーマンスを、洗練された乗り心地とともに実現している。シャシーは粘り強いグリップと一体感あるコントロール性を兼ね備えており、スロットルを離したりブレーキを踏んだりすることで、コーナーでのラインを微調整することができる。心臓がバクバクし、脳内神経伝達物質をドバドバ出すようなクルマであることに変わりはないが、日々の通勤が億劫になったり、高速道路走行が我慢大会になったりするようなクルマでもない。

では、なぜこのクルマがトップでないのか? まず、ホンダは欧州向けの価格を大幅に引き上げたことが理由に挙げられる。先代は約3万3000ポンド(約620万円)からだったが、今回は5万ポンド(約940万円)が必要だ。ポンド円の為替相場や物価の高騰を考慮しても、安いとは言えないだろう。ちなみに、英国では輸入される台数が数百台規模と少ないため、英国人が手に入れるのには苦労するはずだ。

3. ヒョンデi20 N

ヒョンデは、手頃な価格のパフォーマンスカーを手掛けるメーカーとして、急速に存在感を高めている。その主な理由がi20 Nで、一回り大きいi30 N(Cセグメント)よりもシンプルでダイレクトな古典的ホットハッチである。

もちろん、小型軽量なのは助けになる。しかし、アクティブ・ディファレンシャルの代わりに従来型のリミテッドスリップ・ディファレンシャルを採用したほか、パンチの効いた1.6Lターボエンジンや、欧州で一般的なDCTではなく6速MT、アダプティブ・ダンパーではなく優れたパッシブ・ダンパーを採用している。

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3. ヒョンデi20 N

結果は実に優秀だ。まるで本物のラリーカーのような、入念に磨き上げられた特別なキャラクターを持っている。ボディコントロール、高速走行時の精度、安定性、ステアリングの正確さは、このサイズのクルマではめったにお目にかかれないものだ。

i20は室内が広く、装備も充実している。ヒョンデはこの10年間、欧州ブランドのコンパクトカーと肩を並べるまでになった。グリップや正確性をやや過剰に感じる人もいるだろうし、フォード・フィエスタSTよりも活発さが抑えられていると評価する人もいるだろう。ただし、フィエスタは廃止されたので、そこはあまり重要ではない。

標準のi20はフェイスリフトを受けたばかりだが、高性能のNモデルの改良についてはまだ発表がない。ヒョンデは今、EVのアイオニック5 Nに注力しているようだ。i20 Nもこの先、長くはないのかもしれない。

4. フォード・フォーカスST

フォードは過去数十年にわたり、実力も販売力も素晴らしいハッチバックを何台も世に送り出してきた。現行のフォーカスSTは、上記のヤリスシビックほど鋭敏ではないが、フォードの伝統を何よりも尊重している。価格もシビックより手頃だ。

STは通常、やや下位に位置するグレードだが、現行世代のフォーカスにはRSの計画がないため、その分チューンナップに余念がない。歴代フォーカスSTとして初めてアダプティブ・ダンパーと、フロントアクスルに電子制御リミテッドスリップ・ディファレンシャルを採用している。後者は、この価格帯のクルマではまだかなり珍しいものであり、ハンドリングの魅力を確実に高めている。

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4. フォードフォーカスST

さらに走りに特化したハードコアなものをお望みなら、フォーカスSTトラック・パックがある。特別な手動調整式コイルオーバー・サスペンション、大型ブレーキピレリPゼロ・コルサ・タイヤを履いた軽量アルミホイールがついてくる。追加オプションで3000ポンド(約55万円)と決して安くはないが、ボディコントロールとハンドリングの鋭さをさらに一段引き上げるものだ。

フォーカスSTは、ダイレクトシャープなハンドリング、しっかりとしたボディコントロール、そして豊かなサウンドと動力性能を持つパフォーマンスカーとしてのキャラクターを備えている。平凡な道のりも楽しくしてくれるようなホットハッチであり、過去のいくつかの名車には劣るものの、一定の成功を収めている。

おそらく、これがSTモデルにとって適切なバランスなのだろう。サーキットで大活躍するようなマシンというよりは、身近なロードパフォーマンスカーとして日常を謳歌するクルマだ。現時点での究極のホットハッチとするにはまだ不十分だが、非常に強力な候補であることに変わりはない。

