やってもやっても、仕事が終わらない……そんな愚痴が止まらない、日本のサラリーマン。文句を言っている間はまだいいですが、そのうち抱えきれなくなり、メンタルに不調をきたす場合も。さらに休職に追い込まれると、基本、無収入なり、生活が立ち行かなくなるケースも。みていきましょう。

仕事量が多すぎる!でも代われる人もいない日本の実情

――やっても、やっても、何で仕事は終わらないんだ!

そんな思いを抱きながら、毎日、毎日、通勤電車に揺られているサラリーマンも多いのではないでしょうか。株式会社ビズヒッツが働く20~60代の男女に行った『仕事量に関する意識調査』によると、仕事量が多い理由、第1位は「人手不足だから」で44.8%。「断れない性格だから」13.6%、「他にできる人がいないから」8.8%と続きます。

内閣府財務省による『法人企業景気予測調査』によると、従業員の過不足感を示す指数が大企業全産業でプラス26.3と、過去最高を更新。また中堅企業でプラス39.3、中小企業でプラス30.4。新型コロナウイルス禍からの経済活動の正常化、インバウンド需要の急激な回復により、宿泊や飲食などの非製造業を中心に人手不足感が深刻化しています。また大企業において「不足気味」となるのは、平成23年9月末以降50期連続だといいますから、人手不足から「仕事量が多い」と感じることに対し、解決策はない、と言わざるをを得ません。

仕事量の多さは、仕事に大きな影響を与えることは明白。前出の調査では、「仕事量が多いことで仕事の品質に影響が出ることがある人」は82.6%*1、「仕事量が多いことで身体的・精神的に悪影響がある人」は86.0%*2と、大多数を占めました。

*1:頻繁にある…19.0%、たまにある…63.6%の合計

*2:とてもある…39.6%、まあある…46.4%の合計

――仕事につぶされる

そう絶望的な気分に襲われますが。そこは優秀で真面目な日本の会社員。仕事量が多いときの解決策は「仕事を効率化する」で35.8%。「他の人に仕事を割り振りする」23.0%、「勤務時間を増やす」14.4%と続きます。

大量の仕事を前に投げ出さず、なんとか解決しようとする日本人。しかしなかには「とにかく頑張る」4.8%と、根性論以外に解決策が見いだせないほど追い詰められている人も少なからず見られます。

過重労働でメンタルヘルス不調→休職の40代・氷河期世代

――もうムリ、心が折れた

現在、多忙が原因でうつ病を発症。現在、治療のため休職をしているという40代男性。慢性的な人手不足の都内中小企業で働き、ずっと過重労働を余儀なくされていたとか。

法律上、法定労働時間として1日8時間、1週間に40時間までが労働の上限。労使間で36協定を締結すると残業の実施が可能となり、月45時間、年360時間の時間外労働の上限が定められます。特別な事情がある場合は年720時間以内の時間外労働が認められていますが、「時間が労働と休日労働の合計が月100時間未満」「2~6ヵ月平均で時間外労働は月80時間以内」「時間外労働が月45時間を超えられるのは年6ヵ月」という条件を守らなければなりません。

とはいえ、これは法律上の話。人手不足が一層深刻となっている中小企業のなかには、男性のように過重労働となっていることを知りつつも……ということも珍しくありません。

休職前は月収28万円ほどだったという男性。厚生労働省の調査によると、従業員10~99人企業の平均月収は、40代前半で32.9万円、40代後半で34.4万円。それよりもだいぶ給与は安く、しかも過重労働。友人からは「そんな会社、辞めて転職すれば」と何度も言われたといいますが、氷河期世代の男性、本当に苦しい思いをした就職活動の経験から、仕事が大変だからといって辞めるという踏ん切りが付かなかったといいます。

結果、心を病んでしまったという顛末。厚生労働省令和4年 国民生活基礎調査』では、うつ病・不安症などの精神疾患のスクリーニングに用いられている「K6」という指標で評価しています。得点が高いほど、精神的な不調を感じている度合いが強いことを表していますが、15点以上は「20代」が4.9%、「30代」が4.7%、「40代」が3.6%、「50代」が3.0%となっています。

現在、男性は症状は回復傾向。近いうちに復職を予定しているのだとか。

――働かないと生きていけないから

実は生活保護の申請をしたという男性。しかし申請は通らず、いよいよ貯蓄の底が見えてきたというのです。生活保護は本当に困窮した時に使える最後のセーフティーネットなので、男性の場合も、条件をクリアさえすれば申請は通ることでしょう。ただ生活保護のハードルは高く、メンタルヘルス不調だからといって申請が通るものではありません。

メンタルヘルス不調については、傷病手当金や自立支援医療制度、障害年金、失業手当(雇用保険給付)など、生活保護に至る前段階の支援制度があり、労働が原因であれば労災保険の対象にもなります。

メンタルヘルス不調による休職となったら、基本、給与は払われず、生活が困窮する可能性があります。まずは、居住地の障害福祉課に相談し、経済的な支援をしっかり受けることが、症状の回復においても重要です。

[関連資料]

株式会社ビズヒッツ『仕事量に関する意識調査』

厚生労働省『令和4年 賃金構造基本統計調査』

厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』