誘惑に駆られたら、今すぐ並行輸入車の注文を。小型のフィエスタと同じく、フォーカスも2025年に廃止される予定だ。

5. メルセデスAMG A 45 S

メルセデスAMG A 45 Sは、6万ポンド(約1130万円)以上する四輪駆動ホットハッチバックで、最高出力421psと最大トルク51.0kg-mを発生する2.0L 4気筒を搭載している。地球上で最もパワフルな量産4気筒エンジンであり、排気量あたりの出力はフェラーリ488ピスタの3.9L V8を上回る。ある意味、まったく馬鹿げている。

ウィング、フィン、フェンダーを備えた驚異的なドライバーズカーであり、加速性能は言うまでもなく絶大だが、それ以上に驚きなのは、ロングツーリングにおける「礼節」をわきまえていることだ。スピードに乗ったときのボディコントロールは揺るぎないが、快適性も高い。一方でグリップは傑出しており、電動アシスト付きステアリングラックの精度、重み付け、質感のフィードバックは、クラス最高と言っても過言ではない。

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5. メルセデスAMG A 45 S

多才なホットハッチとして、A 45 Sは間違いなく優勝である。しかし、現在の価格設定ではチャンピオンに輝くのは少々難しい。それでも、なんと素晴らしいマシンなのだろう。もし、A 45 Sが高嶺の花だというなら、弟分のA 35ではなく、フォルクスワーゲン・ゴルフRをお勧めしたい。A 35は見た目こそ似ているが、印象は大きく異なる。

6. フォルクスワーゲン・ゴルフR

高く評価されてきたスーパーゴルフ、四輪駆動のゴルフRは、最新型で大きな一歩を踏み出した。V6エンジンを搭載したR32がアルファ・ロメオ147 GTAと並び、新車で買えるホットハッチの頂点に立った20年前とは異なり、最新型はやや獰猛さを抑えられている。それでも、最高出力320psの2.0Lターボは十分に頼もしい。

武器は他にもある。アダプティブ・ダンパーが装備され、車載スクリーンに触れるだけで一般道をアイロンがけするようなモードと歯を食いしばるようなモードを切り替えることができる。一方、完全トルクベクタリング式の四輪駆動システムは、前後だけでなく、リアアクスルの左右で駆動力を調整することもできる。

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6. フォルクスワーゲン・ゴルフR

追加オプションのRパフォーマンス・パックを選択すれば、ドリフトモードやスピードリミッターの上限を270km/hまで引き上げることもできる(ただし、ちょっとしたギミック程度のものなので、本誌は気にしない)。

現行のゴルフRは先代とはまったく異なる性格を帯びている。先代で人気を博した、しなやかさ、安定性、速さのギリギリのバランスは失われ、ボディコントロールとグリップがさらに向上し、安心感を優先している。

先代の「どんな旅にも速いクルマ」という魅力が好きだった人にとっては、現行型はちょっと真面目すぎて、低速域では飄々としているように感じられるかもしれない。しかし、動力性能が大幅に向上したことは否定できない。リアデフは驚異的な俊敏性をもたらし、ソフトなモード設定では驚くほど乗り心地が良い。

第8世代のゴルフ全般に言えることだが、タッチスクリーンを多用したコントロール・インターフェイスには慣れが必要で、反応が鈍いことがある。改良新型ではその点が解決されるようなので、今後に期待したい。

7. フォルクスワーゲン・ゴルフGTI

手の届きやすい価格で最高のパフォーマンスを発揮するゴルフGTIは、フォルクスワーゲンの長寿モデルであるゴルフの中で重要な役割を担ってきたが、最新型は少し違う。より優れたハンドリングレスポンスを追求したが、それに成功したかどうかは疑わしいものだ。GTIが長い間トレードマークとしてきた、乗りやすいさ、使いやすさに悪影響を及ぼし、好ましくない硬い乗り心地になってしまった。

最高出力245psの2.0L 4気筒エンジンは、ここに並んだ他のクルマに比べるとややパワー不足で、少し騒がしく感じることもあるが、力強く手応えのある推進力を生み出し、シャシーがそれをしっかり路面に伝えてくれる。

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7. フォルクスワーゲン・ゴルフGTI

新しい硬めのスプリングは、やはり滑らかな路面に適しているが、アダプティブ・ダンパーによって乗り心地をある程度調整することができる。ステアリングは新たにレスポンスの良いものになったが、まだまだ軽めで感触に乏しい。

GTIクラブスポーツでは最高出力300ps、最大トルク40.8kg-mに上昇し、サスペンションも強化される。日常での快適性を大きく損なうことなく、より優れたグリップダイレクトで鋭いハンドリングを持つクルマになったが、それでもこの中では最もドライバーを夢中にさせるクルマではない。

重要なのは、GTIはどんな道や場面でも人の気分に合わせてくれるカメレオンのような能力を失ってしまったということだ。

ゴルフのフェイスリフトが間もなく予定されており、車載のマルチメディア・スクリーンの問題が一部修正されるはずだが、同時にマニュアル・トランスミッションの終わりも意味する。

8. ヒョンデi30 N

ヒョンデは、高性能車の「N」ブランド初のモデル、i30 Nに大きな関心とリソースを割いていた。これは、元BMW M部門のエンジニアリング最高責任者アルバート・ビアーマン氏を雇い、莫大な研究開発資源を注ぎ込んで作られたクルマだ。そして、注意点は1つや2つあるものの、ヒョンデの苦労は無駄ではなかった。

i30 Nは驚くほどハードコアな気質と、ホットハッチの経験がほとんどない自動車メーカーからは想像もできないようなパフォーマンスを持っている。操作系の重さ、パワーデリバリーのブースト感、減衰の硬さには、実にオールドスクールな味わいがある。

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8. ヒョンデi30 N

ただ、ヒョンデはチューニングをやりすぎてしまったようで、サスペンションは硬くアグレッシブで、ステアリングやドライブモードには妥協がなく、馴染みにくいクルマになっている。また、調整の幅が細かすぎるのもちょっと問題で、ヒョンデは数千もの設定パターンを誇らしげに強調しているが、楽しく走りたいだけのドライバーの手には余る。

i30 Nは、グリップを追求するのではなく、実用的な扱いやすさを追求したセッティングがベストであり、バランスの取れた、純粋に魅力的なドライバーズカーとなる。

9. スコダ・オクタビアvRS

チェコの自動車メーカーであるスコダのCセグメント車、オクタビアをチューンナップしたvRSモデルは、実用性と刺激的なドライビングの両立を諦めきれない一定の年齢層以上のドライバーに向けたベストアンサーである。

このクルマの最大の特徴は多用途性だ。最高出力245psの2.0Lターボガソリンと、最高出力200psの2.0Lディーゼルがあり、後者には四輪駆動も設定される。ガソリンエンジンにはかつて3ペダルのMTが用意されていたが、現在はもう選べない。英国では一時期、現物給付税対策として1.4Lのプラグインハイブリッドもあった。ボディスタイルは5ドア・ハッチバックとステーションワゴンから選べる。

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9. スコダ・オクタビアvRS

ハイブリッドはドライバーズカーとしては少々ちぐはぐであったが、ターボガソリンはファミリーカーに適したしなやかな乗り心地と広さを持ち、力強さと鋭いハンドリングも兼ね備えている。一方、四輪駆動ディーゼルは欧州で求められる牽引能力や日常での使い勝手に優れ、経済性や航続距離も期待できる。エンジンによってキャラクターの棲み分けが適度になされているのだ。

通勤にも、家族のロングドライブにも使えるようなホットハッチを探しているなら、オクタビアvRSがいいかもしれない。スピードと繊細さがさりげなく調和した、現代の「Qカー」と言える。

10. クプラ・ボーン

このリストの中では他車のような圧倒的な力強さはないが、クプラ・ボーンは「EVとして」おまけのように取り上げたわけではなく、実力でトップ10に入っている。外観がホットハッチらしく見えるだけでなく、走りもいい。秘めたる才能は本物だ。

フォルクスワーゲンID.3と同じプラットフォームをベースに、リアにモーターを搭載し、最高出力230psと瞬時のトルクを発生する。発進から100km/hまでは純粋に速く感じられ、それを超えると加速力は落ちるが、速いクルマ好きなら失望する人は少ないだろう。また、ステアリングも鋭く、素早いターンインと正確な脱出を実現する、ロールの少ないハンドリングを備えている。電子制御を弱めれば、後輪駆動らしいバランスをさらに解放できるだろう。

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10. クプラ・ボーン

その他の点では、広く多機能なインテリアに加え、快適性や洗練性などもよくできている。さらに良いことに、77kWhの大容量バッテリーを搭載したことで、1回の充電で約550kmという立派な航続距離を誇る。


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